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インターネットの
技術革新をリードし、
ネットワーク社会の発展に
貢献していきます。
代表取締役社長(Co-CEO & COO)
勝 栄二郎
IIJは今年、創業30周年を迎えます。1992年に国内初のISPとして創業してから現在に至るまで30年にわたり、私たちは日本のインターネット技術の分野でイニシアティブをとり続けてきました。インターネットは、「情報」と「通信」の技術基盤を共にすることによって、世界のあらゆる仕組みを変えてしまう技術革新です。その可能性は無限に広がり、今も社会の仕組みを根底から変え続けています。IIJが創業時から予見していた「すべてのものがインターネットにつながり、すべてのものがインターネット上に構築される」という世界が今まさに現実のものとなり、私たちがこれまで蓄積してきた技術開発力、運用力、提案力があらためて評価され、業績拡大につながっています。
近年、ITは社会のあらゆる領域に浸透し、世界中でデジタルシフトが進んでいます。その大きな流れのなかで、日本でも新型コロナウイルス感染症拡大を機に、企業や行政においてITの利活用が急速に進み、この流れは不可逆的に加速していくと考えられます。このような市場環境のなかで私たちは、「インターネットイニシアティブ」という社名のとおり、引き続きインターネットの技術革新をリードし、新たな利用形態を提案する画期的なサービス、プラットフォームの提供を通じて、ネットワーク社会の発展に貢献していくことがIIJグループの存在意義(パーパス)であると考えています。
将来に向けて私たちが目指すネットワーク社会は、IoTやAIなどの技術を活用し人とモノがつながることで、必要なときに必要な情報が届けられ、必要なサービスが提供される社会です。また、デジタル化を進めることで、現在顕在化している多くの社会課題を解決することができます。例えば、GIGAスクールによる質の高い教育の推進、工場内機器のリモートメンテナンス導入による効率化、スマート農業の計画的な生産による食糧の増産・ロス削減、店舗や建設現場のIoT化による省人化、食品衛生管理(HACCP)の自動化、IoT見守り端末を活用した子供や高齢者の生活安全の維持、生活の利便性・快適性を向上するスマートシティの取り組みなどがすでに進んでいます。IIJは、このような社会課題の解決に求められる技術と付加価値の高いITサービスを提供し、ネットワーク社会を支えてまいります。
ISPとして創業したIIJは、インターネット接続事業で培った技術をベースに、クラウドやセキュリティ、ネットワーク運用のアウトソーシングサービス、WANサービス、モバイル/IoTサービス、ネットワークシステムの構築および運用保守などをトータルに提供するソリューションプロバイダーへとビジネスモデルを転換し、成長を続けてきました。事業領域を拡大することで、お客様のあらゆるネットワーク利用の要望にワンストップで応えることのできる企業グループとして、さらなる成長を目指しています。
IIJグループの最大の強みは、ネットワーク技術をベースとした「業界屈指のサービス開発力と運用技術」です。国内初のインターネット接続サービスを開始して以来、市場のニーズを先取りしたサービスをいち早く投入し、それらを安全かつ安定的に運営する高い運用能力は、法人のお客様やIT業界での高い評価を得てきました。この卓越した技術力の源泉は、世界トップレベルのエンジニアを多数擁していることです。IIJの社員の約7割はエンジニアで、高い専門性と多様性をもつプロフェッショナルの技術集団です。サービス開発の現場では、開発部門だけでなく運用部門が連携しサービスの設計段階から関わることで、サービスを提供開始したあとも安定した運用を実現しています。
また、国内外の技術コミュニティと連携してネットワーク技術の発展に積極的に取り組み、その研究開発で得た知見や新しい技術をサービス開発に取り入れることで、先進的なサービスの提供につなげています。
2つ目の強みは、自社で構築した国内最大規模のバックボーンネットワークと、それを安定的に運営するネットワーク運用管理のスキルです。世界を一周する大容量バックボーンを基盤に高速で信頼性の高い通信環境を提供するIIJのネットワークサービスは、企業のミッションクリティカルなシステムをはじめ、動画配信サービス、ネット証券、大規模ECサイトなど幅広いオンラインサービスで利用されています。今後はグローバルに展開できるサービスの開発にも取り組んでまいります。
さらに3つ目の強みとして、大手・中堅企業や官公庁を中心とした約13,000社の顧客基盤があります。インターネット普及期からIIJサービスを利用していたお客様の多くが、今では複数サービスを組み合わせて導入されており、今後もお客様のニーズに合わせたサービスを複合的に提供するクロスセリングを強化していきます。また、IIJサービスの多くは、お客様の継続的な利用によって恒常的な売上が月次計上される「ストック売上」を生み、売上全体の8割を占めるストック売上が安定した収益基盤として、IIJの成長を支えています。お客様との関係を深めることで、収益だけでなく、新たなニーズの発掘やサービス改善につながり、結果としてお客様の満足度を高める好循環を生み出しています。
2021年度は、大きなIT化のトレンドに乗り、法人ストック売上の積み上げによる増収・増益モデルが継続進展し、堅調に業績を伸ばすことができました。国内企業のIT利用の進展にともない、業績は利益拡大フェーズに入ったと認識しています。インターネット接続サービスやアウトソーシングサービスをはじめとする法人ネットワークサービス(*)の売上高が前年同期比10.3%の増加となり、これらの粗利増加の牽引により、営業利益は前年同期比65.3%の増加と大幅に伸長しました。これを踏まえ、2023年度の営業利益率目標を11.5%に上方修正しています。創業から約30年にわたり地道に積み上げてきた技術と一貫したビジネスモデルが、事業拡大と収益性向上につながり、中長期的に次のステージにてさらに大きく拡大していくと考えます。
中期計画(2021~2023年度)の1年目である前年度を振り返ると、コロナ禍のなか、テレワークをはじめとする企業のデジタルシフトやIoT活用による新しいビジネスモデル構築等のDXが進み、IIJグループが得意とするネットワーク、セキュリティ等のサービスを顧客ニーズに合わせて開発しタイムリーに市場投入できたことで、売上が伸長し営業利益の増加を牽引しました。今後はオンプレミスからクラウドへ移行が進む大規模企業への各種ネットワークサービス等の導入を推進し、売上拡大を図っていきます。
2022年度は、中期計画の2年目であり、きわめて大事な年になると考えています。2021年度は、企業のオフィスIT環境のデジタル化が進むエンタープライズクラウド市場で法人ストック売上を積み上げ、利益向上につなげることができました。企業のITサービス利用は、これからも継続した需要拡大が見込まれており、2022年度は引き続き、エンタープライズクラウド市場で売上をしっかりと伸ばしていくことに加え、インターネットを基盤としたビジネス領域をもつ企業をターゲットとしたビジネスクラウド市場へのアプローチを強化していきます。お客様のビジネス領域のIT活用に踏み込んだ提案をしていくことで、新たな顧客発掘、需要拡大を目指します。
次の30年に向けて、IIJグループがIT業界で強固なポジションを確立し発展していくためには、将来的に事業規模を飛躍的に拡大していく必要があります。中期計画の3年間は、その将来目標に向けた非連続な成長を実現するための重要なステージであり、2023年度に売上2,700億円規模、営業利益率11.5%の目標を掲げています。
IIJグループの今後の展望としては、コア事業であるネットワーク、セキュリティ、クラウド、データセンター、MVNO、IoTの各事業分野で、引き続き、世の中の変化や市場のニーズを先取りした高品質・高付加価値なITサービスを提供していきます。また、すでに取り組んでいる動画配信プラットフォームに加え、今後の成長が期待される遠隔医療・介護、デジタル通貨といった新しいビジネス機会に向けたプラットフォーム型サービスの開発、M&Aによる新たなビジネスモデルや新事業領域へのチャレンジも検討していきます。さらに、IIJはクラウド(IaaS)事業者として世界で初めてEU基準の厳格な個人情報保護措置の認定にあたるBCRの承認を取得していることに加え、政府のセキュリティ評価制度ISMAPに登録されているクラウドサービスを提供しており、こうした強みを活かし、個人情報を取り扱うお客様のプライバシー保護規制対応支援も強化していきます。
今後、来るべき世界を見据えた技術開発をたゆまず進め、社会のデジタル化の進展を牽引していくことがIIJグループの使命であり、それにより事業を拡大してまいります。
IIJグループは、日本のインターネットを創り上げ、その発展を支えることで、日本の社会経済活動および行動様式の劇的な変化と、それから生じた社会の効率化に貢献してきました。インターネット技術のイニシアティブをとり、将来のより効率的なネットワーク社会を実現していくことは、IIJグループの経営理念と合致するものであり、これこそがIIJグループのサステナビリティの基本となる考え方です。永続的な成長および企業価値向上のためにも、サステナビリティへの継続的な取り組みは重要なテーマであると考えています。
IIJは、これまでもAIやIoTなど新しい技術を取り入れた革新的なサービスを提供することで、社会課題の解決を支援してきました。例えば、IoTを活用したスマート農業やスマートファクトリー、地域医療・介護の効率化など、SDGsに沿った持続可能な社会の実現に向けた技術開発に取り組んでいます。IIJの様々なサービスは、企業の生産性向上・合理化だけでなく、IoT等の技術を通じて付加価値向上・新規ビジネス開拓などイノベーション創出にも寄与してきました。
一方でIIJのようなIT企業がサービスを提供するには電力が不可欠であり、特に膨大なサーバ機器を運用するデータセンターの再エネ・省エネ化は喫緊の課題だと認識しています。地球温暖化対策として今後はデータセンターにおける再生可能エネルギーの利用とエネルギー効率向上に向けた取り組みを推進していきます。
また、人材の多様性については、性別・国籍・障がいの有無等に依ることなく多様な人材を広く受け入れ、様々な視点や価値観を尊重しながら、能力重視の人材活用を実践してきており、今後も継続してまいります。
私たちは、経営理念の実現と企業価値の向上のため、コーポレート・ガバナンスの実践と充実が肝要であると認識しています。コーポレート・ガバナンスの実装・運営にあたっては、根底にあるものとして、統制環境の維持・進化が最も重要であると考えています。IIJグループの役職員は、日本のインターネットを創成してきたという歴史的経緯のなかで、日本のインターネットを支えネットワーク社会を発展させるとの経営理念に沿い、高いモチベーションと誇りを持ちながら、お客様・社会へ貢献するために日々研鑽を重ねていると自負しています。このような、競争力の源泉である人材の在り方を基本に、統制環境の基礎を為す倫理規程を根幹とした子会社等管理規程・内部通報規程・情報開示規程・内部者取引防止規程・内部統制システム基本方針・財務報告に関する内部統制規程・収賄防止規程等のガバナンスの骨格となる各種規程の運用、それらのトップマネジメントや監査役による周知徹底とコミュニケーション、さまざまな分野での豊富な経験と高い専門性等を有する役員が選任された取締役会・監査役会・指名報酬委員会、リスクの種類に応じた評価と対策を検討する各種委員会、内部統制監査・業務監査等の各種監視・監督機能の実装等により、重層的に最適なガバナンスを実践していると認識しています。独立社外取締役は、多様なバックグラウンドをもつ方々を招聘しています。また、これからも、事業規模拡大と歩調を合わせて、コーポレート・ガバナンスの維持・向上に努めてまいります。
冒頭に申し上げたとおり、IIJは今年12月に30周年を迎えます。これもひとえに、株主・投資家の皆さまをはじめ多くの方々に支えていただいた賜物であると深く感謝しております。今後とも変わらぬご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
以上
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