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梅雨時の憂鬱

株式会社インターネットイニシアティブ 代表取締役会長 鈴木幸一

 

 私にとって梅雨と言えば、紫陽花、蝸牛が思い浮かぶのだが、最近、蝸牛を目にすることがない。庭のない空中の集合住宅の住まいが長いからだろうか。

 生活の話はさて置き、株主総会の時期である。IIJがニューヨーク・ナスダック市場に上場したのは、1999年の夏だった。その年は、梅雨から夏にかけて、公開の準備、ロードショウ、上場と、ほとんどの時間を米国、欧州で過ごし、梅雨の湿気とは無縁だった。あれから20年も経ったのかと、過ぎ去った時の感覚は魔法のようである。

 「2、3年もすると、30周年ですね」。知人に、ふと、そんな言葉を掛けられる。「ええっ」と、驚くほかない。季節の移り変わりには敏感なのだが、会社の時間の経過については、忘れたままである。言われてみれば、IIJは創業から27年を経ているわけで、「そろそろ30年ですね」という言葉が、的外れというわけでもない。時の経過を忘れさせるほど、インターネットの発展の速度、広がりは、技術からサービス、利用形態に至るまで、歴史を変えてきた過去の巨大な技術革新と同じである。巨大な技術革新が変えてきた世界が、良かったのかどうかは、その時代に生きた人間にしか実感できない。

 30年前にはほとんど知られていなかったインターネットという通信だが、今や子供から老人まで、日々の生活に欠かすことのできない通信手段となっている。電話と違い、その通信は情報と一体となった手段であり、世界のあらゆる仕組みを変えてしまう技術なのだが、一般の利用者は、そこまで考えることはない。巨大な技術革新が進行する世界で、その技術を利用する人々の意識はそんなものである。

 インターネットの発展をリードしてきたと自負する企業の人間にとって、インターネットの世界は、いっときも留まることがない過酷な世界でもある。「昨年と同じ」という言葉で済まされる事業計画も技術もない。クラウド、IoT、5Gといった大きなテーマについては、言葉が流布する前から取り組みを始め、言葉が流布し始めた頃には、開発も進み、自らのサービスとして、いかに市場に投入し、収益を上げていくのかという見通しを立てられるくらいでないと、マーケットから取り残されてしまう。年度単位の数字に捉われれば、将来を失うことになりかねず、長期的な視野を重視し過ぎると、足元の利益を犠牲にすることになる。創業以来、会社の規模にかかわらず、技術帝国主義とか技術至上といった言葉で評されることが多かったIIJにとって、中長期的な視点と短期的な視点をどう噛み合わせ、バランスをとっていくのかは、いまだにもっとも難しい経営判断のテーマである。

 5月の長い連休中に、幹部とされる肩書の付いた社員と、合宿と称して泊りがけで議論の場を持ったのだが、将来に向けての明晰な意見交換とはならなかった。仕方なく、酒を飲んで温泉に浸かっていたのだが、酒と温泉によって明確な未来が描けるわけがないのは当たり前である。ぼんやりと思い悩むうちに、それなりの未来の形が見えてくるに違いなのだが、その間にも否応なく時間が過ぎ去っていくのは恨めしいばかりである。6月と言えば、すでに一年の半ばが過ぎ去っている。


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