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年の暮れ

株式会社インターネットイニシアティブ 代表取締役会長 鈴木幸一

 

 紅葉が散りかけて、晩秋の冷たい風が肌に触れると、師走の前触れを感じ、時の流れの早さに、改めて驚いたものだが、今年は、鮮やかな紅葉も、晩秋の冷たい風もなく、いつの間にか師走になって、年の暮れである。異常気象が続き、皮膚で季節の移ろいや、時間の経過を感じることもなくなってしまったようだ。

 中国の文化圏にありながら、小さな島国という幸運な立地によって、強大な武力を持つ大国に襲われ、侵略されることもなく、高度で独特な文化を育んできた日本、その文化を支えてきたのは、四季折々の自然、その移ろいを受け止める繊細で鋭い感性にあったはずなのだが、季節の移ろいと、時が過ぎ去ることが、別な尺度になってしまうとしたら、日本人そのものの感性が消えてしまうのではないかと、心配になる。

 日頃、夜明け前に目覚める私は、寒暖の変化とともに、日の出の時間の変化に敏感である。冬至を過ぎると、寒さは始まったばかりなのに、夜明けが早まりだしたことに気づく。一日一日は、微妙な変化に違いないのだが、冬至を境に春が始まる、そんな感覚なのである。冬至の夜は、遅い帰宅になっても、「ゆず湯」に浸かる。新年を迎える時の夜明けの光は、春の先駆けなのである。これから、本当に厳しい寒さをしのぐ生活が始まる雪国の人には、笑われてしまうに違いない。

 米国と中国のITをめぐる激しい戦いを見ていると、ITという巨大な技術革新の本質を理解している2つの大国間の戦いが、具体的な争いとして表に出る時代になったのだと、改めて深刻な思いが広がる。そもそもインターネットは、ベトナム戦争後、苦境にあった米国が、この巨大な技術革新の基盤を握ることで、再び21世紀の覇権を手にしようとした、極めて重要な国家戦略なのである。70年代から80年代にかけて、米国がいかにして金融のプラットフォームと情報通信の基盤を握るのかという議論が絶えず行なわれていた。当時、日本は製造業の圧倒的な力で、奇跡的な成長を成し遂げ、世界の経済大国としての地位を得た時代だった。その後、厳しい日米貿易摩擦があり、日本の戦後の成長を実現した政府と民間企業が一体となった独特の産業政策そのものが崩壊したのだが、ITをめぐる米中の摩擦の推移を見ていると、かつての日米貿易摩擦が思い出される。もちろん、地政学的にも、人口動態・軍事といった面でも、現在の中国は紛れもなく大国で、日米とはまったく異なる緊張関係であることは言うまでもない。IT分野における貿易摩擦というより、大国間の覇権争いといった様相である。争いの焦点が、21世紀の産業のエンジンと言えるIT分野であることに、日本の政治・産業における遅れが、改めて浮き彫りになってしまう。

 年が明けると2019年である。1992年に創業したIIJが、日本の市場を経ずに、直接、米国のナスダック市場で公開をしたのは1999年である。その後、時代に先駆けたプロジェクトが挫折したのは2003年である。IIJは、創業以来、新たな地平を拓き続け、ある意味では、絶えず緊張感を持ち続けてきたことで、なんとか発展してきた歴史を持つ企業である。一方、厳しい緊張を強いられながらも、おおらかで自由な社風が変わったことはなかった。およそ「組織」の常識が当てはまらない企業である。

 企業が成長・発展を続けるに従って、当然のことながら、社員も増え、一般的な組織運営を行なうようになるのは致し方ないのだが、緊張感を持ちながらも、おおらかで自由な社風は、なんとしても守っていかないと、IIJではなくなってしまう。年の暮れから、新年を迎える時期になると、いつも同じことを考えてしまうのである。よい年をお迎えください。


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