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神無月、深夜の台風

株式会社インターネットイニシアティブ 代表取締役会長 鈴木幸一

 

 旧暦で9月は「長月」、10月は「神無月」である。八百万の神々が出雲に集まり、他国では神々が不在になるので「神無月」、出雲では「神在月」と呼ばれると、どこにも書かれている。八百万の神々が出雲に集って、どんな「神在祭」をしたのだろう。世界の神々については、様々な神話がつくられていて興味が尽きないのだが、八百万の神々がひとつの場所に集まって、他の地域では神々が消えてしまうことで「神無月」とするのは、日本固有のいい加減さ、自在な発想で面白い。いつ頃から、杓子定規というか、奔放な発想がなくなってしまったのだろう。身分が固定され、鎖国政策が続いた長い江戸時代からだろうか。そうは言っても、江戸時代の町人文化には、大胆な構図の浮世絵や春画、末期にはおどろおどろしい歌舞伎の世界もあって、パリをはじめ同時代の世界のどの地域よりも爛熟、退廃した高度な文化があったわけだから、堅苦しくなったのは、明治以降かもしれない。

 10月1日は、来年、入社する社員の内定式だった。四季を通じて薄汚れたTシャツとジーンズ姿の技術者しか見当たらなかったIIJも、最近は百人が百人、ダークスーツに白いワイシャツ、ストライプのネクタイを締めた若者が整然と椅子に座り、静粛に内定式に臨む。そんな光景を前にすると、改めて時の経過の怖さを感じてしまう。官僚とは、役人を意味するのではなく、組織の規模が大きくなることだという言い古された言葉が思い出されて、心配になる。

 儀式は儀式として、最低限の礼を弁えることは大切なエティケットだが、ふと、IIJが発展できたカルチャーとの違いに戸惑ってしまうのである。それだけインターネットが普通の通信システムになったわけで、喜ぶべきことなのだが、商用ベースで使えるインターネットを、眠る時間も惜しんでほぼゼロから立ち上げてきた若者の気負いや気概が失われていくような気がするのである。

 ITの将来を考えると、何が可能となるのかという将来の俯瞰図が、ある程度、明確になった現在、考え得る技術や革新的なビジネスモデルを、いかに早く実現していくかの競争が世界中で激しくなっている。そんな状況のなか、IIJ設立当初の、ある意味でバーバルな働き方がないと、後れをとるのではないかという危惧である。

 この夏、ドイツの経済人や政治家と話をする機会があって、「ドイツはIT分野では、まったく遅れてしまい、いまだに自動車、重化学工業、設備産業が中心です。日本が羨ましい」といった言葉をよく聞いたのだが、「隣の芝生がよく見えるのと同じですよ。世の中の仕組みを変えることで発展するのがIT産業だから、日本はどうしても後れをとってしまう。インダストリアル4.0を提唱したのもドイツですし、はるかに進んでいると思いますが」と答えると、「後れを意識しているから、ああいった言葉で鼓舞しているのですよ。せいぜいが、巨大となった産業にIT技術を応用して優位性を守ろうということに止まってしまう。IT産業を引っ張り、自ら作り出そうということではない」と、あくまでも悲観的な発言に終始していた。

 強烈な風、記録的な大雨をもたらす台風が、次々と日本を襲う。日本列島を縦断した台風24号が東京近辺を通過した深夜、マンションの窓ガラスを押し込むような猛烈な風、叩きつける雨、樹木が揺れる様子を、明け方まで眺め続けていた。そのエネルギーに感動したのである。日が昇る頃には、青空が広がって、眩しい太陽の光が部屋に射しこんでいた。


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