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わが待ちし秋は来にけり

株式会社インターネットイニシアティブ 代表取締役会長 鈴木幸一

 

 最近、「記録」という言葉で連想するのは、スポーツではなく、大雨、高温など、異常な気象現象になってしまったようだ。35度を超す日が続き、39度、40度といった酷暑が続いている。昼間、テレビをつけると、各地の気温が必ず表示されている。熱中症に対する注意喚起の車も巡回しているようで、日に何度か、スピーカーからの声を耳にする。35度でも辟易しているのだが、スペインでは43度を記録したという。43度と言えば、お風呂でも熱いくらいの温度である。大気の43度と、風呂に浸かっている43度では、体感の違いはあるにしても、暑いことに変わりはない。この夏、何度か欧州に行ったのだが、イタリア、パリ、ロンドン、オスロ、ストックホルムと、気温こそ違いはあるのだが、どこも暑かった。1時間で100ミリを超す、短時間集中豪雨という現象も、日本ばかりでなく、欧米でも頻発している。

 「人類の起源はアフリカですが、いよいよ欧州もアフリカ化ですね」と冗談を言ったら、「気象はアフリカ化、難民は中東から広がっている。なにもかもがグローバル化かねえ」と、ドイツの友人からは、あえて他人事のような答えが返ってきた。

 「わが待ちし秋は来にけり 月草の安の川辺に咲きゆくみれば」(安の川は天の川の意)。良寛も老躯となると、夏の暑さに耐えがたくなったようだ。暑さに強いはずの私も、ひんやりとした秋風を待ち望むばかりである。

 ゲノムDNA研究の発展で、人類の起源に対する解明が進んでいるようで、先般もホモ・サピエンスとネアンデルタール人が交雑していたことが、ゲノムDNAによって証明されたという本を読んでいたのだが、科学技術の進展によって、人間の存在そのものの知見が覆されるような研究が進むのだろう。

 コンピュータリゼーションが始まった時代に高校生となり、巨大な空間を占有していた真空管コンピュータを見学した私など、旧石器とは言わないまでも、縄文、弥生の時代から関わっている気がしてくる。若い人は、EDPという言葉すら無縁なようだが、私が新聞の求人欄から入社試験を受け、社会人となった求人広告は「EDP研究開発要員募集」というものだった。「エレクトロニック・データ・プロセッシング」の頭文字をとると、EDPとなる。その頃、ダグラス・エンゲルバートが主導したコンピュータ技術による通信のデモンストレーションを雑誌で知ったのである。ずいぶんと長い付き合いである。

 ネットワークの高速化によって、データの収集がほぼリアルタイムで実現し、その処理(プロセッシング)の速度も3年後くらいには、現在の8倍になると予想されている。処理速度が8倍になる状況を想定すると、現在、あらゆる局面で話題にされているAIも、汎用システムとして利用が可能となるはずで、AIの利用によって、働き方から、社会や個人の行動、プライバシーに至るまで、すべての在り方が変わっていくのだろう。AIの基礎理論は、私が学生時代に齧った理論からそう変化していないようだが、ネットワークとプロセッシングの超高速化が実現することによって、その利用が違った次元で実現する時代はすぐにくるはずである。たかが推測統計ではないかと、高を括るわけではないが、巨大な技術革新が世界のあらゆる仕組みを変えてしまうことの凄さというか、恐ろしさを改めて予感するのだが、夏の酷暑に呆然としたままの年齢になった私は、秋の冷気を待ち望むばかりである。


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