ページの先頭です


ページ内移動用のリンクです

  1. ホーム
  2. IIJについて
  3. 情報発信・CSR
  4. 広報誌(IIJ.news)
  5. 代表取締役会長 鈴木幸一 エッセイ
  6. 桜から葉桜に

桜から葉桜に

株式会社インターネットイニシアティブ 代表取締役会長 鈴木幸一

 

 いい年をして、夜明け前の午前3時には目覚め、珈琲を淹れて、机に座る。出勤までの時間、それが自分の時間である。社会人になった頃は、長すぎる自堕落な学生時代を過ごしたせいで、そんな時間に起きて勉強をしないと、仕事についていけなかったのである。追い込まれて、如何ともし難いという状況にならないと、具体的な行動を起こさない。子供の頃から、生来の怠け者である。宿題をやらず、切羽詰まると、教師に叱られることを我慢すればいいかと、怠け虫なりの達観をして、廊下に立たされたり、黒板消しで頭を叩かれたりしていた。今と違って、教師の仕置きも厳しく、白墨で白くなった黒板消しで頭を叩かれるので、髪が白墨の粉で白くなったものだった。別に悪気があったわけではないことは、教師も理解していたようで、ほかの生徒の手前、厳しい仕置きをしていたのだろう。次の授業が始まると、朝の仕置きはすっかり忘れて、ごく普通に授業を受けていたのである。教師にとっては、扱い難い生徒だったかもしれない。

 早起きは子供の頃からで、朝食のはるか前に起きて、お腹が減ったと声にするものだから、前の晩、枕元におにぎりが置かれるようになって、食事ができるまでは握り飯を食べて、空腹をしのいでいた。冬はともかく、夏はどうしていたのだろうかと思うのだが、空調もない時代で、夜明けが早く、早朝から暑さが襲う季節は、だれもが早く目覚めて、朝御飯の用意も早かったに違いない。

 中学生時代は、優等生だった記憶があるのだが、高校に通うようになると、高校の裏門から入り、校庭を横切って、そのまま正門から出ては、授業をさぼっていた。担任の教師が我が家まで来たようだが、親も親で、「あれは変わり者だから、放っておいてもらった方がいいですよ。昔から変わり者はいたでしょう。どうしようもなければ、どこかの工場にでも行かせて、働かせるから」と、いい加減なことを言って、教師を納得させたようだ。旧制中学が新制高校になり、旧制中学時代から教えていた教師が残っていて、妙に物分かりが良かったようだ。親が放任していてくれたのは、放っておくと、日がな一日、年齢不相応な小難しい書物を読み続けるか、蓄音機かラジオにしがみついて、クラシック音楽を聴いているだけで、当時の言葉で言えば「不良」になるような行動とは無縁だったからかも知れない。今でも、私の知識の八割方は、中学までの時代に身につけたものではないかと思う。

 今年の冬は、久しぶりに凍てつくような寒さが続いた。その反動か、桜が一気に開いて、4月になると葉桜になってしまった。いつもは淡い色の染井吉野がひらひらと花びらを落とし始めるはずの入社式の頃には、葉桜になってしまい、桜と入社式は一つの季節だという思い込みのある私には、勝手が違い、入社式の挨拶も締まりのない話になってしまった。

 ダークスーツを着込んで、神妙な表情で椅子に座っている新入社員を見ると、IIJも歳をとったのかなと思ったりするのだが、インターネットの世界も、まともな若者がまともな社会人として大きく育ち、そうした人間によって支えられる社会や産業の基幹インフラとなったのだと、妙な思いがわく。次の四半世紀は、インターネットがつくりつつある仕組みが、世界をリードすることだけは間違いない。若い社員への期待は、膨らむばかりである。


ページの終わりです

ページの先頭へ戻る