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Internet Infrastructure Review(IIR)Vol.68
2025年12月
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目次

エグゼクティブサマリ

2025年は「AIエージェント元年」と呼ばれています。2022年に公開され、世界中に衝撃を与えたChatGPTの登場から3年、2025年8月にGPT-5が発表されました。GPT-5は画像・動画といったマルチモーダルに対応しただけでなく、外部連携機能が大幅に強化され、必要に応じて外部データソースと連動した自律的な動作(エージェント)が可能になりました。更に、企業においても試験的なAIの利用に目処がたち、実際の業務に即した活用の機運が高まっていることも、AIエージェントの導入を後押ししています。

今号では、インターネットの最新動向をお伝えすると共に、生成AI及びAIエージェントに関するIIJの開発事例も紹介します。

第1章は、定期的にお伝えしているインターネットの傾向分析です。IIJバックボーンにおけるIPv6トラフィックは前年比25.2%増と大きく伸長し、全体の約24%を占めるまでになりました。モバイル端末でのIPv6有効化率も向上しています(iOS系 86.9%、Android系 35.5%)。加えて、IIJのインターネットバックボーンから見たトレンドにも触れています。

第2章では、IIJが独自開発したDNSフルリゾルバ「bowline」の設計思想と実装技術を解説します。bowlineはHaskellで実装され、オープンソースとして公開されています。Haskell実装に関する背景及び詳細は、ぜひ本文をご一読いただきたいと思いますが、こうした自社開発ソフトウェアが、IIJの提供するサービスの信頼性向上を支えています。

第3章では、近年注目を集めるLEO(低軌道)衛星インターネットの歴史と、Starlinkを中心とした最新動向を解説します。2024年元日に発生した能登半島地震の際には、その特性が活かされ、災害時の通信手段として機能しました。将来的には衛星間レーザー通信による高速・低遅延ネットワークや惑星間通信への応用など、様々な構想が広がっています。IIJグループでも2025年12月から正式にStarlinkの取り扱いを開始します。

第4章では、IIJが独自開発・運用する社内RAG(Retrieval-Augmented Generation)基盤「sbdGPT」と、そのマルチエージェント拡張について紹介します。IIJは、社内に分散している膨大なナレッジを統合し、生成AIを活用した業務効率化を推進しており、2023年夏の「sbdGPT」運用開始以降、月間約1500時間相当の業務効率化を実現しました。現在は、社外情報も組み合わせたマルチエージェント構成、高度な調査を可能にするDeepResearchとの連携、更には企画・提案・戦略を自動生成する「Panorama」の独自開発など、AI活用の幅を大きく広げています。

以上、インターネット傾向分析や自社開発によるDNSフルリゾルバといった従来の領域から、衛星インターネットや生成AI活用など最新分野に至る幅広いトピックが、読者の皆様の一助となることを願っています。IIJは「技術で社会を支える」という使命のもと、安定したサービスの提供と新しい技術への挑戦という両面で、進化を続けてまいります。

染谷 直

執筆者プロフィール

染谷 直 (そめや なおし)

IIJ常務執行役員 ネットワークサービス事業本部 クラウド本部長。
1998年、IIJ入社。直後にIIJテクノロジー(2010年にIIJに吸収合併)へ出向。IIJテクノロジーではSI事業の立ち上げに携わり、多くのインターネットシステムの構築やコンサルティングに従事。その後、16年よりIIJのサービス事業部門に異動し、クラウド事業の中期事業戦略を担当。19年、クラウド事業責任者に就任。今年度より「IIR」編集長に就き、IIJにおけるリアルな技術情報を横断的かつ積極的に読者の皆様へお届けしたいと考えている。


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