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  6. 1. 定期観測レポート IIJインフラから見たインターネットの傾向〜2025年

Internet Infrastructure Review(IIR)Vol.68
2025年12月
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目次

1. 定期観測レポート

インターネットサービスを提供するIIJは、国内有数規模のネットワーク・サーバインフラの運用を通じて得られた情報からインターネットの動向を分析し、本誌IIRで毎年報告しています。今回もBGP経路、DNSクエリ分析、IPv6&モバイル、インターネットバックボーンの各視点からここ1年の変化の傾向を分析しました。

IIJインフラから見たインターネットの傾向〜2025年

Theme 01 BGP・経路数

最初にIIJ網から他組織に広報している「IPv4 フルルート」の情報(表-1)及び「IPv4 フルルート」に含まれるunique IPv4アドレス数の情報(表-3)を確認します。

総経路の年間増加数は+4万超にまで回復し(図-1)、総数は99万超となりました。なお本稿執筆時点(2025年10月上旬)では既に100万経路を突破していますが、他の観測点と同様に特段の騒ぎも起こらず無事に節目を越えられた模様です。プレフィクス長ごとで見ると/24、/23に加えて/16及び/20の経路数増加が目立つ結果となりました。/18経路数も表-1からは減少に見えますが、集約経路のみ(より短いプレフィクス長の情報がある経路を除去。表1-a)であれば逆に3桁の増加であり、これらが近年のアドレス移転で需要が高いものと言えそうです。unique IPv4アドレス数は2年連続の減少傾向から一転して7400万弱(/8ブロック×4.4)の大幅増となりました。2022年の値も超えて本定期観測開始後の最高値を更新しています。

表-1「 IPv4フルルート」に含まれるプレフィクス長ごとの経路数の推移

表-1-a「 IPv4 フルルート」に含まれるプレフィクス長ごとの経路数(集約経路のみ)

次に「IPv6 フルルート」の情報(表-2)及び「IPv6 フルルート」に含まれるunique IPv6/64ブロック数の情報(表-3)を確認します。

表-2「 IPv6フルルート」に含まれるプレフィクス長ごとの経路数の推移

総経路の年間増加数は約1.6万でした。これは2019年以降の最低値であり、本定期観測で初めて前年比増加率1割未満(+8%)となりました。しかしながら集約経路のみを見るならば前年と同程度、本定期観測全体では4位の増加数(+0.9万)であり、またunique/64ブロック数が1兆を突破した(+23%)ことからもIPv6の導入、IPv6ネットワークの拡大は引き続き順調であると考えられます。プレフィクス長ごとで見ると/16 ~/28ブロック及び/29の経路数が大きく減少しましたが、前者の減少はプレフィクス長のより短い経路情報が他に存在する経路の減少に起因するものであり、集約経路のみであれば逆に+6の増加となっています(表2-a)。

表-2-a「 IPv6 フルルート」に含まれるプレフィクス長ごとの経路数(集約経路のみ)

表-3「 IPv4フルルート」に含まれるunique IPv4アドレス総数及び
「IPv6フルルート」に含まれるunique IPv6/64ブロック総数の推移

図-1「 IPv4 フルルート」経路の総数及び年間増加数の推移

最後に「IPv4/IPv6 フルルート」広報元AS(Origin AS)数を確認します(表-4)。なおこの一年の間にAPNICに対し2048の32-bit only AS番号が追加割り振りされています。

表-4「 IPv4/IPv6フルルート」の広報元AS数の推移

16-bit AS番号 Origin AS数の減少は10年連続かつ本定期観測開始後で最多となりました。「IPv4のみ」の減少数は今回も同32-bit only ASの増加数を上回ったため、全体の「IPv4のみ」Origin AS数は3年連続の減少となっています(図-2)。また今回は「IPv6のみ」Origin AS数が初の2桁減となりました。32-bit only AS番号Origin AS数は前回と同程度増加し、遂に全Origin ASの過半を占めるに至りました。一方で「IPv4のみ」「IPv6のみ」の増加数は前回を大きく下回っており、全増加数における「IPv4+IPv6」Origin AS数の割合は前回の58%から68%に増加しています。過去にも観測されたIPv4とIPv6を別扱い(別AS)とする状況が更に解消に向かっていると感じられる結果であり、次回以降も継続されるのか注視していきたいと思います。

Theme 02 DNSクエリ解析

IIJでは利用者がDNSの名前解決を利用できるようフルサービスリゾルバを提供しています。この項目では名前解決の状況を解説し、IIJで2025年10月22日に行ったフルサービスリゾルバの一日分の観測データのうち、主にコンシューマサービス向けに提供しているサーバのデータに基づいて分析と考察を行います。

フルサービスリゾルバは利用者端末からのDNS問い合わせに応じて必要な名前解決機能を提供します。具体的には、名前を解決するためrootと呼ばれる最上位のゾーン情報を提供する権威サーバのIPアドレスを手がかりとして問い合わせを行い、適宜権威サーバをたどって必要なレコードを探します。フルサービスリゾルバが毎回このように他のサーバに問い合わせをしていると負荷や遅延の影響が問題となるため、得られた情報はしばらくキャッシュしておいて再び同じ問い合わせを受けた場合にはそのキャッシュから応答しています。最近はこの他にも家庭用ルータやファイアウォールなど、通信経路上の機器にもDNS関連の機能が実装されており、こうした機器がDNS問い合わせの中継や制御ポリシーの適用に関わっている場合があります。また、Webブラウザなど一部のアプリケーションでは独自の名前解決機能を実装している場合があり、OSの設定とは異なるポリシーで名前解決を行っている場合もあります。

ISPは接続種別に応じたPPPやDHCP、RA、PCOなどの通知手段を利用してフルサービスリゾルバのIPアドレスを利用者に伝え、利用者端末が名前解決用のネームサーバを自動設定できるようにしています。ISPは複数のフルサービスリゾルバを利用者に伝えられるほか、利用者は自身でOSやWebブラウザなどの設定を変更して利用するネームサーバを指定することもできます。利用者端末に複数の名前解決用ネームサーバが設定されている場合、どれを利用するかは端末の実装やアプリケーションに依存するため、フルサービスリゾルバ側では利用者が総量としてどの程度の問い合わせを行っているか分かりません。このことから、利用者側の挙動や状態が変わると突然あるフルサービスリゾルバに問い合わせが偏ることも考えられるため、フルサービスリゾルバでは問い合わせ動向を注視しながら、常に処理能力に余裕を持たせた運用を心がける必要があります。

図-2「 IPv4/IPv6 フルルート」の広報元AS数(合算)の推移

IIJが提供するフルサービスリゾルバの観測データを見てみると、利用者の利用傾向を示すように時間帯によって問い合わせ量が変動し、朝3時30分ごろに問い合わせ元のIPアドレス当たり最小の0.13query/sec、昼12時25分ごろにピークを迎えて0.27query/sec程度になっています。昨年に比べると、最小値は0.02ポイント、最大値は0.05ポイント程度減少しています。問い合わせ傾向を通信に使われたIPv4とIPv6のIPプロトコル別に見てみると、昨年からはIPv6が16ポイント程度増えており、IPv4を通信に使った問い合わせが全体の約43%、IPv6が約57%となり、観測開始以降初めてIPv6での問い合わせの方が多くなりました。問い合わせプロトコルに注目すると、UDPが97.67%でほとんどがUDPでの問い合わせになっています。ただ、TCPでの問い合わせは2021年が0.189%、2022年が0.812%、2023年が1.419%、2024年が1.561%、2025年が2.335%であり、近年TCPでの問い合わせ割合が緩やかに増加してきています。DNS over TLS(DoT)での問い合わせが増えてきているほか、TCPでの問い合わせを疎通や動作確認など、何らかの目的で利用する実装があるのではないかと推測しています。

近年の特徴的な傾向として、朝方の正時などキリの良い時刻に一時的に問い合わせが増加することが挙げられます。今年もこれまでと同様に増加が見られました。また、こうした正時の14秒前と9秒前の問い合わせも前年同様増加していることが観測できました。これは近年見られている傾向で、正時に増加する問い合わせ量では急な増加後、緩やかに問い合わせ量が減っていくのに比べて、正時前の増加では急な増加の直後にそれまでの問い合わせ量程度に戻っています。つまり多くの端末がきれいに同期して問い合わせを行っていることから、何かすぐに完了する軽量なタスクが実行されているのではないかと推測しています。昨年は朝8時から夜22時までの正時には逆に問い合わせが減少して、そこから徐々に増加していましたが、今年はすべての正時で増加していました。名前解決を利用している端末の実装に何らかの変更があったと推測しています。

問い合わせレコードタイプに注目すると、ホスト名に対応するIPv4アドレスを問い合わせるAレコードとIPv6アドレスを問い合わせるAAAAレコード、そしてWebサービスの解決に用いられるHTTPSレコードが全体の98%を占めています。AとAAAAの問い合わせ傾向は通信に利用されるIPプロトコルで違いが見られ、IPv6での問い合わせではより多くのAAAAレコード問い合わせが見られます。IPv4での問い合わせでは、全体の71%程度がAレコード問い合わせ、11%程度がAAAAレコード問い合わせです(図-3)。一方IPv6での問い合わせでは、全体の42%程度がAレコード問い合わせ、34%程度がAAAAレコード問い合わせです(図-4)。

図-3 クライアントからのIPv4による問い合わせ

図-4 クライアントからのIPv6による問い合わせ

昨年と比べるとIPv4では+9ポイント、IPv6でも+2ポイント程度Aレコードの問い合わせ割合が増加しています。これに代わって、2020年から観測され始めたHTTPSレコードのDNS問い合わせが2024年の観測に引き続き減少しています。IPv4で16%、IPv6で22%程度となっており、昨年と比べるとIPv4で-1ポイント、IPv6では-2ポイントと減少していました。2022年から観測され始めたSVCBレコードは、IPv4で0.28%、IPv6では0.58%と、まだ全体に対する比率は少ないながらも順調に推移しています。これは、Discovery of Designated Resolvers(DDR)という、クライアントが暗号化に対応したフルサービスリゾルバを検出するための実装が利用されているためと推測しています。

Theme 03 IPv6&モバイル

今回もIIJバックボーンのIPv6トラフィック、送信元AS番号、主なプロトコルについて見ていきます。また、昨年同様モバイルサービスの端末OS別のIPv6有効化率などについても調査します。

トラフィック

IIJのコアPOP(東京3ヵ所、大阪2ヵ所、名古屋2ヵ所)のバックボーンルータで計測したトラフィックを図-5に示します。集計期間は2025年2月1日から9月30日までの8ヵ月間です。

インターネットトラフィック量の期中の推移は、総量で前年比5.6%増となりました。内訳としてはIPv6が25.2%増、IPv4は0.6%増でした。昨年はIPv6、IPv4共に横ばいでしたが、2025年はIPv6が顕著な伸びとなりました。

図-6に、2025年2月1日を100とした指数化グラフを示します。IPv4は100近辺で推移しているのに対し、IPv6は100から140の間、おおむね120あたりで推移していることが見て取れます。

図-5 IIJコアPOPのバックボーンルータで計測したトラフィック

図-6 2025年2月1日を100としたときの変動状況

次に、トラフィック全体に占めるIPv6の比率を図-7に示します。期間中は最小20.5%から最大26.9%で推移し、平均は23.9%でした。昨年と比較すると約4ポイント増加しており、昨年は停滞していたため今年もあまり伸びないと予想していましたが、良い意味でその予想を裏切る結果となりました。

図-7 トラフィック全体に占めるIPv6の比率

表-5に2017年からのIPv6比率の推移を示します。定点観測を始めた当初は4%程度しかなかったIPv6トラフィックですが、全体の約24%を占めるほどに利用が拡大してきました。

表-5 IPv6比率の推移(2017年〜)

送信元組織(BGP Source AS)

2025年2月1日から2025年9月30日までの、IPv6とIPv4のトラフィック送信元組織(BGP Source AS番号)の上位を図-8 と図-9に示します。

図-8 IPv6のトラフィック送信元組織(BGP Source AS番号)

図-9 IPv4のトラフィック送信元組織(BGP Source AS番号)

IPv6では、IIJ内部(AS2497<=>AS2497)の通信が69%を占めます。昨年は66%だったので、3ポイントほど伸長しています。IIJ以外のASについて見てみると、昨年2位だった日本の大手コンテンツ事業者A社が、昨年首位の米検索大手B社を抜きトラフィック比率6%で1位となりました。2位は逆転されたB社で4%、3位は米通販及びクラウドサービス大手のC社で2%でした。その他の顔触れはあまり変わっていませんが、昨年同様飛び抜けて多いところがあるわけではなく、順位は観測時期により変わってくるものと思います。

なお、IPv6で1位のA社ですが、IPv4では5位に位置していますので、IPv6対応サービスを積極的に構築・提供しているのだろうと想像します。

利用プロトコル

IPv6トラフィックのProtocol番号(Next-Header)と送信元ポート番号で解析したグラフを図-10に、IPv4トラフィックのProtocol番号と送信元ポート番号のグラフを図-11に示します。期間は2025年9月29日(月)から10月5日(日)の1週間です。

図-10 IPv6トラフィックの送信元ポート解析

図-11 IPv4トラフィックの送信元ポート解析

IPv6は、昨年と同じくHTTPS、QUIC、NAT Traversal、ESPと続き、これら上位4つのプロトコルで利用率92.4%を占めています。なお、HTTPSは76.3%(+2.3昨年比)、QUICは8.7%(-0.3)、HTTP 0.8%(-0.2)となっており、HTTP系プロトコルで約85.9%(+1.9)と着実に増加していると共に、暗号化の実装が進んでいることが見て取れます。

IPv4のHTTP系プロトコルは、HTTPS 55.8%(+0.6)、QUIC 6.7%(+1.0)、HTTP 4.2%(-1.1)で、HTTP系プロトコル合計で66.8%(+0.6)となっています。こちらもIPv6同様に暗号化の実装が進んでいるようです。IPv6と比較すると、HTTP系プロトコルの割合の低さ、otherに分類されるトラフィックの多さから、IPv4の方が利用方法(プロトコル)のバリエーションが多く、IPv6対応できないアプリやサーバが多いと推察します。

トラフィック傾向は昨年と大きく変わらず、IPv6は夜間の利用が多く、日中と比較すると倍近く利用されているように見えます。ただ、週末になると日中の利用が増加し、夜間利用が若干減少しているようです。IPv4と比較すると、山の形が大きく異なり、IPv4は人間が活動する時間帯にまんべんなく利用されていますが、IPv6はプライベート時間帯(勤務時間外)により多く利用されているように見受けられます。

モバイルのIPv6接続状況

今回も個人向けモバイルサービス(IIJmioモバイルサービス)の接続におけるIPv6有効化率を調査します。また、端末OS種別による違いと端末メーカによる違いの有無も見てみることにします。

IIJmioモバイルサービスに接続している端末のIPv6有効化率は62.9%でした。昨年は60.6%、一昨年は58.73%でしたので、毎年2ポイント程度の増加となっています。端末OS別に見ると、Apple iOS(iPadOSなどAppleの他のモバイル向けOSを含む)のIPv6有効化率は86.9%、AndroidのIPv6有効化率は35.5%でした。AndroidのIPv6有効化率は2年連続で、昨年比+5ポイント上昇していて、全体のIPv6有効化率増加に寄与しています。

次に、IIJmioモバイルサービスでIPv6が有効になっている接続について、接続数の多い順にメーカ別に見てみます。図-12の円グラフですが、Apple(iPhone、iPadなど)の接続数が大半を占め、74%です。次いでGoogle Pixelが10.2%、3番目にモトローラが8.5%と健闘しています。日本メーカでは、FCNTやSharp、Sony、Kyocera、NEC Platformsなどがありますが、接続数はそれぞれ少なく、またIPv6が有効になっていない端末も多いので、それぞれ1%を割る状況となっています。昨年の記事でFCNTのarrows We2はデフォルトでIPv6が有効になっているようだと報告しましたが、今後更に多くの機種でIPv6標準対応が進むことを期待します。

図-12 UEメーカIPv6有効化状況

まとめ
  • 2025年のIIJバックボーンにおけるIPv6トラフィックは前年比25.2%増と大きく伸長し、全体のトラフィック量も前年比5.6%増加しました。特にIPv6の成長が顕著であり、インターネット基盤のIPv6化が着実に進んでいることが示されました。
  • トラフィック全体に占めるIPv6比率は平均23.9%となり、過去最高を記録しました。2017年の4%から約8年で約24%まで拡大しており、IPv6が定着しつつあります。
  • 送信元AS番号別では、IIJ内部通信を除くと、A社が6%で1位、B社が4%で2位、C社が2%で3位となりました。A社はIPv6対応サービスの積極展開がうかがえます。
  • プロトコル別ではHTTPSが主流で、IPv6トラフィックの76.3%を占めています。QUICやNAT Traversal、ESPも含め、暗号化HTTP系プロトコルとVPNプロトコルで9割以上を占めており、セキュアな通信が標準となっています。
  • モバイル端末のIPv6有効化率は62.9%で、iOS(iPadOS含む)端末が86.9%、Android端末が35.5%と、Androidの伸びが全体の上昇に寄与しています。メーカ別ではAppleが圧倒的多数を占めますが、Android陣営ではGoogle Pixelやモトローラ製端末が健闘しています。

Theme 04 インターネットバックボーンのトレンド

IIJのインターネットバックボーンインフラの相互接続におけるインタフェースの状況と、RPKIに関するトレンドを紹介します。

相互接続インタフェースのトレンドと要件

インターネットにおける相互接続を行う上では、インタフェース種別を事業者間で統一させる必要があります。2025年10月現在、IIJでは相互接続のインタフェースとして400G-FR4、100G-LR4及び10G-LRを主に利用して相互接続を行っています。ここ数年のトレンドとして見られる10Gを使った事業者間の相互接続を見直す動きは今年も続いています。相互接続のインタフェースを決定する要素は、トラフィックの流量やお互いのインタフェースの保有数に依存しており、事業者間で条件の合意が形成されれば100Gへ移行しているといった状況が継続しています。

図-13、図-14は、現状のIIJバックボーンにおける相互接続のインタフェースの割合です。2024年のデータについては2025年の抽出条件に合わせてデータを作成しています。本誌IIR Vol.65(https://www.iij.ad.jp/dev/report/iir/065/01.html#anc04)と割合が異なることに注意してください。

図-13 IIJインターネットバックボーンにおける相互接続インタフェースの割合(2024年10月)

図-14 IIJインターネットバックボーンにおける相互接続インタフェースの割合(2025年10月)

400Gインタフェースの利用は相互接続においてはまだ限定的です。グラフ上では100G/10Gの数量が増えたため、0%へ繰り下げとなってしまっていますが、実は少しだけ存在しています。10Gインタフェースは全体の個数から減少が見て取れます。これはここ1年でInternet Exchange Point(IXP)のインタフェースを10Gから100Gへ移行したことが大きな要因だと考えられます。

10Gでは、Link Aggregation(LAG)で接続していたインタフェースは、機器の更改に合わせて100Gへ移行しています。併せて、機器のアップグレード後に事業者間で100Gが用意できたところは100G化を進めています。増強後の10Gインタフェースについては、100GインタフェースからMPOケーブルを使ったBreakoutにより物理インタフェースを束ねて提供することが多くなりました。機器によっては単独の10Gインタフェースを持たず、高速インタフェースから低速インタフェースへ分割して利用する機能を搭載しています。IIJでも機器更改後は、10Gインタフェースの利用を継続する場合、高速インタフェースから低速インタフェースへ分割して利用する機能を導入する機会が増えてきました。

100Gの割合も引き続き増えており、現状の相互接続のインタフェースにおいて主力となっています。100Gインタフェースの種別は100G-LR4を引き続き利用しています。100G-LRのシングルラムダは現状導入には至っていません。

RPKI関連の状況

RPKI関連の状況について確認してみましょう。自組織が保有するIPアドレスの正当性を署名として登録されるROAの状況を見てみます。ROAの登録情報を把握するために、IIJLabで保有するRPKI ROVによるインターネット経路の検証結果データから解析を行いました(図-15、図-16)。インターネット上の全IPv4経路におけるValid(ROAが登録され、経路検証済)の割合が57.18%、Not-Found(ROAの登録がまだ実施されていないもの)の割合が42.68%、Invalid(ROAの登録状況に差異があり、不正経路と扱われるもの)の割合が0.14%でした。IPv6においてはValidが63.32%、Not-Foundが36.25%、Invalidが0.44%でした。

図-15 RPKI MonitorによるROAの当登録状況(IPv4)2025年10月

図-16 RPKI MonitorによるROAの当登録状況(IPv6)2025年10月

IPv4、IPv6共にValidの割合が2024年10月よりも増加していることが分かります。更にNot-Found、Invalidの割合が少なくなっているため、IPアドレスのROA発行が進んだと推測されます。特にInvalidの割合がかなり改善しているためここ1年でインターネット上の経路のROA見直しが進んでいる点は評価できます。

一方、IIJが生成・広告しているインターネット経路のROA登録状況を見てみましょう(表-6)。IIJはAS2497というGlobal ASを保有してインターネットへ参加しており、IIJから経路広告される場合のOriginASはAS2497となります。2025年10月現在において、AS2497がOriginとなる経路のROA登録状況としては、Validの割合が43.65%となります。全体の半分弱においてROA登録されており、経路の正当性が担保されている状況です。一方で、ROAが登録されていないNot-FoundとしてROV判定されている経路は50%以上存在します。ROA登録の敷居が高い理由としては、IPアドレスを保有する組織が自らROA登録、発行する必要があるからと言えます。IIJが保有するIPアドレスは特殊な場合を除いてROA登録はほぼ完了している状況ですが、IIJへIPアドレスを持ち込まれているユーザにおいてはまだROA登録が進んでいないことが確認できます。IIJでの代行登録ができない現状ではユーザ自身に登録してもらう必要があります。IIJがサポートしますので、ぜひAS2497のROA登録率を上げていけるよう、引き続きご協力をお願いいたします。

表-6 IIJが生成・広告しているインターネット経路のROA登録状況

また、IIJがお客様の経路をトランジットしている割合を含めると、全経路の56.72%はROVでValidとして判定されています。この数値は昨年度の統計結果よりも増えており、日本国内においてもROAの発行が進んでいることが改めて確認できます。

執筆者プロフィール

1.BGP・経路数

倉橋 智彦(くらはし ともひこ)

IIJ ネットワークサービス事業本部 基盤エンジニアリング本部 運用技術部 技術開発課

2.DNSクエリ解析

松崎 吉伸(まつざき よしのぶ)

IIJ ネットワークサービス事業本部 基盤エンジニアリング本部 運用技術部 技術開発課

3.IPv6&モバイル

佐々木 泰介(ささき たいすけ)

IIJ モバイルサービス事業本部 MVNO事業部 基盤開発部

4.インターネットバックボーンのトレンド

蓬田 裕一(よもぎた ゆういち)

IIJ ネットワークサービス事業本部 基盤エンジニアリング本部 ネットワーク技術部 ネットワーク技術1課

1. 定期観測レポート
IIJインフラから見たインターネットの傾向〜2025年

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