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Internet Infrastructure Review(IIR)Vol.29
2015年11月25日発行
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目次

インターネットトピック

モジュール型データセンターの展開

データセンター全体の電力需要は、2015年から2020年の年平均成長率で、ヨーロッパ4.2%、北米5.8%、APAC6.8%、中東・アフリカ10.6%、中南米11.2%、と世界的に伸長していくと予測されています。また、モジュール型データセンター市場は、データセンター全体の成長率より2倍以上高い23.2%で拡大していくと予測されています。このような中、IIJが独自開発したモジュール型データセンター「co-IZmo/I (コイズモ アイ)」は、拡大を続ける国内外の市場において高いプレゼンスを確立しつつあります。

クラウド基盤としての運用実績と新型モジュールの開発

図-1 co-IZmo/I

ファシリティとしてのデータセンター、とりわけモジュール型データセンターの市場は今後数年間で更に拡大すると予測されています。そこでIIJは、この市場に挑むべく、「co-IZmo/I(coはコンパクト、IはIndirect:間接外気を意味します)」を開発しました(図-1)。co-IZmo/Iは、2011年に他社に先駆けて開発され現在も松江データセンターパークにてクラウドサービスの商用基盤として稼働している「IZmo」モジュールで培ったノウハウに基づいて開発されました。これらIZmoシリーズは、データセンター固有の空調制御システムや内部構造など、これまでの運用経験や使う立場から得られたノウハウを凝縮して設計・開発されています。この点がIIJと他のモジュール型データセンターベンダーとの差異であり、比べた際の強みになっているのです。運搬しやすい20フィートコンテナ(長さが約6m)のco-IZmo/Iは、外気を間接的に使用する冷却方式を採用することにより、高い省エネ性能を実現しつつ外気があまりきれいでない場所に設置することができます。従来は物理的に分けて設置されていた空調や停電時のバッテリーなどの電気設備を1台のモジュールの中に収容することで、設置期間の短縮及びコスト低減を実現しました。複数台連結することにより容易にスケールアウトも可能で、中~大規模データセンターの構築にも利用できます。

実績

図-2 松江データセンターパーク

2014年は、国内の研究機関に4台、ロシア企業に1台、モジュール型データセンターを納入しました。某ロシア企業との商談は、海外メディアなどに取り上げられたことがきっかけで、IIJの代表電話に直接連絡が入ったことから始まりました。利用目的はプラント制御用のバックアップシステムとしての設置で、他社製品と比較して品質面で優れていることや、実際に松江において数十台のモジュールを長期間商用レベルで運用していることが高く評価され、採用に至りました(図-2)。

ロシアへの輸送手段は、横浜港からウラジオストクまではコンテナ船を使い、ウラジオストクから最終設置場所であるモスクワから数百km離れた工業都市へはトレーラで輸送しました(図-3)。co-IZmo/Iは積み重ねに耐える強度はあるものの、クレーンで吊って船に下すときの衝撃が大きいため、平置きにて輸送しました。ロシア内での陸送手段としてはシベリヤ鉄道も検討しましたが、最終的にトレーラを採用しました。バイカル湖周辺での悪天候により何週間も足止めされるなど予想もつかないことが起きましたが、冬期はマイナス30°にもなる環境のもと、今日に至るまで安定稼働しています。

図-3 モジュール工場から出荷→横浜港でコンテナ船に搬入→横浜港からウラジオストクに向かうコンテナ船→現地での設置作業

マーケティング活動

今年度は、グローバルマーケット開拓のために海外でのマーケティング活動を強化し、7月に香港、9月にシンガポール、10月にハンガリーの展示会へ出展し、東南アジアをはじめ世界中の企業や公共機関と商談を進めています。要望は次のとおり様々です。

  • IT事業用にデータセンターを短期に作って早く事業を始めたい
  • 信頼性向上のために複数の場所に小規模のデータセンターを分散配置したい
  • 公共機関の基盤システムとして高品質なデータセンターを作りたい

co-IZmo/Iは、ビル型のデータセンターのように特殊な施設設計や工事ができる要員を確保しなくても、高品質なセンターを短期間で構築できるところが評価されていると感じます。

シンガポールの展示会では、既存サーバルームのバックアップ用途や、インドネシア、マレーシア、ミャンマーの企業に提案したいITコンサル会社など、東南アジアでのモジュール型データセンターに対するニーズを広く感じることができました。7月に香港の展示会へ出展した際にはここまでのニーズはなかったため、やはりシンガポールは東南アジアにおいて、データセンターを含む経済活動全般の中心地であり、ポテンシャルの高い地域であることが確認できました。ハンガリーの展示会では、アフリカ、中欧、中東諸国からの企業、政府機構の来場者が多く、40℃以上・マイナス40℃といった過酷な環境でも使えることや、松江データセンターパークの実績、容易にスケールアウトが可能であることに関心が集まっていました。

9月にシンガポールで開催されたデータセンター専門の展示会「DatacenterDynamics Converged」においては、IIJのマーケティング活動を後押しするかのように、co-IZmo/Iと日本電気株式会社のIAサーバExpress5800シリーズが共同で「Critical Environment Future Thinking 2015 Awards(※1)」を受賞しました。これにより、co-IZmo/Iの知名度に加え、信頼性・品質に対する認知度向上に繋げていけるものと考えております。

今後の活動

IoTの分散処理基盤や、動画配信ネットワークのキャッシュとしての利用など、モジュール型データセンターが活用されるシーンは今後益々増えていくと考えられます。IIJは、インターネット接続、SI、運用アウトソース、回線、データセンターラック貸しなどのITサービスを中心に提供してきましたが、モジュール型データセンターを提供することにより、これまでIIJが関わることのできなかったデータセンターファシリティ構築にもビジネスの領域を広げつつあります。更に、ファシリティだけではなく内部のITシステム、ネットワークサービスや、その後の運用をワンストップで提供するためのサービス/技術開発を進めており、今年度は日本国内及び全世界に広がるco-IZmo/Iを松江データセンターパークから一元的に管理・運用するオプションメニューの提供を開始しました。今後も、大きく変動するIT市場を切り開いていくような技術開発を含むビジネスへの取り組みを推進していきます。

  1. (※1)「Critical Environment Future Thinking Awards」は、次世代の最先端のデータセンターソリューションを具現化する技術革新と取り組みを表彰するものである。「co-IZmo/I」とNECの40度での動作保証を実現した「Express5800シリーズ」のモジュラー型及びラック型サーバを組み合わせることにより、東南アジアのような高温多湿の環境においても優れた省エネ性能を保ちつつ、クラウドサービスに必要とされる高密度実装や容易なスケールアウトを実現できることが、高く評価され受賞に至った。

久保 力

執筆者プロフィール

久保 力 (くぼ いさお)

IIJ サービスオペレーション本部 データセンターサービス部長。2008年にIIJに入社。国内外のIIJグループのデータセンターを統括しながら、ITとファシリティの融合を目指し、コンテナ型データセンターをはじめとする技術開発を推進。


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