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AIの爆発的な進化・普及にともなう社会変革が進むなか、IIJは「AIネイティブ」な企業として成長機会を得るべく、新たなAI事業戦略を打ち出した。
本稿では、本格的なAI化を進めるにあたり、「AIバックボーン事業者」としての展望と決意を語る。
AIの進化・普及はもはや一過性の“ブーム”ではありません。 AIは膨大なデータを学習して大量のデータ生成物を生み出すことで、データ駆動社会の実現を加速化します。また、組織の意思決定プロセスを自動化して詳細なデータを解析することで、社会全体の解像度を上げて社会課題を生み出すメカニズムを解明し、課題解決に貢献することが期待されています。さらに、少子高齢化に直面している日本の場合、 AIとロボティクスを組み合わせたフィジカルAI*1によって生産性を向上させるとともに、労働力不足を補い、飛躍的な付加価値の向上や企業の持続的成長を実現することも望まれています。
一方、過度にAIに依存することで、 AIというデジタル技術を制御できなくなることが懸念されています。具体的には、 AIの開発や利活用における透明性の確保、ガードレール機能*2の実装といったリスク管理を含むAIガバナンスの強化が急務となっています。
IIJは1990年代に商用化(民間開放)されたインターネットという20世紀最大の発明がもたらした関連技術を軸にネットワークサービスをコアコンピタンスに据え、これにシステムインテグレーション(SI)を組み合わせた「サービスインテグレーション」の領域で成長を続けてきました。これはサービス化(as a service)されたソフトウェアをネットワーク経由で利用するクラウドベースエコノミーの進展に適合するものでした。
そして今、 AIの社会実装という新たな変革期を迎え、膨大なデータがネットワーク上を超高速で流通する社会を実現するうえで、その強力なツールであるAIを基盤技術として事業運営に組み込み、「AIネイティブ」な企業として新たな成長機会を積極的に獲得していく考えです。
こうした認識のもと、当社は数年にわたりAI実装を進めてきましたが、本年5月、新たなAI事業戦略を発表しました。
このAI事業戦略では、 AIを自社の生産性を高める「内部変革の手段」と位置づけると同時に、サービスの高度化、運用自動化、セキュリティ強化、新たな需要獲得など「サービス競争力を高める基盤」として、2030年3月までに全社業務の3割をAI化することを目標に掲げています。
こうしたIIJの内部変革とサービス競争力の強化を実現するための「AIネイティブ」な事業構築に向けた取り組みの方向性は、次の4点に集約されます。
IIJは100を超えるネットワークサービスを提供していますが、これらを再構築し、マイクロサービス(特定の機能を担う最小単位のサービス)を基本メニューとして用意します。そして、お客さまのニーズに合わせて複数のマイクロサービスを自由に組み合わせることができる「サービスオファリング」をAI活用によって実現します。こうしたAIOps*3(AIを活用した運用の高度化)を積極的に導入してサービスを差別化し、多様なニーズに柔軟に対応できるようにします。
部門ごとにAIツールが乱立すると、セキュリティ・認証・ログ管理・ガバナンスがバラバラになり、円滑なAI利用に支障をきたします。そのため、これらの機能を組み込んだ共通基盤を構築するとともに、 AIエージェントの実行環境、機微データの流出を防ぐAIセキュリティ機能、社内システムとの連携機能などを整備します。
当社自身がAIの最大の利用者となるべく、開発・運用・営業・管理といったあらゆる業務をAI前提で再設計し、それにもとづくAI駆動開発・AI駆動運営を進めます。例えばネットワーク運用の面では、 AIを最大限活用してネットワークリソースの自動的な最適化を図るAIオーケストレーション*4を構築します。
ただ現状では、当社の持つ高い技術的優位性の多くは、技術者個人の暗黙知として蓄積されています。こうした業務知識や運用ノウハウをAIによって形式知化し、組織として再利用可能な資産に変換・活用して、差別化を図ります。
AI活用の成否は、モデルそのものより、利用できるデータの質と管理に左右されます。 IIJは、データ収集・加工・マスキング・証跡管理を標準化して、 AI活用の前段となるデータ準備工程の共通化を図り、クラウドや社内システムに散在している業務データを集約・構造化し、組織横断的かつ効率的にAIを活用できる仕組みを整えます。こうした取り組みを通じて、企業内のデータ資産を最大限活用できる環境を実現します。

IIJは、 AIネイティブな事業に全面的に舵を切り、AI前提のサービスアーキテクチャの構築、全社共通のAIプラットフォームの構築、 AI駆動開発・AI駆動運営の推進、AI-Readyなデータ基盤の構築を進めます。そしてAIの積極活用から得られたノウハウを自社内に留めることなく、お客さまに対する付加価値としてサービスやSIへの展開、関連コンサルティングサービスへの実装を進めます。社内で培ったこれらの経験やノウハウをお客さまに提供する際も、ネットワークとSIを車の両輪として展開してきたIIJの強みを活かすことができます。
Anthropic社のClaude Mythos(クロード・ミュトス)*5に代表される高度なAIの登場により、人間を遥かに上回るスピードと規模で企業システムの脆弱性が発見されています。
こうした状況に対応するには、必ずしも新たな対策を講じることが求められるとは限りません。既存の対策が確実に機能しているかどうかの検証サイクルをより高速に回すとともに、対策の十分な深化を図る必要があると考えています。
具体的には、 AIを前提としたセキュリティ対策の導入に最大限努めつつ、脆弱性の検証や対策の頻度を飛躍的に向上させるといった新たな脅威に対する自律的なセキュリティ運用に注力するほか、内外の膨大な脅威情報を自動的に解析するスレットインテリジェンス*6の導入に向けた検討を進めます。その際、お客さまの経営判断を支援する新たなコンサルティングなどのサービスメニューも強化します。
さらに、 IIJは既存のコアコンピタンスであるネットワーク基盤の構築・運用のノウハウを活用して、 AIを安全に動かすインフラ基盤であるAIバックボーン*9の領域でアドバンテージを獲得することを目指します。
当社はAIモデルの開発競争そのものに参画することは考えておらず、既存の経営資源を最大活用する観点から、 AI利用を前提とした大容量・低遅延のネットワーク、 AI向けのソブリンクラウドサービス*7(GPUリソースの提供)、 AI基盤サーバの高発熱対応が可能な液冷方式を採用したデータセンター*8、分散型データセンターの一翼を担うエッジデータセンターの構築など、 AI活用を支えるバックボーン、すなわちAIを円滑に稼働させるために必要な基盤を提供する「AIバックボーン事業者」としての地位を確立することを目指します。
これに関連して当社は、データセンター(ひいてはAI)および電力の地方分散を一体的に進めるワット・ビット連携*10にも積極的に取り組みます。ワット(電力)とビット(データ処理)を連携させながら、ネットワーク化された地域分散型の複数のAIデータセンターを構築・運用することで、地域資源の有効活用や地域経済の活性化に寄与します。
IIJはこうしたAIバックボーンの構築にすでに着手しており、具体的な成果も出てきています。そして引き続き、ビジネスパートナーとも連携しながら新たなビジネス展開を進めていきます。 IIJは既存のネットワーク基盤の知見を最大限に活かして、 AIバックボーン事業者として先行的な取り組みを推進します。
IIJの事業基盤はネットワークとSIを組み合わせたサービスインテグレーションにあります。これらの事業領域にAIが深く浸透するなか、 IIJはAI関連の取り組みを実験段階から実装段階へと本格的にシフトして、 AIネイティブな事業構築を進めてまいります。
AIとロボティクスなどを組み合わせて、現実空間での作業や制御を自動化・高度化する技術。
システムやサービスが想定外の動作や不適切な利用に至らないよう制御する仕組み。AIでは、危険な出力や不適切な応答を抑える機能を指すことが多い。
AIを活用して、ITシステムやネットワークの監視・運用・障害対応を高度化・自動化する考え方。
複数のAIやシステムを連携させながら、処理の流れやリソース配分を全体として最適化する仕組み。
Anthropic社が提供する高度なAIモデル。サイバーセキュリティ分野での高い能力が注目されている。
サイバー攻撃の手法や脆弱性などの脅威情報を収集・分析し、対策に活用する取り組み。
自国の法律や規則に準拠し、データ主権、システム主権、運用主権を確保したクラウドサービス。
液体を用いてサーバを効率的に冷却し、高発熱のAI基盤に対応できるようにしたデータセンター。「IIJ.news vol.194」参照。
https://www.iij.ad.jp/news/iijnews/vol_194/detail_05.html
AIの利用を支えるネットワーク、計算資源、データセンターなどのインフラの総体
データ処理・通信とそれに要する電力を一体的に捉えて、データセンターや計算処理の配置・運用を最適化する考え方。

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