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データセンター ~AI時代を支えるデジタルインフラ “空冷から液冷へ”――次世代データセンターを支える冷却技術

IIJ.news Vol.194 June 2026

AI時代の到来を機に、データセンターにおける消費電力増大への対応が不可避になるなか、施設内の機器をいかに効率的に冷却するのかという発熱対策は、技術的側面を超えて、今や経営課題になっているといっても過言ではない。
ここでは、こうした現状に対応するためのデータセンターの冷却方式について考察してみたい。

執筆者プロフィール

IIJ ネットワークサービス事業本部 基盤エンジニアリング本部 データセンターサービス部 営業支援課

平川 一貴

IIJ ネットワークサービス事業本部 基盤エンジニアリング本部 データセンターサービス部 データセンター基盤技術課

河内 海斗

冷却方式は経営課題

近年、データセンターにおける冷却方式は、空冷から液冷に移行しつつあります。その背景には、 AI用途のGPUを中心とした高性能サーバの普及により、データセンター全体の消費電力やラック当たりの発熱量が急激に上がっている現状があります。従来の空冷方式は導入が容易で初期投資を抑えやすい一方、大量の空気循環が必要で、冷却用の電力がデータセンター全体の30~40%を占める場合もあります。そのため空冷方式においては、高効率な空調機器の導入や気流制御、直接外気冷却などさまざまな工夫により、電力コストの低減が図られてきました。

一方、液冷方式は水や冷却液の高い熱伝導性を活用して、 CPUやGPUなどの発熱源を直接冷却します。検証事例ではPUEの改善や数十%の冷却電力の削減が報告されています。

消費電力の抑制は運用コスト低減に寄与するだけでなく、環境への負荷を軽減します。初期投資は空冷方式に比べて大きく、サーバやラックの提供者と密接に連携して設計などを行なう必要がありますが、効率的な収容能力や将来的な電力コストの低減を加味すると、液冷方式は中長期的には合理的な選択肢と考えられます。

こうした流れのなか、データセンターの冷却方式は単なる設備の問題から、電力コストと環境への配慮を最適化するための“経営課題”へとその位置づけが変化しつつあります。

Direct Liquid Cooling とは?

液冷方式と言っても、さらに細かく分類されるのですが、なかでも注目されているのが、発熱源であるCPUやGPUを液体で冷却する「Direct Liquid Cooling(以下、DLC)」です。

DLCの最大の特徴は、空間全体を冷却するのではなく、高発熱箇所を局所的に、効率よく冷却する点にあります。これにより、空冷方式では対応がむずかしかった1ラックあたり100kW級の高発熱構成にも対応可能となり、 AIや次世代計算基盤の収容を実現しました。

DLCは、データセンター全体にまたがる一次側設備と、サーバラック周辺の二次側設備から構成されます。冷却液は、チラーやドライクーラーなどの熱源機器で冷却されたのち、配管を通じてサーバ室近傍に供給され、CDU(Coolant Distribution Unit)で一次側と二次側の熱交換が行なわれます。その後、冷却液はサーバラック内のマニフォールドを経由して、各サーバに搭載されたコールドプレートに供給されます。コールドプレートで熱を吸収した冷却液は、逆経路で熱源機器に戻って来るという循環構成になっています。(図1)

図1 Direct Liquid Cooling (DLC)の仕組み

CDUは、液体冷却の要となる仕組みであり、冷却液の温度・流量などを制御し、一次側・二次側の熱交換を担います。設置形態としては、インロー型とインラック型の2種類があり、前者は500kW~2000kW規模の大容量を扱い、架列単位での制御に適しているのに対し、後者はラック単位でのきめ細かな制御に適しています。近年ではCDU内部のポンプ、配管、フィルターを冗長化して、運転を止めることなく部品交換が可能な製品も登場しており、データセンター用途に求められる高可用性への対応が進んでいます。

サーバラック内では、マニフォールドが冷却液を各サーバへ分配する役割を担います。マニフォールドの設置には、高さ方向に一定のスペースが必要なため、従来のラックサイズでは収まりきらない場合もあり、ラックが拡張されたり、専用フレームが追加されるケースがよくあります。接続部には、OCP(Open Compute Project)で規格化されたUQD (Universal Quick Disconnect)が用いられ、ワンタッチ着脱と漏水防止機構により、保守作業の効率化と耐久性向上が図られています。

CDUの二次側では、腐食リスクの低いプロピレングリコール25%水溶液(PG25)が多用されますが、純水などを用いる場合もあります。ちなみに、一次側では水道水相当の水が使用されるケースが多く、 CDUの要求水質にもとづいた管理が必要です。水質は「ASHRAE Handbook」のガイドラインに定められた項目に準じることが多く、適宜、防腐剤の注入や水質改善策が行なわれます。

サーバ室内に敷設される水配管は、天井から吊り下げて敷設する方法(上配管)と、フリーアクセスフロア内に敷設する方法(下配管)があります。日本では漏水リスクを考慮して下配管が採用されることが多いですが、上配管で敷設しているデータセンターも存在します。いずれの場合も、コスト・施工性・保守性・リスクなどのバランスを踏まえた設計が肝要です。(図2)

図2 サーバ室内の冷媒管敷設イメージ

DLC導入のポイント

DLC導入に際して留意しなければならないのが、空冷方式の併用は必須である点です。コールドプレートでは冷却されないメモリ、電源部品、ネットワークスイッチなど液冷非対応機器のために、空冷方式とのハイブリッド構成をとる必要があります。一般に、全冷却能力のうち約7割を液冷で、3割を空冷でまかなうのが目安とされますが、実際には個々の機器構成に応じた設計がなされます。データセンター事業者は全ての個別設計に対応できる設備を用意しているわけではないので、空冷能力をどの程度確保すべきか、見通しを立てておく必要があるでしょう。昨今ではメモリなども液冷するサーバが現れており、サーバのファンレス化が進んでいますが、現状では空冷の併用が前提となっています。

DLCの課題

DLCの技術そのものは、以前からスーパーコンピュータの業界でも取り扱われていましたが、近年のデータセンターへの適応に際しては、多くの課題が残されています。

例えば、配管の冗長性について、N+1構成で往環の配管を敷設すると、最低でも合計4本の配管が敷設されることになります。これは当然、コストや設置スペースに影響してくるので、慎重な設計が求められると同時に、CDUの接続口は基本的に往きと還り各一口しかないため、配管に加えて機器の冗長性についても検討しなければなりません。また万が一、サーバ室内で漏水が起こった場合、運用を止めずに迅速かつ的確なオペレーションが必要となるなど悩みは尽きません。

白井データセンターキャンパスの三期棟では、 DLC導入を見据えて、専用熱源の設置スペースや配管ルートをあらかじめ確保した「水冷 Ready 設計」を採用しています。高発熱サーバの将来的な導入に設計段階から備えることで、従来のデータセンター像に囚われない、柔軟かつ拡張性を備えた仕様になっています。

近年、海外では「Data Center」ではなく「AI Factory」と呼ばれており、旧来の設計・運用をベースとした“常識”に囚われないことが重要だと考えています。

2026年度中の運用開始を予定している白井データセンターキャンパス3期棟のイメージ


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