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コラム|Column

【山谷剛史の中国近未来解説(全6回)】
第4回:中国のシェアブームとO2Oブームを考える

2017/11/06

中国でのシェアサービス

シェアサイクルとシェア傘。
後者はぼろぼろに

中国ではMobikeやofoをはじめとしたシェア(中国語で「共享」)サービスが次々と出ている。シェアサイクルほか、シェアバッテリーやシェアカーやシェア傘、シェアホテル、シェア駐車場などが挙げられる。一方で似たようなサービスが乱立し、撤退するシェアサービスも報じられる。中国で暮らしていると、ニュースではあまり報じられることのないボロボロになったシェアサイクル用自転車などを日常的に見かける。多くのシェアサービスが1元~数元(1元≒16.5円)で利用できる一方、すぐに傷つき壊れてしまうので、儲かるサービスはそうないようだ。いや儲けるビジネスをつくるのではなく、投資を得るのがシェアサービス立ち上げ企業のとりあえずのゴールであれば、憂さ晴らしの対象であろうとライバル企業の嫌がらせであろうと、壊されることを想定しなくてもよいのかもしれない。

話題となれば投資が得られ、投資を得てシェアビジネス用の製品を大量に生産しばらまいて、さらなる投資を得てシェアを高める。外国に進出すれば、外国に進出したことが実績となり、海外展開が小さなものだろうと投資家から評価される。一方でシェアがとれないことから撤退する企業が目立ちはじめると「いつか来た道」と中国メディアが分析する。その「いつか来た道」でよく例えられるのがO2Oブームだ。

“シェア”と“O2O”との違いは

O2OはOnline to Offlineの略で、中国での代表選手はUberのような配車サービス「滴滴打車」や、「餓了ma(maは口へんに馬)」「美団外売」「百度外売」といった外売と呼ばれる食堂・レストランのフードデリバリーサービスだ。現在残っているものといえば、Airbnb的な短期滞在サービス「途家」「ma蟻短租(ma=虫へんに馬)」「木鳥短租」、ネット有料相談サービスの「問ka(ka=くちへんに加)」「値乎」「分問」「知乎Live」「喜馬拉雅FM 好好説話」、家事代行の「阿姨幇」、中古取引の「閑魚」、中古車取引の「瓜子網」、クラウドソーシングの「猪八戒」、家庭教師の「瘋狂老師」、ネイルサービスの「河狸家」などが知られている。

中国の現在のトレンド「シェア」ブームと、過去形のトレンド「O2O」ブームだが、どちらもオンラインでオフラインのサービスを享受することには変わりない。シェアブームが進むにつれて、スマートフォンでQRコードをかざし電子決済を利用した上で何かを利用すれば「シェア~」と命名されがちだ。両者の境界線は曖昧だが、2つの差はオンラインのサービスで「モノ」をシェアするのか、「人」をシェアをするのかの違いにある。

例えばシェアカーといえば、スマートフォンで電子決済したのちに解錠して利用するレンタカーだが、O2Oの車サービスといえば運転手付きの配車サービスとなる。スマートフォンを使う点では同じだが、Airbnb的な民泊はO2O扱いだが、企業が清掃も含めて中国中の預かった空き部屋を運用すればシェアホテルとなる。

利用したくなるシェアサービスとは

シェアサイクルとフードデリバリー

シェアサービスを普及させるためには、莫大な数を投入しないと認知してもらえない。シェアサイクルのMobikeやofoがサービスをリリースしている大都市においては両社の存在感は絶大だ。市内であればどこでも見かけることができる。一方、東京でサービスが開始されている自転車シェアリングにおいては、サービス地域が拡大し、自転車投入台数が増えている一方で、東京圏在住の人でも知らない人はまだまだいる。中国の各都市のシェアサービスはどんな人でも認識するほど圧倒的な物量を投入しているのだ。

Mobikeやofoに比べればシェアバッテリーや、シェア傘などは数が少ないので、それらの中国での認知度は低い。ニュースやSNSで見た関心があるファーストユーザー層は利用したがるが、多くの人はそうはいかない。ましてや中国のMobikeやofoなどのシェアサイクルと異なり、利用した先で借りたモノを放置するわけにはいかず、かならず返却場所に戻さなくてはいけない(日本のMobikeやofoは返却場所に戻すタイプのサービスだ)。

筆者の日常経験においても、わざわざ返却場所に戻さなければいけないシェアサービスを利用したいと思うケースは少なかった。一方で適所にあれば筆者も使いたくなったし、筆者だけでなく多くの人が利用したくなるようだ。例えば会議場のシェアバッテリーは好例で、スマートフォンで撮影、録音、メモを行う記者は新規会員になってでも借りたくなる。また展示場内のホールからホールへ外を通って移動するときに雨が降っているなら、シェア傘を借りたくなる。

シェアバッテリー

レストランのシェアバッテリー器

出口がいくつもあるショッピングモールでは借りたいと思わないシェアバッテリーだが、宿泊しているホテルなら、短時間利用など便利で宿泊中に借りる機会が多くなる。同様にレストランにシェアバッテリーがあれば借りたくなる。レストランにとっては客寄せとなるが、一方で長居されるリスクもある。そういえば中国でのシェアサイクルの始まりも、ofoが大学構内の移動用に投入したのがはじまりであった。シェアサービスを効率よく認知させるには、適材適所での投入が必要となろう。

中国のシェアサービスに入り込むのは難しい。投資を受け圧倒的な資金力で物量投入しているので、ちょっとした金額の投資は歓迎されないし、現状そこへの広告枠も極めて少ない(ないわけではない)。しかし海外に出ることで話題となりさらに投資を受けられることから日本企業が提携して日本で中国のシェアサービスを始める手助けをするなら歓迎されるだろう。

マンションの空き室を活用したO2Oサービス

一方でO2Oは人の手を借りることになる。人件費は上がる一方なので、例えば配送員によるフードデリバリーは成り立たなくなるのではないかという説もある。フードデリバリーだけでない。家政婦、ネイリスト、家庭教師などはそもそもあまり認知されていないので、仕事もあまりやってこない。よほど有名でもない限りは、O2Oのサービスに登録して、その技術で生きていくのは至難の業だ。では中国でO2Oサービスは終わってしまうかというとそうは思わない。中国経済がよく、庶民のお財布事情に余裕がある限り残ると予想している。

中国人の多くが楽観的でないかと思われる。それは経済的にも家族の間の絆は強く、かつ不動産を余計に持っているので、物価が上がってもそれほど心配事ではないのだ。 というのも、遡るとおおよそ1970年代生まれ以前の都市部の公務員は家を安くあてがわれた。日本円にして30万円で家を購入できたという話も聞く。建物が建ってから壊されるまでのサイクルが早い中国では、80年代以前の低層集合住宅が次々と壊され、高層マンションへと立て替えられる。公務員の所有する家も壊されるが、その際ほぼ同じ大きさの1室がもらえる。こうした背景から70年代以前に生まれた人々は、手放す理由がない限りは資産である高層マンションの一室を保有し、家族と共有の資産としている。

オフィスビル内に作られたカフェ。
ネットの情報のみで客はやってくる

ただしタダ同然で得られるマンションの部屋は、現状のトレンドである3LDK、100平米以上の家とはいかない。そこで人によっては住むことなく貸したり、店を開いたりしている。中国では物価も家賃も上昇しているが、持ち家であれば家賃がかかるわけではない。こうした環境下で店を開くことが普及している今、競争が発生しているものの、オーナーとしては遊び半分の人もいるので淘汰されるというわけでもない。レストランの口コミサービス「大衆点評」や「美団」などを活用して、空いた一室に店を構えアピールする手段が認知され急拡大していった。専用のサービスのO2Oではないが、ある意味これもO2Oではある。客はネットの口コミサービスのアプリやサイトを開いて、目的の趣味趣向の店や、周辺の店一覧を出し、興味のある店を発見し、マンションのエレベーターで建物を上って目的の一室に行く。

マンションの一室に作られた
「リアル脱出ゲーム」

定番の店は、カフェやリアル脱出ゲームや、モノづくりをする場だ。競争に勝つ魅力的な部屋をつくるべく、日本からインテリアになりそうな商品を輸入し設置する店もある。インテリアというと高そうにも思えるが、100円ショップのものや、中古レコード店の数百円のレコードを輸入し飾る店もある。モノ作りでは例えばプラモデルや絵画や皮製品づくりが挙げられる。新しく建てられた高層マンションの中の遊ばせている空き室の店が、どうネットサービスで活かされるかは日本も学ぶべきところだろう。日本の中小企業が中国に進出する際は、そうした売り方で小さくスタートするという手段もある。

山谷 剛史

1976年東京都生まれ。中国アジアITジャーナリスト。
現地の情報を生々しく、日本人に読みやすくわかりやすくをモットーとし、中国やインドなどアジア諸国のIT事情をルポする。2002年より中国雲南省昆明を拠点とし、現地一般市民の状況を解説するIT記事や経済記事やトレンド記事を執筆講演。日本だけでなく中国の媒体でも多数記事を連載。

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