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コラム|Column

【山谷剛史の中国近未来解説(全6回)】
第2回:高齢者と子供の間でネット普及率上昇。そこにビジネスチャンスはある

2017/08/15

中国でのインターネット利用の現状

中国のインターネット利用者の最も公式なデータといえるものは、CNNIC(China Internet Network Information Center)が発表しているものだ。これによると2017年6月末時点でのインターネット利用者数は7億5100万人だとしている。全人口に対して普及率は53.2%となっている。以前に比べ普及のスピードは落ちている。

CNNIC発表モバイルインターネット利用者数推移

ファーウェイ、OPPO、
vivoの3社のスマホが中国で今人気だ

一方で政府オフィシャルな発表としては、情報省にあたる工業和信息化部(略称工信部。信息は「情報」の意味)がある。こちらではインターネット加入件数が紹介されている。これによる4G加入件数は8億8812万件、3G加入件数は1億4868万件で、合計で10億を超す。またブロードバンド回線加入件数は3億2195万回線となっている。こちらは加入件数なので1人2台持ちや、会社用の番号もあるだろうが、数値としてはより正しそうだ。

7億5100万というインターネットユーザー数と10億超の3G、4G契約数には違いがある。ただし中国で平均して1人1台以上スマートフォンを持っていてインターネットを利用しているかというと疑わしい。以下に分析を書く。

貧しい地域でもスマホは珍しくない

現時点で稼働する3G、4Gの端末のほとんどがスマートフォンだろう。スマートフォンは調査会社のCanalysの発表によると、2017年第2四半期に1億1300万台のスマートフォンが出荷された。単純計算では年間4億5000万台程度出荷されることになる。また中国では平均で1年半に1台スマートフォンを買い替えるというデータがある。なお筆者の個人的な感覚ではあるが、筆者の滞在する中国の内陸の地方都市で街歩きをする中でフィーチャーフォンを使っている人は最近では見たことがない。

中高年もスマホをいじるのが当たり前に

またスマートフォン用アプリとして最も人気のメッセンジャーアプリ「微信(Wechat)」は、リリースする騰訊(Tencent)によると、月間アクティブアカウント数が9億3800万となっている。一方で調査会社の猟豹全球智庫によると、アプリの週間アクティブ利用率は80%超となっている。スマートフォンがないと利用できない微信(WeChat)が8割のスマートフォンで利用されているとすれば、逆算して11億7300万台程度のスマートフォンが動いていることになる。1台のスマートフォンで微信の数アカウントを同時に操作できる微信関連アプリはあるものの、3G、4Gだけでなく2Gで稼働しているスマートフォンがあると考えると3G、4G契約数10億超という数字に違和感がなくなる。

高齢者と子供のインターネット普及率について

さてCNNICの統計を見てみると、10歳以下のインターネット利用者数がインターネット利用者全体から見て非常に低く、3.1%程度だとしている。10歳以下が少ないのは以前の同統計から変わらない傾向だ。また50歳以上が5.8%、60歳以上が4.8%と低い。 一方で中国青少年研究中心による2005年と2015年の小中学生の情報機器所有率やお小遣いについての調査「中国少年児童発展状況研究」では、15年の小中学生のスマートフォン所有率は64.6%、05年の小中学生は8.0%、パソコン所有率は15年の小中学生が29.1%、05年の小中学生は9.7%と3倍もの大きな差があると回答している。となると、実際のところは10歳以下のネット利用率が大幅に増えたと思ってよさそうだ。

CNNIC発表年齢別インターネット利用者。子供と中高年は使わないというが…

スマホで遊ぶ子供。都市ではよく見る光景だ

長々と書いたが、筆者の結論としては、CNNICの近年の統計では、それまでインターネットを利用していなかった中高年や子供の利用がつかみきれていないと推測する。

対応する製品もコンテンツも追いついていない

子供用デジタル製品は出ているものの、
大人のひとりよがり感がある

高齢者用は安いがスペック不足で
ニーズに応えてない製品ばかりだ

中国でスマートフォンの普及により、これまで利用率が低かった子供と高齢者の利用が急増している。ところが子供と高齢者用のコンテンツはあるが、ぱっとしない。子供と高齢者向けのWEBサービスはあるにはあるが、まだ定番はなくブルーオーシャンが残っている。

中国のこれまでのメインストリームであるインターネット世代は大学生~40代半ばだ。彼らは自作PCが作れてアプリも自分でインストールできるから、サポート要らずだし、インターネットに慣れていない家族もサポートしている。またインターネット世代が同世代のための中国ネットサービスを創り出してきた。WEBデザインやアプリデザインはよくなっているが同じ若い世代向けでしかなく、真剣に考えて作られているとは言い難い。

スマートテレビが普及し、テレビ向けのオンデマンドの動画コンテンツが多数つくられる今、ネット世代向けの良質なコンテンツが充実してきている。だが子供向けや高齢者向けのコンテンツはお世辞にもいいものとは思えない。NHK Eテレのコンテンツは素晴らしいとはっきりと思えるほど差がある(とはいえこれまでも中国が想像を超えて伸びてきたことから、改善はされるだろう)。また「しまじろう」とともに勉強する「こどもちゃれんじ」は中国の子持ちの親世代に支持され続けていて、中国発の低価格な模倣サービスの追随を許さない。

もっとも日本よりネットの変化のスピードが非常に速い中国で、日本企業が進出してサービスで勝てるとは思えない。ソフトバンクのように日本企業が中国企業に出資したり、コンテンツについて、動画サイトが日本のアニメやドラマコンテンツの配信権を購入したり、中国が出資するコンテンツをほぼ丸々日本側が制作したりするケースが増えている。

別の回で詳しく紹介する予定だが、中国は互聯網+(インターネットプラス)の単語を旗印に、あらゆるジャンルにインターネットテクノロジーを広げようとしている。2020年までの各業界の目標を定めた五か年計画の中でも、ハイテク産業発展のために海外企業と提携してより良い技術を導入することを中国政府が奨励している。子供や高齢者がスマートフォンで自発的に利用したくなるコンテンツやサービスを日本企業が中国企業と手を組んで作ることはNGではないのだ。

山谷 剛史

1976年東京都生まれ。中国アジアITジャーナリスト。
現地の情報を生々しく、日本人に読みやすくわかりやすくをモットーとし、中国やインドなどアジア諸国のIT事情をルポする。2002年より中国雲南省昆明を拠点とし、現地一般市民の状況を解説するIT記事や経済記事やトレンド記事を執筆講演。日本だけでなく中国の媒体でも多数記事を連載。

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