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コラム|Column

タイで事業展開・開業をする場合、多くの知識と情報が必要になります。
今回は、タイ国内へサービス業として進出する目的で出張や事前調査を行う経営者や幹部の方向けに、事前に押さえておくべきポイントを解説していきます。

バンコク市内(著者撮影)

タイは既に中進国の水準まで経済成長しているため、人件費コストや生産設備の海外進出だけを求めて展開する時代は終わろうとしています。そのため、ターゲットとする市場と地域の明確化を行った上で、日本と異なる文化を持つタイ国内市場の分析を綿密に実施した後に進出を検討する段階に入ります。
今後ターゲットとなるのは増加する中間層・拡大する富裕層であり、事業内容はサービス消費、体験型、無形資産の提供などが中心となっていくと予想されます。

今とこれからのタイを知る、市場分析

まずは市場の分析です。
タイは瞬く間にスマートフォン普及率が高まり、SNSやインターネット通信、アプリケーションを使ったサービス分野の伸びが日本よりも速い面がある一方で、まだまだ未成熟な市場も多くあります。今後さらに広がる高齢者向けサービスや製品、ペット関連、スポーツや健康、趣味の分野など、これから有望な市場も多く存在しています。これらの市場はまだまだデータや統計は少ないものの、デスクリサーチ的な部分から市場規模を算定し、進出時期、タイミング、ターゲット層、展開する地域・場所などを分析していきます。
一般的には日本の政府系機関や銀行などを訪問し、情報収集することから始まります。

JETRO

ジェトロは貿易・投資促進と開発途上国研究を通じ、日本企業の海外展開支援、外国企業の日本誘致、日本の通商政策への貢献、開発途上国支援と研究を行っています。
https://www.jetro.go.jp/world/asia/th/

バンコク日本人商工会議所

盤谷日本人商工会議所は、1954年9月に会員数30社をもって設立されました。
60年以上にわたり、タイに進出している日系企業の経営に役立つ様々なアシストを行うと共に、各種事業に取り組んできた組織です。会員数は2017年4月時点で1700社となっています。
http://www.jcc.or.th/access/index

東京都中小企業振興公社

東京都中小企業振興公社は、都内中小企業の優れた技術や製品の魅力を広く世界に発信するため、ASEANの中心に位置し今後も経済発展が見込まれるタイの首都バンコクへ2015年12月に初の海外拠点となる事務所を開設しました。
http://www.tho.tokyo-trade-center.or.jp/jp/

上記のような公的機関などへ相談し、続いてお付き合いのある金融機関などに相談することで、あらかじめ注意すべきポイントや事前に把握しておかねばならない法律などを理解することから始めていきます。

ターゲットとする同業種・または異業種との合弁パートナーを調査

新聞&メディア情報
一般的にはタイの英字新聞、またはタイの経済新聞等から始まり、現地の雑誌、展示会イベント、各業界の協会などへ参加して情報収集をすることから始まります。

Bangkok Post

1946年8月に創刊されたタイの英語日刊新聞です。タイ在住の外国人、または英語が出来るタイ人エグゼクティブクラスが購読しています。
http://www.bangkokpost.com/

Nation

こちらも、タイの英語日刊新聞です。タイ証券取引所上場企業ネーション・マルチメディア・グループ が1971年7月に創刊しました。
http://www.nationmultimedia.com/

商工会議所・ビジネス系の協会・業界団体

The Joint Foreign Chambers of Commerce

同組織は各国の商工会議所メンバーが集まった団体です。28の商工会議所、8,000社以上が参加しています。
http://www.jfcct.org/

Thai Retailer Association (タイ小売業協会)

タイの商業系企業が集まった団体で、タイ証券取引所上場企業のセントラルグループ、BIG-Cスーパーなど、タイ国内大手の小売企業も加盟しています。
http://www.thairetailer.com/

Thai Real Estate Association

タイの不動産業を営む組織や企業が集まった団体で不動産に関するイベントの開催、会合、意見提案などを行っています。
http://www.thairealestate.org/

タイで開催されるイベントも参考に

業界ごとの国際展示イベント、EXPOなど
タイ国内には主に3つの国際展示場があります。
ほぼ毎月、各展示場で様々な業界の大規模イベントが行われているので、そのイベントに合わせて日本から出張するというのも情報収集に有効です。
それぞれ、ウェブサイトに開催予定イベントが掲載されています。

インパクトでのイベント(著者撮影)

Impact Muang Thong Thani (インパクト・ムアトンタニ)

インパクト・ムアントンタニは、タイのノンタブリー県にある大型アリーナ、コンベンションセンター、エキシビション・ホールを含む複合施設です。
毎年開催される自動車ショーから、歌手のコンサートイベントまであらゆるジャンルの大型イベントを開催しています。
http://www.impact.co.th/

バイテックでの水に関する産業イベント(著者撮影)

BITEC (バイテック)

Bangkok International Trade and Exhibition Centre(通称BITEC)は、バンコク都バンナー区にあるコンベンションセンターです。毎年、製造業の国際展示イベント"METALEX"メタレックスもこちらで開催されています。
高架電車BTSの駅から直結で訪問できるため、訪問には便利な場所です。
http://www.bitec.co.th/

Queen Sirikit National Convention Center (クイーンシリキット・コンベンションセンター)

バンコク都内にあるコンベンションセンターで、日本語では「クイーン・シリキット国際会議場」とも呼ばれています。こちらも地下鉄MRT駅直結で、都心に近く便利な場所にあります。
デジタルエキスポ、タイ国際旅行博などが開催されています。

商業施設視察で経済規模や市場性を把握する

見ておくべき商業施設

Siam Paragon (サイアム・パラゴン)

バンコク都心部パトゥムワン区にある高級大型商業施設で、BTSのサイアム駅直結です。サイアム・センターやサイアム・ディスカバリーなどの商業施設もすぐ近くにあります。
同デパートでは富裕層ターゲット製品の価格帯や、日本と変わらない価格の商品群があふれていることが良く分かります。 サイアム・ピワット社とザ・モール・グループの合弁プロジェクトです。

Central World Plaza (セントラル・ワールド・プラザ)

タイ有数の財閥セントラルグループが経営するセントラル・ワールド・プラザはBTSチットロム駅からスカイウォークで直結、バンコク伊勢丹も隣接しています。こちらも富裕層向けの価格や大手ブランドのマーケティングを見ていくことが可能です。

MEGA BANGNA (メガ・バンナー)

サイアム・フューチャー・デベロップメント社が運営する中間層~富裕層向けの郊外型・大型ショッピングモールです。バンコク都郊外のサムットプラカーン県バンナーにあり、多様なジャンルのショップに飲食店、スーパー、さらに大型家具販売店「IKEA」も入居しています。
主要顧客は郊外に住む中間~富裕層タイ人が多く、外国人はやや少ないものの大変にぎわっています。アクセスはクルマが中心ですが、BTSバンナー駅からシャトルバスが運行しています。

こうした商業施設をいくつか視察していくと、ある程度タイの経済規模、市場性などがつかめてくると考えられます。

タイ国内のアクセスについて

効率よく出張や事前調査を行うためにはアクセスも重要です。最後にタイ国内のアクセスについて少しお伝えします。
タイへのアクセスに関しては、国際線メインのスワンナプーム国際空港、LCCメインのドンムアン国際空港共に日本からの便が多く飛んでいます。
ただし、2017年現在は両空港間をつなぐ方法はクルマのみで1時間以上の距離があるため、乗り継ぎや他の訪問国への移動などで違う航空会社を利用する場合には注意が必要です。

国内の移動では、バンコク都心部はBTSと呼ばれる高架鉄道とMRTと呼ばれる地下鉄が利用できますが、それ以外はクルマ(タクシーやレンタカー)を利用することがほとんどです。
交通に掛かる費用は日本よりも安いため、費用負担感は少ないと思われます。
しかし、季節や天候、イベントのタイミング、通勤ラッシュ時間帯、さらに場所によって激しい渋滞が待ち構えていて、これらの時間を加味してスケジュールを立てないと遅刻や商談に間に合わない可能性がありえます。

バンコク都心部の渋滞(著者撮影)

宿泊場所は、上記のような渋滞を避けるためにアクセスの良いホテルを選ぶ必要があります。
バンコク都心部ならBTSやMRTの駅から近い場所、都心部以外の場所を訪問予定であるのであれば、高速道路入口付近に近い場所が良いでしょう。バンコク都心部でも、鉄道のアクセスの良い、アソーク地区の周辺、シーロム地区の周辺が候補地になります。
場所選びによっては、1週間の出張で毎日1時間以上を余計にクルマの中で過ごしてしまう結果になることも十分あり得ますので注意が必要です。

タイでの会社設立にあたっては、サービス業の場合は51%以上をタイ企業側、もしくはタイ法人とみなされる企業との合弁が基本的に必要です。パートナー候補選定後は業務提携から始めて、業務の進め方、カルチャーなどをチェックしたうえで、一緒にやっていけると判断できた後に資本を入れるというくらいの慎重さが必要となります。

これらの初歩的な市場の確認やデータ収集が終われば、続いて一般的な事業運営にあたって、タイでの経営、営業、財務管理、会計の基礎知識から始まり、タイの法律、タイの税金、タイの労働許可などの知識を身に着けていく必要があります。

アセアン ジャパン コンサルティング株式会社
代表取締役 阿部俊之

アセアンジャパンコンサルティング株式会社 代表取締役。
早稲田大学商学部卒業後、タイへ渡り、現在タイ国内で現地の経済情報を伝え、タイ企業のリサーチ、日系企業進出支援を行っている。タイ進出案件のコンサルティング、タイの企業支援、日系企業の海外進出支援等、精力的に活動中。アセアンの経済統合に備え、隣国の調査も開始している
『だからタイビジネスはやめられない!』等、タイ経済、タイ株式、タイ不動産に関する書籍5冊上梓。