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空制御効率化のためのデータ収集手法

2012年10月2日

研究開発用データセンター設備」でご紹介したクラウド向けデータセンター実証実験では、設備の様々なデータを収集、蓄積、分析することで効率の良い空調制御技術の開発を目指しています。今回は、集めているデータの種類とデータ収集システムについてご紹介します。

データ収集の目的、及び収集するデータの種類

効率の良いデータセンター設備を目指して、IIJでは外気冷却型コンテナデータセンターの導入を進めています。既に松江データセンターパークにおいてサービス提供されているコンテナでも、構築時に最適なチューニングが行われていますが、それでもなお改良の余地はあります。外気冷却型コンテナでは外気の温度や湿度を考慮した空調制御を行っていますが、よりよい制御手法を実現できれば、データセンターを運用するための電力が少なくて済みます。そこで、コンテナの外部、内部で以下のデータを収集し、空調制御の効率化を目指しています。

コンテナ内外部におけるデータ収集

収集対象 取得情報 1日の情報量 収集間隔
気象センサー 外気温度、外気湿度、降雨量、降雹量、風速、風向、気圧 約4万件 30秒
温湿度センサー 温度、湿度(全72ヵ所) 約62万件 10秒
空調制御装置 温度、湿度、ダクト状態、ファン回転数、ファン電力、気圧、差圧、風量、加湿状態、冷却状態、冷却電力 約88万件 5秒
電力計 基幹積算電力計及び内部の電力系統ごとの電流値 約6千件 60秒

こうした大量のデータを収集するために、今回はログ収集ソフトウェアとして有名なFluentdblankというオープンソースソフトウェアを利用し、データの蓄積にはMySQLを用いました。なお、各種センサーデータ収集にはOpenBSDblankをベースにIIJイノベーションインスティテュート技術研究所blank で開発したソフトウェアで行っています。

データの収集と蓄積

データの収集

気象センサーデータ
複合気象センサーはデータをシリアル(RS422)で出力するため、気象センサー用の専用プロトコルを解釈しデータを記録するソフトウェアが動作する収容サーバに接続されています。それらのデータは収容サーバで動作するFluentdのtailプラグインを用いて収集され、別サーバで動作するFluentdデーモンへ送信します。
温湿度センサーデータ
温湿度センサーは数が多いため、コンテナ内には複数台の温湿度センサー収容サーバが存在し、それぞれに複数個の温湿度 センサーが接続されています。データの収集はこれらのサーバ群に対しSNMP経由のポーリングで行い、気象センサーデータと同様に、別サーバで動作するFluentdデーモンへ送信します。
空調制御装置データ、電力計データ
空調制御装置データは、空調制御システム経由で5秒ごとに収集されてファイルに記録されています。このファイルの更新をFluentdのtailプラグインを用いて収集し、Fluentdデーモンへ送信します。電力計データもほぼ同様にファイル経由で情報を取得しFluentdデーモンへ1分ごとに送信します。

ログの収集方法

データの蓄積

各種インプットプラグインを用いてFluentdデーモンへ送信されたすべてのデータは、FluentdのMySQLアウトプットプラグインを用いてMySQLサーバに蓄積されます。蓄積と参照の負荷を分離するために、MySQLの準同期レプリケーションを行った参照専用ホストを用います。データを蓄積するホストでは、短時間で多数のインサート処理が走るため、データ追加に処理を特化することで性能を維持しています。

Fluentdプラグインの開発

SNMPポーリングインプットプラグイン
コンテナ内の温湿度センサーデータは、温湿度センサー収容サーバへのSNMPポーリングで取得します。このためSNMPポーリングを行うFluentdのインプットプラグインモジュールを独自に開発しました。これにより任意のMIB OIDを指定し、データを取得できるようになりました。
汎用MySQLアウトプットプラグイン
気象センサーデータ、温湿度センサーデータ、空調制御装置データ、電力計データは、それぞれMySQLデータベースでのデータスキーマが異なるため、Fluentd側でそれらの相違を吸収するためのアウトプットプラグインを開発しました。これにより、収集するデータ形式が増えてデータベーススキーマが変更された場合でも、スキーマ定義を設定ファイルに追加するだけで簡単にデータの蓄積が行えるようになりました。

収集したデータの使い道

現在のコンテナの空調制御は基本的に通常のデータセンターと同様に情報機器を設置している内部の温度をベースとしています。外気冷却では内部温度は外気条件と相関するので、本実験では、変動する外気温と外気湿度に加えて天候も考慮に入れた分析を目標としています。天候の変化パターンを予測することで、いち早く空調の制御モードを切り替えられれば、更に効率良く運用できます。また、外気モードや循環モードに切り替えるといった場合でも、72個の内部温湿度センサーデータの解析結果から、外的要因の変化に高速に追従できる空調制御アルゴリズムを導きだせます。

また、これらの効率向上を考えた上で、日本全国または世界各国の気象データや昼夜の温度変化をパラメータ化し、地理を加味したシミュレーションを行うことで、電力効率の良いコンテナ設置場所を選定することが可能となります。

なお、本プロジェクトは、株式会社インターネットイニシアティブ、IIJイノベーションインスティテュート技術研究所blank、並びに電気通信大学の市川研究室、 川喜田研究室blank、のメンバーによって運営されています。

阿部 博

執筆者プロフィール

阿部 博(あべ ひろし)

IIJプラットフォーム本部 プラットフォームサービス部 プラットフォーム開発課
2003年IIJ入社。セキュリティサービスの開発業務を経て、分散処理システムやクラウドに関わるテクノロジーを調査。2009年より、IIJ GIOの基盤システムの開発に関わる。趣味は合気道とビール。

杉本 浩史

執筆者プロフィール

杉本 浩史(すぎもと ひろし)

IIJプラットフォーム本部 プラットフォームサービス部 プラットフォーム開発課
2012年IIJ新卒入社。現在はコンテナ型データセンターにおけるログ収集システムの開発/運用などを担当。プロフェッショナルなエンジニアになるため日々奮闘中。最近の趣味は妻との散歩。

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