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研究開発用データセンター設備

2012年2月1日

インターネット上のサービスがクラウドに移行する流れのなかで、大量のITサーバーを収容する設備であるデータセンターの効率化や高度化への取り組みが必要となっています。ここでは、IIJグループのクラウド向けデータセンター実証実験設備について紹介します。

クラウドとデータセンター

クラウドサービスやクラウド技術に関する記事が多くなっていますが、主にサービス利用者向けの説明になっているせいか、「ハードウェアを持たない」「中身が見えない」「仮想化」のように高度に抽象化された概念として扱われることが多いようです。手元にハードウェアが見えずにインターネット上の設備を使っていることから、サービス利用者からは実体が曖昧になりがちなクラウドですが、サービスを提供する側(例えばIIJ)には、数千から数万台規模(もしくはそれ以上)の物理ハードウェアとそれらを接続する大規模ネットワークが存在します。更に、それらを収容する設備として受電設備や自家発電装置等の電源系統、消費される電力から発生した熱を移動するための空調システム等が必要になります。クラウド事業者側からみれば「クラウド時代には、どんどんと扱う設備が巨大化していく」ことになります。クラウド事業者の共通の課題は、いかに効率よく大規模なシステムを構築し運用していくか、ということで、未だ多くの研究開発の余地がある分野となっています。

IIJにおけるデータセンターへの取り組み

効率の良いデータセンター設備を目指して、IIJでは「外気導入冷却」+「コンテナ型データセンター」の開発を進めています。実際に商用サービスを提供する松江データセンターパークが、2011年に開設されています。
コンテナ型データセンターは構築単位が小さいため、需要に応じて短期間で設備を拡張できます。また、外気導入冷却は電力をあまり使わずに、自然の力を使ってデータセンター内の機器が発生する廃熱を処理します。2010年度にIIJが行った実証実験では、通年でPUE(*1)1.2相当の運用が可能であると評価できました。

実験環境に要求されること

増加する需要に応え、かつ競争力を持つクラウド基盤を構築するためには、常に新技術を導入する必要があります。また、更に安定した基盤として運用するためには、導入する技術に対する十分な検証や評価が必要です。例えば、前述した「外気導入冷却」は省電力で冷却できるため運用コストを大幅に削減できますが、既存のビル型のデータセンターで利用されている空調システムとは稼働条件が異なるため、通年にわたる実証実験等を通じて運用ノウハウを蓄積していく必要がありました。
クラウド基盤を構成する要素はデータセンターの設備だけではありません。数千台規模のITサーバー群を運用管理するためのソフトウェア技術、クラウドサービスを構築するHaaS、IaaS、PaaSの各レイヤを提供するソフトウェア群、データセンター内ネットワーク(DCN)等、大規模システムを構築するためのソフトウェア領域の研究開発が世界中(もちろんIIJでも)で活発に行われています。ITサーバー等のハードウェアに関しても高電圧給電、分散UPS技術、高温環境対応設計等、様々な新技術の開発が進められています。
このように、日進月歩で進んでいくIT業界において、実際に導入するまでに精査しなければならない要素は多岐にわたります。しかし、大規模システムの構築に必要なのは要素技術だけではありません。各要素技術を組み合わせたときに何がおこるのか、どのように組み合わせれば「システムとして最適」な基盤を実現できるのかが重要です。
クラウド基盤の効率化と大規模化を進めるためには、それぞれの要素技術を検証するための検証設備ではなく、多岐に渡るクラウド基盤構成技術を組み合わせて実験できる設備が必要になります。

実験環境構築の取り組み

下はデータセンター構築から、上はクラウドサービスのソフトウェアまで一環して提供しているIIJの強みを生かし、更に発展させていくために「研究開発検証用クラウド向けデータセンターテストベッド」の構築・運用を行っています。
技術者や研究者に「作って、試して、壊しても大丈夫」という環境を提供し、自由な発想で「いろいろやってみる」ことがテストベッドの目的です。外気導入冷却の空気の流れや電力系とデータセンター設備、いろいろな物理トポロジを組み替えてDCNの技術評価ができるネットワーク、クラウドシステムや分散システムの評価をするITサーバー群、そしてそれらの挙動を計測するための密度の高いセンサーシステムを持つ完全占有なプライベートデータセンターを構築しました。
これからも、次世代のデータセンターの仕組みを検討し実際に評価していく仕組みを通じて、IIJグループのデータセンターやクラウドシステムの効率化に取り組んでいきます。

次世代データセンター・クラウド開発テストベッド

*1:PUE(Power Usage Effectiveness)
データセンター全体の消費電力をデータセンター内のIT機器の消費電力で割った値。実際にサービスを提供する機器以外にデータセンターを運用するための空調、電力、照明、その他設備が消費する電力の割合を表す。電力を消費する機器がIT機器のみの場合が最高効率で、PUE1.0となる。通常のデータセンターでPUE2.0程度、最新技術を用いた省エネルギー型データセンターでPUE1.4以下と言われている。

宇夫 陽次朗

執筆者プロフィール

宇夫 陽次朗(うお ようじろう)

IIJ技術研究所 主幹研究員
2002年IIJ入社。インターネット応用に関する各種研究開発に従事。2010年よりデータセンター高度化に関する研究を担当。

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