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先日、当社ではAIに関する事業戦略を発表しました。これまで社内においてAI活用の実証や一部業務への適用を通じて成果の蓄積を進めてきましたが、現在はその段階を超え、AIを事業の基盤として全社的に組み込むフェーズに入ったことから、あらためて全社AI戦略として発表したものです。
IIJは創業以来、インターネットを中核とした社会基盤を提供するという役割のもと、優秀なエンジニアによる高い技術力・運用力で事業を支えてきました。これは当社の大きな強みであり、その価値の根幹でもあります。こうした現場の経験や判断といった「個人の暗黙知」をAIによって形式知化し、「会社の資産」として蓄積し、社員一人ひとりの能力を最大限に発揮できるようにすることを目指します。具体的な取り組みについては、今後折を見て紹介していく予定です。
さて、本号では、インターネットに関連する基盤技術の進化に焦点を当て、ホームネットワーク、サーバインフラ、データスペースという3つの観点からIIJの取り組みを紹介します。
第1章では、国際規格IEC 62608に基づくホームネットワークの基本参照モデルを取り上げています。家庭内ネットワークは、接続される機器の多様化と台数の増加により、もはや個別機器の単純な接続ではなく、システム全体としての管理が求められる段階にあります。本章では、従来の機器単位の連携を超え、ネットワーク全体を一括して把握・管理するための枠組みと、その標準化に至る経緯を整理し、今後のホームネットワーク管理の方向性を示しています。
第2章では、IIJにおけるサーバインフラの進化として、Open Compute Project (OCP) ベースのサーバ導入の経緯と、Open Rack v3 (ORv3) の評価ポイント及び商用環境での構成について解説しています。従来のエンタープライズサーバから、よりスケーラブルで効率的なOCP構成への移行を進める中で、調達モデルや設計思想も大きく変化しました。ORv2で得られた知見を踏まえ、電力効率、ラック利用効率、運用性といった観点から検証を重ねた結果、ORv3の導入に至っています。IIJのサービスを支える基盤として、OCPサーバは調達及び構築における重要な選択肢の1つとなりました。
第3章では、データスペース技術の実証を通じた分散型データ連携基盤の可能性を取り上げています。従来の集中型プラットフォームとは異なり、データ主権を維持したまま安全にデータを連携する枠組みとして、欧州を中心に提唱されてきたデータスペースの概念について、IIJの実証結果を基に具体的に解説しています。実証では、通信インフラのサイバーレジリエンス強化をユースケースとし、属性に基づくアクセス制御やポリシーに基づくデータ流通の有効性を確認しました。更に、今後の課題として、セマンティクスの標準化やトラストモデルの高度化、そしてデータ流通を基盤としたエコシステム形成の重要性についても整理しています。
当社は「技術で社会を支える」という使命のもと、本号で紹介したネットワーク、サーバインフラ、データといった基盤技術の高度化に加え、今後はAIを適切に組み込みながら、持続的なサービスの進化に取り組んでまいります。

執筆者プロフィール
染谷 直 (そめや なおし)
IIJ常務執行役員 ネットワークサービス事業本部 クラウド本部長。
1998年、IIJ入社。直後にIIJテクノロジー(2010年にIIJに吸収合併)へ出向。IIJテクノロジーではSI事業の立ち上げに携わり、多くのインターネットシステムの構築やコンサルティングに従事。その後、16年よりIIJのサービス事業部門に異動し、クラウド事業の中期事業戦略を担当。19年、クラウド事業責任者に就任。昨年度より「IIR」編集長に就き、IIJにおけるリアルな技術情報を横断的かつ積極的に読者の皆様へお届けしたいと考えている。
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