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Internet Infrastructure Review(IIR)Vol.55
2022年6月30日発行
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目次

エグゼクティブサマリ

2022年3月に発行された本レポートのVol.54(https://www.iij.ad.jp/dev/report/iir/054.html)で、2014年にロシアがクリミアを併合した際のインターネットの接続性の変化について分析した「フォーカス・リサーチ」を掲載しました。2月24日から始まったロシアによるウクライナ侵攻の最中に当該記事を掲載することになりましたが、発行から約1カ月経過した5月1日、ロシアが占領した地域のインターネット接続が、数時間の通信断の後、ロシアの通信事業者経由で回復したとの観測結果がNETBLOCKS社から発表されました(注1)

クリミアの件を「IIR」で掲載した直後というタイミングに驚くと共に、2014年とは異なり、ネットワークの変更が非常に早い時期に行われたことにも改めて驚きました。8年前よりもインターネットで流入する情報のコントロールの重要性が増している証左かもしれません。

戦争の世紀であった20世紀が終わった今、このような事態が起きていることに衝撃を受けています。安全保障の文脈における技術の利活用について見直しの必要性が叫ばれていますが、私たちが担っている情報通信技術においても同様です。あらゆる技術が私たちの生活を豊かにするために使われることを切に祈り、行動していきたいと考えています。

「IIR」は、IIJで研究・開発している幅広い技術を紹介しており、日々のサービス運用から得られる各種データをまとめた「定期観測レポート」と、特定テーマを掘り下げた「フォーカス・リサーチ」から構成されます。

1章の「定期観測レポート」は、メッセージングです。1年前のメッセージングの定期観測レポートにおいて、Emotetが自分自身をZIPで暗号化して猛威をふるっていることを紹介しました。日本ではメールにファイルを添付する際、ZIPで暗号化して、パスワードを別送する手法が広まっており、社内へのEmotetの侵入を防ぐことを困難にしています。IIJでは2022年1月、メールに添付された暗号化ZIPファイルを原則受信拒否することにしました。また2021年12月には、送信ドメイン認証技術であるDMARCのポリシーを強化しています。これらは、IIJ自身のメールシステムのセキュリティを強化する施策であり、その経緯や課題についてまとめた本レポートは、組織においてメールシステムを管理する皆様に大いに参考にしていただけると思います。

2章の「フォーカス・リサーチ」では、前号に引き続きmac OS用フォレンジック解析フレームワークとして開発されているmac_aptにおけるプラグインの作成について解説しています。今回はmac_aptで保存されるデータの内容を説明すると共に、実際にプラグインの設計と実装について述べています。前回のレポートと合わせてご一読いただけましたら幸いです。

3章の「フォーカス・リサーチ」は、IIJのサービス基盤におけるストレージに関する課題と対応について取り上げています。コンピュータの処理能力の増大、ネットワークのデータ転送速度の向上に支えられ、全世界で生成・処理されるデータ量は大きく伸長しています。それらのデータを蓄積しているのがストレージであり、ストレージもコンピュータやネットワークと同様に大きく進化しています。IIJでも増大するデータを安全に保管するために多くのストレージを運用しています。本レポートではストレージの基本的な説明に加え、IIJで多く利用しているFC-SANとストレージの運用技術について紹介します。

IIJは、このような活動を通してインターネットの安定性を維持しながら、日々、改善・発展させていく努力を行っています。今後も企業活動のインフラとして最大限にご活用いただけるよう、様々なサービスやソリューションを提供し続けてまいります。

  1. (注1)NETBLOCKS(https://netblocks.org/reports/internet-disruptions-registered-as-russia-moves-in-on-ukraine-W80p4k8K)。

島上 純一

執筆者プロフィール

島上 純一 (しまがみ じゅんいち)

IIJ 常務取締役 CTO。インターネットに魅かれて、1996年9月にIIJ入社。IIJが主導したアジア域内ネットワークA-BoneやIIJのバックボーンネットワークの設計、構築に従事した後、IIJのネットワークサービスを統括。2015年よりCTOとしてネットワーク、クラウド、セキュリティなど技術全般を統括。2017年4月にテレコムサービス協会MVNO委員会の委員長に就任、2021年6月より同協会の副会長に就任。


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