Starlink Business
通信圏外の制約を超えて広がるビジネス
「Starlink(スターリンク)」の不感地帯における
ユースケースを徹底解説
Wi-Fiや携帯電話の電波が届かない―。こうした不感地帯では通信ができないため、コミュニケーションやサービス提供が困難になり、ビジネスに大きな影響を及ぼします。山間部や離島、インフラ整備が遅れている地域では有線回線の敷設も難しい場合があります。こうした通信環境の課題を解決する“切り札”として注目されているのが、「Starlink(スターリンク)」です。地上の状況に左右されず、サービス提供エリア内で、アンテナの設置環境と電源を確保できれば通信が可能です。不感地帯でのユースケースとそのメリット、導入方法などを徹底解説します。
不感地帯の解消は円滑なビジネスの第一歩
モバイルネットワークは携帯キャリアの基地局やWi-Fiのアクセスポイントと電波のやりとりを行って通信を実現しています。しかし、電波が届かない、または届きにくいエリアが存在します。人里離れた山間部や無人島、海上などがイメージしやすいでしょう。都市部でも高層ビルの高層階や地下、複雑な構造の施設・建屋内など電波が届きにくいエリアがあります。
有線の回線が使えるエリアはそれを使えば通信が可能ですが、建物の構造や規制により、有線回線の敷設が難しい場合があります。山奥や無人島となると、更に状況は異なります。有線・無線のネットワークがいずれも使えないとなると、ビジネスに大きな支障を来たすでしょう。
不感地帯とは一般的に地理的な条件などにより無線の電波が届かない、届きにくい、また有線回線を敷設できないエリアを指します。
不感地帯では顧客や本社とのコミュニケーションが取れず、オンラインでつながる業務システムも使えません。当然、ビジネスは立ち行かなくなります。しかし、衛星通信サービス「Starlink(スターリンク)」を利用すれば、不感地帯の課題を容易に解消できます。
地上回線の整備が難しい場所でも、高速データ通信が可能
Starlinkは、Elon Musk(イーロン・マスク)氏が率いるSpaceX社が提供する衛星を活用したブロードバンドサービスです。既に1万基を超える衛星が稼働しており(※1)、サービス提供エリア内で、アンテナの設置環境と電源を確保できれば、山間部や離島、海上など地上回線の整備が難しい場所や電波が届きにくい場所でもインターネット接続を利用できます。利用できるのは160以上の国と地域。世界で1,200万件以上の契約実績があります(※2)。
- Starlinkの実績や通信速度はすべてSpaceX社の公表データに基づきます(2026年8月時点)。
参考:Starlink公式X(https://x.com/Starlink/status/1980017152208826631)
参考:Starlink公式X(https://x.com/Starlink/status/2062649204359708741)
カバレッジが広いだけでなく、通信も高速・低遅延です。Starlinkのダウンロード速度は約216~350Mbps、アップロード速度は約35~61Mbps、遅延は約25~35msです。この速度であれば、高画質動画の視聴やWeb会議など、ビジネスで一般的に利用されるアプリケーションも快適に利用できます。
高速・低遅延な通信を実現できる理由は、高度550kmの低軌道を周回しているからです。従来の高度約3.6万kmの静止衛星を使用する衛星通信サービスは、地上とのデータ往復時間が長く、通信に遅延が生じやすい傾向があります。Starlinkは衛星と地上との距離がずっと近いため、電波の往復も短時間で済みます。

| LEO(低軌道) | MEO(中軌道) | GEO(静止軌道) | |
|---|---|---|---|
| 高度 | 約500~1,200km | 約2,000~20,000km | 約35,786km |
| 周回周期 | 約90~120分 | 数時間 | 24時間(地球自転と同期) |
| 見かけの動き | 高速で移動 | ゆっくり移動 | 静止(常に同じ位置) |
| カバー範囲 | 狭い(多数必要) | 中程度(複数で全球カバー) | 広い(1基で地球の約1/3) |
| 全球カバー | 数百基 (例 Starlink:11,000基) |
数十基(例 O3b:20基程度) | 数基(3、4基) |
| 遅延 | 約25~80ms | 約100~300ms | 約500~600ms |
衛星通信の種類と特徴
Starlinkは地上災害の影響を受けにくいことも特長です。既存の地上回線を使ったインターネットが寸断していても、Starlinkなら頭上を巡る衛星群がインターネット接続を維持します。
なお、Starlinkは接続形態で大別すると衛星ブロードバンド接続サービス、スマートフォンへ直接通信を提供するサービス(Starlink Mobile)の2つがあり、それぞれ別の衛星を利用します。IIJはStarlinkの正規代理店として、法人向け衛星ブロードバンド接続サービス「Starlink Business(スターリンクビジネス)」を提供しています。
工場内の“通信格差”を解消し、海上での通信環境も向上
では不感地帯の解消に向けて、どのような活用法が考えられるでしょうか。以下にそのユースケースを紹介します。
広大な工場敷地の不感地帯を補う
広大な敷地を持つ大規模工場では、同じ敷地内でも通信環境に差が生じることがあります。オフィスのある建屋にはLANが整備されていても、離れた建屋や設備エリアまでネットワークを延伸するには大規模な投資を要する工事が必要になる場合があります。また、既存配管に空きがなく、新たなケーブルを敷設できないケースもあります。
携帯キャリアの通信サービスを利用する方法もありますが、地域、工場設備、建屋の構造によっては電波が届きにくく、屋外では利用できても建物内部では十分な通信品質を確保できないことがあります。利用状況によって通信速度が変動する場合もあり、業務利用において課題となることがあります。
このような背景から、同じ敷地内であっても場所によって利用できる通信品質に差が生じ、“通信格差”が発生することがあります。
近年は製造現場においてもクラウドサービスの利用が進み、図面やマニュアルの参照、生産データの集計や共有、生成AIの活用など、安定した通信環境を前提とした業務が増えています。不安定な通信環境は、業務効率化やデータ活用を妨げる要因にもなります。
例えば、通信できない試験場では試験結果を紙に記録しておき、オフィスに戻ってからシステムに入力し直す。そんな二度手間が発生します。また、定期的な生産データや品質データの集計において、クラウドシステムへの接続が困難な拠点があれば、全体集計の遅延などの影響を及ぼすこともあります。
Starlinkは衛星アンテナを設置し、電源を確保できれば、インターネットを利用できます。敷地全体に有線・無線ネットワークを整備することが難しい場合でも、Starlinkを活用することで、工場内などにおける“通信格差”を解消できます。
海上でも“つながる”安心感を提供
日本国内を航行する内航船であれば携帯電話が利用可能で、陸が見えていればおおむねつながると言われます。しかし、電波状態は不安定で、通じにくいこともあります。
タンカーや貨物船など外洋を航海する船は、特殊なアンテナなどの専用設備で構築された船舶向けのインターネット接続環境を整備しているのが一般的です。ただし、天候によっては影響を受け、通信が不安定になることがあります。また専用サービスであるため高額で、業務外の利用は制限される場合もあります。
Starlinkの海上向けサービスでは、船舶や洋上設備からも利用でき、陸上回線の利用が難しい環境における通信手段として活用されています。より高速・安定的なインターネット接続を、コストを抑え利用できるのです。すべての船員に高速・快適なインターネット環境を提供できます。
海上や山間部、広い工場など、有線が引けない(物理的な制約や光ファイバーの設置コストによる)、
モバイルも届かない・電波が弱い(基地局から遠い)地帯
人が立ち入れないエリアの24時間遠隔監視が可能に
自然災害の発生リスクを監視
記録的な豪雨が発生すると、土砂災害や河川氾濫のリスクが高まります。しかし、自然災害の発生リスクが高い地域は通信設備が未整備なところが少なくありません。そうした地域でもStarlinkを活用することで、ネットワークを整備できます。
遠隔監視システムと接続したり、監視カメラを設置したりすれば24時間365日の状況把握が可能です。きめ細かな監視網を整備することで、リアルタイムでのリスク管理、そして地域住民に対して、より迅速・的確な情報提供が可能になります。
再生可能エネルギーの発電プラントを監視
脱炭素社会の実現に向け、太陽光、風力、水力などの再生可能エネルギーに大きな期待が寄せられています。一方で天候の影響を受けやすく、発電量や稼働状況を遠隔監視できるシステムは不可欠です。発電プラントの多くは山間部や海上にあるため、遠隔監視システムをつなぐネットワークの確保が課題です。
Starlinkは携帯キャリアの電波が届かないエリアや、有線回線が敷設できないエリアでも衛星通信によるインターネット接続が可能です。発電量や稼働状況だけでなく、IoT機器との連携で設備の予防保全も可能になります。各プラントに衛星アンテナを設置すれば、離れた地域にある複数のプラントの統合管理も可能になります。
移動が多い作業現場でもリュック1つで持ち運び
次に実際の活用事例を紹介しましょう。A社は可搬性が高いメリットを活かし、現場の“作業ツール”の1つとして、B社はドローン基地の通信インフラとしてStarlinkを利用しています。
その日に設営、その日に撤収が可能
送電鉄塔の防錆塗装を手掛けるA社。その作業現場は普段人が立ち入らないような山間部も多く、携帯電話の電波も届かないところもあります。
そこで山間部の作業現場の通信手段としてStarlinkを活用しています。決め手になったのが、設備がコンパクトで移動が容易なこと。衛星アンテナや電源アダプターなど必要な設備はリュックの中に収まります。現場では衛星アンテナで電波を受信し、PCなどのデバイスとはWi-Fiで通信します。煩雑な設定やケーブルを引き回す必要はありません。
リュックを背負って現場に赴き、その場で設営すれば、すぐにインターネットを利用できます。その日の作業が終われば、片づけて撤収する。
移動の負担にならず、設営・撤収も容易なので、通信環境を確保しづらい現場でも通信が可能です。会社からは作業指示や現場での注意、現場からは問い合わせや進捗報告をその場で行えるため、作業効率は大幅に向上しました。

不感地帯の解消に向け、
設置工事や保守までIIJがワンストップ支援
Starlinkを利用するには、天空が開けた場所にアンテナを設置する必要があります。また、衛星アンテナのタイプによっては、設置工事やオフィスまでのケーブル敷設工事などが必要です。
IIJはStarlinkの正規代理店として、法人向け衛星ブロードバンド接続サービス「Starlink Business(スターリンクビジネス)」を提供しています。遠隔地の拠点や工場、作業現場など、通信環境の確保が課題となる場所への導入を支援しており、衛星アンテナの設置工事から保守までワンストップで対応します。アクセスポイントとの接続、LAN工事(有線・無線)なども対応可能です。導入時は以下のステップで手続きや工事を進めていきます。
Starlinkは衛星からの電波を受けて通信を行います。上空に遮蔽物があると通信が不安定になる恐れがあるため、アンテナの設置場所には注意が必要です。上空に遮るものがない、開けた場所が最適です。IIJはヒアリングを行った上で、実際に現地で周囲の環境や気候の影響、電波の受信状況などを調査し、最適な設置場所や導入方法を提案します。工場敷地や山間部、港湾施設など、通信インフラの整備が難しい環境でも、安定した通信環境を実現できるよう支援します。
国内利用から海外利用まで、用途に応じたプランをご用意
サービスプランは国内での固定・モバイル接続に最適な「ローカル優先プラン」と、海上やグローバルな接続が可能な「グローバル優先プラン」の2つがあります。従来の衛星通信サービスに比べてコストを抑えたかたちで利用できます。
衛星アンテナを含むStarlinkキットは一式を月額レンタルで提供します。Starlinkキットは衛星アンテナのサイズによって小型・軽量の「Mini」、建物への取り付けを想定した中型の「Standard」と大型の「Performance」の3種類があります。
サイズによる通信速度や受信性能に大きな差はありません。持ち運びして使うなら「Mini」、定置利用なら「Standard」、強風対応・船舶搭載など耐候性を重視するなら「Performance」が最適です。
Miniは、手提げバッグに収納できる小型・軽量の衛星アンテナです。IIJでは、利用シーンに応じて、折りたたみ式三脚やポータブル電源などを組み合わせた持ち運びしやすい構成でのご提案も行っています。設置工事は不要で、パソコンやスマートフォンなどをWi-Fiで接続すれば、移動先でもすぐにスターリンクを利用できます。ただし、日本国内では電波法による規制があるため、陸上において移動しながらの利用はできません(※1)。
(敷地内の地上部分や屋上などにStarlinkを固定、施設に引き込んで利用)
(組み合わせはイメージ)
Starlinkは耐候性が高く、厳しい自然環境や気象条件下でも利用可能です。IIJが実施した実計測では、豪雪や豪雨時でも通信を維持できることを確認しています。衛星アンテナには融雪機能もあり、雪が降っても溶かしながら稼働します。
多様なサービスを組み合わせ、ネットワークの高度化を支援
IIJは既にStarlink Businessの導入を多数支援しています。様々なお客様環境に対応し、迅速・確実な設置工事が可能です。
多様なサービスを組み合わせ、お客様に最適なネットワーク環境を提供できるのもIIJの強みです。既存のメイン回線を活用しつつ、そこにStarlink Businessを組み合わせ、可用性の高い冗長構成ネットワークの設計・構築も可能です。クラウド型のネットワークサービス「IIJ Omnibusサービス」を軸に、ソフトウェア制御が可能なSD-WANや、セキュアなゼロトラストネットワークを構築することも可能です。
SpaceX社は今後多くの衛星を打ち上げるという計画も発表しており、更に快適なインターネット接続が実現すると期待されています。IIJは、今後もStarlinkのサービス動向やお客様のご要望を踏まえたサービスや運用支援を推進します。
不感地帯の解消によってこれまでできなかったことができるようになり、ビジネスの可能性が大きく広がります。有効な活用法の提案からその実現までIIJはお客様に寄り添い、支援します。不感地帯の解消とそれによるビジネスの拡大を目指すお客様は、ぜひIIJにご相談ください。
記事監修者
1995年IIJ入社。サーバインフラ、メールサービス、個人向けインターネットサービスやモバイルサービス(IIJmio)などの企画・運営に携わる。ゲーム関連企業への出向を経て、2022年にIIJへ帰任。現在はStarlinkを中心に技術動向調査や活用提案を推進。法人向けサービス「Starlink Business」の紹介やユースケース検討、情報発信を行う。IIJ Engineers Blogでは現在30本以上のStarlink関連記事を執筆。
よくあるご質問
-
利用できます。Starlinkはサービス提供エリア内で、アンテナの設置環境と電源を確保できれば利用可能です。工場敷地内や建設現場、また山間部や洋上/船上など携帯電話の電波が届きにくい場所や、有線回線の敷設が難しいエリアにおける通信手段として活用されています。
-
利用できます。広大な工場敷地では、建屋から離れた事務所などで通信環境の確保が課題になる場合があります。Starlink Businessは、そうした場所における通信手段の1つとして活用されています。
-
利用できます。山間部や海上など通信環境の確保が難しい場所でも、監視カメラや各種センサーと組み合わせることで、遠隔地から状況を確認するための通信環境として活用されています。
-
SpaceX社が提供するStarlinkは、個人・法人向けに提供されている衛星インターネットサービスです。IIJが提供するStarlink Businessは、法人のお客様向けのサービスです。お客様の利用用途や利用環境に応じたプランをご提案しています。
-
IIJでは、Starlink Businessの提供だけでなく、お客様の利用用途や設置環境に応じたプランの選定、導入支援、ネットワーク構成のご提案、運用までトータルでサポートします。また、長年培ってきたネットワークインテグレーションの知見を生かし、既存ネットワークとの接続や冗長化構成など、お客様の環境に合わせたご提案が可能です。
-
高速で低遅延の衛星ブロードバンド接続サービスという特長から、ビジネスのあらゆるシーンでの活用が進んでいます。BCP対策における通信確保のほか、海上、山間部、建設現場など光回線の敷設やモバイル通信が難しい場所(不感地帯など)での通信格差解消の方法として利用が広がっています。
-
Starlinkは過酷な環境に耐えられるよう設計されており、高い耐候性が特長の1つです。ただし条件下によっては、通信速度の低下や通信品質への影響が発生する場合があります。
-
利用形態によって異なります。一時利用や持ち運びの利用では比較的簡単に設置できる場合がありますが、常設利用ではアンテナ設置工事やLAN配線工事が必要になります。IIJでは設置工事にも対応しています。詳しくはお問い合わせください。
-
利用できます。IIJではSD-WAN(IIJ Omnibusサービス)と組み合わせることで、様々なWAN構成へのニーズに対応します。既存拠点ネットワークのバックアップ回線や冗長構成として利用できます。
-
期間は利用環境や工事有無等によって異なります。IIJで設置工事の準備(設置にかかる申請など)を含めて行う場合は、お客様へのヒアリング・提案から工事実施そして完了まで4ヵ月程度を見込みます。詳しくはお問い合わせください。