Starlink Business
「Starlink(スターリンク)」で実現する
スマート農業とは?
そのユースケースと活用ポイントを徹底解説
農業におけるIoTやデジタル活用の期待が高まっています。人手不足を補い、農作業の効率化、品質や収量の向上などが可能になります。ネットワークはそのために欠かせないインフラですが、圃場(ほじょう)が広大だと携帯電話やWi-Fiの電波が届かないこともあります。そんな悩みを解消してくれるのが、衛星通信サービス「Starlink(スターリンク)」です。これによって、農業はどう変わるのか。スマート農業の可能性やユースケースを徹底解説します。
スマート農業の通信課題を解決する「Starlink」
日本の農業は生産者の高齢化や担い手不足、気候変動による農作物への被害といった様々な課題を抱えています。私たちの“食”を支える農業が直面する課題は、重要な社会課題の1つです。こうしたことから、IoTやデジタルを活用した「スマート農業」が注目されています。農産物を育てる土地、いわゆる圃場の状態や作物の生育状況などをセンサーやカメラなどのIoT機器で把握し、作業の省力化・効率化を図る営農方法です。
この取り組みにはデータを収集・制御するためのネットワークが不可欠です。しかし、携帯電話の圏外に圃場があると無線ネットワークは使えません。周囲の山や建物に遮られ、電波が不安定になることもあります。Wi-Fiのアクセスポイントを設置しても、すべての圃場をカバーできるとは限りません。こうした課題を解消してくれるのが、衛星通信サービス「Starlink(スターリンク)」です。
Starlinkは、Elon Musk(イーロン・マスク)氏が率いるSpaceX社が提供する衛星を活用したブロードバンドサービスです。既に1万基を超える低軌道衛星が配置され(※1)、世界160以上の国と地域で利用が可能(※2)。人里離れた山奥や島しょ部、海上もカバーしており、サービス提供エリア内で、アンテナの設置環境と電源を確保できれば利用できます。
- Starlinkの実績や通信速度はすべてSpaceX社の公表データに基づきます(2026年8月時点)。
参考:Starlink公式X(https://x.com/Starlink/status/1980017152208826631)
参考:Starlink公式X(https://x.com/Starlink/status/2062649204359708741)
高速・低遅延な通信も特長です。IPカメラによる遠隔監視やセンサーデータの収集など、スマート農業で利用される様々なシステムで活用できます。多くの衛星が地球規模でエリアをカバーしているため、安定した通信が期待できます。
高速・低遅延な通信を提供できる理由は、地上と衛星との距離にあります。従来の衛星通信サービスでは、例えば高度約3.6万kmの静止衛星を利用する場合、地上との距離が長いため通信遅延が生じやすいという課題がありました。それに対し、Starlinkの衛星は高度550kmの低軌道を周回しています。衛星と地上との距離がずっと近く、電波の往復も短時間で済むため、高速・低遅延な通信が可能なのです。

| LEO(低軌道) | MEO(中軌道) | GEO(静止軌道) | |
|---|---|---|---|
| 高度 | 約500~1,200km | 約2,000~20,000km | 約35,786km |
| 周回周期 | 約90~120分 | 数時間 | 24時間(地球自転と同期) |
| 見かけの動き | 高速で移動 | ゆっくり移動 | 静止(常に同じ位置) |
| カバー範囲 | 狭い(多数必要) | 中程度(複数で全球カバー) | 広い(1基で地球の約1/3) |
| 全球カバー | 数百基 (例 Starlink:11,000基) |
数十基(例 O3b:20基程度) | 数基(3、4基) |
| 遅延 | 約25~80ms | 約100~300ms | 約500~600ms |
衛星通信の種類と特徴
Starlinkは地上災害の影響を受けにくいことも特長です。既存の地上回線を使ったインターネットが寸断していても、Starlinkなら頭上を巡る衛星群がインターネット接続を維持します。
なお、Starlinkは大別すると衛星ブロードバンド接続サービスとスマートフォンへ直接通信を提供するサービス(Starlink Mobile)の2つがあり、それぞれ別の衛星を利用します。IIJはStarlinkの正規代理店として、法人向け衛星ブロードバンド接続サービス「Starlink Business(スターリンクビジネス)」を提供しています。
遠隔監視や設備の自動制御で省力化
Starlinkを使えば、スマート農業のネットワーク問題を解消できます。通信圏外や電波が届きにくい地域、また広大な圃場でもインターネット接続を確保しやすくなります。どのような活用法が考えられるか。以下にそのユースケースを紹介しましょう。
作物の生育環境、生育状況をリアルタイムで計測
農作物の生育には温度・湿度や土壌の状態などが影響します。常に見守りが必要ですが、IoT機器を活用すれば、巡回作業を効率化できます。
例えば、土壌センサーで田畑の水分量、pH、肥料濃度を計測する。ビニールハウス内のセンサーで温度・湿度、CO2濃度、日射量を計測する。IPカメラを使えば、生育状況を常時モニタリングすることも可能です。
これらの情報をStarlink経由でクラウドに集約すれば、作物の生育状況や圃場の環境を可視化し、遠隔地にいながらリモートで継続的な監視が可能になります。Starlinkの専用ルータとIoT機器間をWi-Fiでつなげば、面倒な配線も必要ありません。
普段は遠隔で見守り、異常を検知した時だけ対応にあたる。そんな巡回作業も可能になります。閾値を超えているかどうかもデータとしてすぐに分かるので、適切な対応もスピーディに行えます。

栽培設備の自動制御で省力化
最近は農作物の栽培設備を自動でコントロールする自動制御システムの導入も進みつつあります。例えば、ビニールハウス内の温度・湿度に問題があれば、最適に保つように換気扇や巻取り装置の開閉を自動で行う。土壌の水分量が不足している場合は自動で灌水を行う。降雨センサーと連動すれば、雨天時に自動で雨よけシートを展開できます。
ネットワークでつながっていれば、「いつ、何が作動し、今どうなっているか」を把握できます。最適な環境は季節や作物の生育状況で変わってきますが、温度・湿度の設定値や水・肥料の灌水量なども遠隔で調整できます。
持ち運びできる衛星アンテナで分散した圃場を定期巡回
圃場が離れた場所に分散している場合、Starlinkの専用ルータとIoT機器間のWi-Fiが届かない場合が考えられます。圃場ごとに衛星アンテナを設置するのはコストもかかります。詳細は後述しますが、そんな時は持ち運び可能な衛星アンテナ「Mini」が便利です。設営・撤収も簡単に行えます。
必要な時に圃場へ持ち運び、IoT機器の計測データを取得するという運用も可能です。複数の圃場を運用する場合でも、用途に応じてアンテナを使い分けられるため、柔軟な運用が可能です。
経験と勘をデータ化し、栽培スキルを継承
IoTとStarlinkの活用メリットは、データの計測や設備の自動制御だけではありません。栽培環境や生育状況のデータを蓄積・活用することで、経験や勘に頼っていたノウハウを可視化し、効率化や生産性向上を図ることも可能です。
データに基づく栽培で品質、収量の向上を目指す
ベテランの生産者は多くの経験から学んだ栽培ノウハウを持っています。経験の浅い生産者では見逃してしまうような異変に気付き、直ちに手を打つ。いわゆるカンやコツは一朝一夕で身に付けるのは難しいノウハウです。しかし、ベテランの栽培方法をデータ化することで、「どんな時に、何をすればいいか」を可視化することができます。
そのデータに基づいて栽培することで、経験の浅い生産者でもベテランの仕事に近づくことができ、品質や収量の安定・向上が見込めます。人手不足を補い、高齢化が進むベテラン生産者のスキル継承にもつながります。
畜産業の見守りや肥育管理をスマート化
スマート化できるのは農業だけではありません。乳製品、肉、卵などの畜産物を生産する畜産業もStarlinkの活用でスマート化が可能です。
家畜の体調や肥育状況の把握、放牧管理も可能に
畜産業では、家畜の体調や餌の量を把握することが欠かせません。サーモカメラとStarlinkを連動させれば、家畜の体温や畜舎の温度を遠隔で計測することができます。温度が低い場合はヒーターを作動させ、温度が高い場合は換気設備を稼働する。これもネットワーク経由で自動化が可能です。
畜舎にIPカメラを設置すれば、家畜の食欲や肥育状況を常にモニタリングできます。畜舎巡回の負担軽減につながります。
携帯電話の電波が届きにくい放牧地でも、Starlinkを通信基盤として活用することで、各種センサーやカメラを利用した管理環境を構築できます。

生産者やパートナーと連携し、以前からスマート農業を支援
IIJはITとデジタルの力で社会課題の解決に貢献することを目指しており、その一環としてスマート農業の取り組みを以前から支援しています。ネットワーク機器をはじめとするハードウェアから通信サービスまで提供できる強みを活かし、生産者やパートナーと連携し、スマート農業向けソリューションの開発や様々な実証実験も進めてきました(※1)。この知見やノウハウを活かし、Starlinkを活用したスマート農業も幅広く支援します。
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IIJのスマート農業を推進するサービスや取り組み
IIJはStarlinkの正規代理店として、法人向け衛星ブロードバンド接続サービス「Starlink Business」を提供しています。衛星アンテナの設置工事から保守までワンストップで対応します。アクセスポイントとの接続、LAN工事(有線・無線)なども対応可能です。導入時は以下のようなステップで手続きや工事を進めていきます。
アンテナの設置場所は上空に遮るものがない、開けた場所が最適です。作業の邪魔にならないよう、スペースも確保する必要があるでしょう。IIJはヒアリングを行った上で、実際に電波の受信状況などを現地調査し、最適な設置場所を提案します。
従来の衛星通信に比べ導入・利用しやすい料金体系
サービスプランは国内での固定・モバイル接続に最適な「ローカル優先プラン」と、海上やグローバルな接続が可能な「グローバル優先プラン」の2つがあります。スマート農業にはローカル優先プランが適しています。従来の衛星通信サービスに比べて導入しやすい価格体系です。
衛星アンテナを含むStarlinkキットは一式を月額レンタルで提供します。Starlinkキットは衛星アンテナのサイズによって小型・軽量の「Mini」、建物への取り付けを想定した中型の「Standard」と大型の「Performance」の3種類があります。
サイズによる通信速度や受信性能に大きな差はありません。持ち運びして使うなら「Mini」、定置利用なら「Standard」、強風対応・船舶搭載など耐候性を重視するなら「Performance」が最適です。
Miniは、手提げバッグに収納できる小型・軽量の衛星アンテナです。IIJでは、利用シーンに応じて、折りたたみ式三脚やポータブル電源などを組み合わせた持ち運びしやすい構成でのご提案も行っています。設置工事は不要で、パソコンやスマートフォンなどをWi-Fiで接続すれば、移動先でもすぐにStarlinkを利用できます。
農業分野では、複数の圃場が離れた場所に点在しているケースも少なくありません。Miniは、本体とキックスタンドを合わせても約2.2kgと小型・軽量で、必要な場所へ持ち運んで利用できます。圃場ごとに通信環境を整備することが難しい場合や、一時的に通信環境を確保したい場面にも活用できます。
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日本国内では電波法により、陸上で移動しながら利用することはできません。利用時は停車・停止した状態でご利用ください。
参考:「Starlinkの航空機利用が日本でも可能になったのでいろいろ調べました(Starlinkの移動利用が制限されている理由)」(IIJ Engineers Blog、2026年)
Starlinkは耐候性が高く、雨風や降雪の影響を受けやすい農業・畜産の現場でも利用できます。IIJが実施した実計測では、豪雪や豪雨時でも通信を維持できることを確認しています。ただし通信品質は設置環境や気象条件により変動します。具体的な設置場所がある場合は、まずはサービス提供事業者に相談してみることをおすすめします。
衛星アンテナには融雪機能もあり、雪が降っても溶かしながら稼働します。IIJは北海道の豪雪地帯のお客様に衛星アンテナを設置した実績があります。降雪の多い厳しい冬を通じて安定的な通信を実現しています。
多様なサービスを組み合わせ、ネットワークの高度化を支援
IIJは既にStarlinkの導入を多数支援しています。様々なお客様環境に対応し、迅速・柔軟な設置工事を提供します。Starlinkのネットワークに、IIJが提供するSD-WAN「IIJ Omnibusサービス」を組み合わせることで、高速かつセキュアなネットワーク環境を構築することもできます。
IIJは高度な通信技術、農業の現場を知る強みを活かし、スマート農業の実現を幅広くサポートします。これからもIIJは技術力とパートナーの力を結集させ、次世代に向けた“新しい農業”の発展を支援していきます。関係者のみなさまからのご相談をお待ちしています。
記事監修者
1995年IIJ入社。サーバインフラ、メールサービス、個人向けインターネットサービスやモバイルサービス(IIJmio)などの企画・運営に携わる。ゲーム関連企業への出向を経て、2022年にIIJへ帰任。現在はStarlinkを中心に技術動向調査や活用提案を推進。法人向けサービス「Starlink Business」の紹介やユースケース検討、情報発信を行う。IIJ Engineers Blogでは現在30本以上のStarlink関連記事を執筆。
よくあるご質問
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利用できます。携帯電話の電波が届きにくい圃場でも、アンテナの設置環境と電源を確保できればインターネット接続が可能です。センサーやカメラなどを活用したスマート農業の基盤として利用できます。
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Starlinkアンテナには融雪機能があり、積雪地域での利用実績もあります。ただし通信品質は設置環境や気象条件によって変動します。
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利用できます。固定設置のほか、小型アンテナ「Starlink Mini」を活用し、必要な場所へ持ち運んで利用することも可能です。圃場の配置や運用方法に応じて最適な構成を検討できます。
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SpaceX社が提供するStarlinkは、個人・法人向けに提供されている衛星インターネットサービスです。IIJが提供するStarlink Businessは、法人のお客様向けのサービスです。お客様の利用用途や利用環境に応じたプランをご提案しています。
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IIJでは、Starlink Businessの提供だけでなく、お客様の利用用途や設置環境に応じたプランの選定、導入支援、ネットワーク構成のご提案、運用までトータルでサポートします。また、長年培ってきたネットワークインテグレーションの知見を生かし、既存ネットワークとの接続や冗長化構成など、お客様の環境に合わせたご提案が可能です。
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Starlinkは過酷な環境に耐えられるよう設計されており、高い耐候性が特長の1つです。ただし条件下によっては、通信速度の低下や通信品質への影響が発生する場合があります。
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利用形態によって異なります。一時利用や持ち運びの利用では比較的簡単に設置できる場合がありますが、常設利用ではアンテナ設置工事やLAN配線工事が必要になります。IIJでは設置工事にも対応しています。詳しくはお問い合わせください。
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利用できます。IIJではSD-WAN(IIJ Omnibusサービス)と組み合わせることで、様々なWAN構成へのニーズに対応します。既存拠点ネットワークのバックアップ回線や冗長構成として利用できます。
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期間は利用環境や工事有無等によって異なります。IIJで設置工事の準備(設置にかかる申請など)を含めて行う場合は、お客様へのヒアリング・提案から工事実施そして完了まで4ヵ月程度を見込みます。詳しくはお問い合わせください。