Starlink Business
「Starlink(スターリンク)」で
BCP・災害対策をより強靭化する
そのユースケースと活用ポイントを徹底解説
災害や通信障害など不測の事態が発生してもビジネスを継続する―。BCP(事業継続計画)の実現は企業が果たすべき重要な責務です。お客様に安心と信頼を提供できるだけでなく、地域社会や取引先の事業継続にも貢献します。BCP対策で“要”になるインフラの1つがネットワークです。その可用性を飛躍的に高めるのが「Starlink(スターリンク)」です。その仕組みやメリット、具体的なユースケースや導入方法を徹底解説します。
Starlinkとは?
世界160以上の国と地域で高速・低遅延の通信が可能
Starlinkは、Elon Musk(イーロン・マスク)氏が率いるSpaceX社が提供する衛星を活用したブロードバンド接続サービスです。サービス提供エリア内で、衛星からの電波を受信できる環境であれば、高速インターネットを利用できます。もちろん、日本の山間部や離島でも利用できます。海上向けサービスでは、船舶や洋上設備からも利用でき、陸上回線の利用が難しい環境における通信手段として活用されています。
従来の衛星通信サービスでは、例えば高度約3.6万kmの静止衛星を利用する場合、地上との距離が長いため通信遅延が生じやすいという課題がありました。
それに対し、Starlinkの衛星は高度550kmの低軌道を周回しています。衛星と地上との距離が近いため、電波の往復も短時間で済みます。また、SpaceX社は既に1万基を超える低軌道衛星を配置しているため(※1)、カバーレッジの広さは世界規模。そのため、サービス提供エリア内で、アンテナの設置環境と電源を確保できれば、高速・低遅延の通信を利用できます。
衛星通信の種類と特徴
| LEO(低軌道) | MEO(中軌道) | GEO(静止軌道) | |
|---|---|---|---|
| 高度 | 約500~1,200km | 約2,000~20,000km | 約35,786km |
| 周回周期 | 約90~120分 | 数時間 | 24時間(地球自転と同期) |
| 見かけの動き | 高速で移動 | ゆっくり移動 | 静止(常に同じ位置) |
| カバー範囲 | 狭い(多数必要) | 中程度(複数で全球カバー) | 広い(1基で地球の約1/3) |
| 全球カバー | 数百~1万基超 (Starlink、OneWeb) |
数十基(例 O3b:20基程度) | 数基(3、4基) |
| 遅延 | 約25~80ms | 約100~300ms | 約500~600ms |
Starlinkのダウンロード速度は約216~350Mbps、アップロード速度は約35~61Mbps、遅延は約25~35msです。この速度であれば、高画質動画の視聴やWeb会議など、ビジネスで一般的に利用されるアプリケーションも快適に利用できます。
利用できるのは160以上の国と地域。既に世界で1,200万件以上の契約実績があります(※2)。
なお、Starlinkは接続形態で大別するとアンテナ設置型の衛星ブロードバンド接続サービスとスマートフォンへ直接通信を提供するサービス(Starlink Mobile)の2つがあり、それぞれ別の衛星を利用します。IIJはStarlinkの正規代理店として、アンテナ設置型の法人向け衛星ブロードバンド接続サービスとして「Starlink Business(スターリンクビジネス)」を提供しています。
- Starlinkの実績や通信速度はすべてSpaceX社の公表データに基づきます(2026年8月時点)。
Starlinkで実現するBCP・災害対策のユースケース
Starlinkの活用方法として注目されているのが、BCP・災害対策分野です。災害時だけでなく平時から利用できる代表的なユースケースを紹介します。
1. バックアップ回線として利用する
通信の冗長化によるBCP対策強化
BCPはバックアップ回線の整備が不可欠ですが、回線の手配や構築は大きな負担です。拠点数が多くなると、その負担は相乗的に高まっていきます。海外にも拠点がある場合は現地のネットワーク事業者との調整も必要で、担当者の手間と負担は更に大きくなります。
Starlinkはサービス提供エリア内で、アンテナの設置環境と電源を確保できれば、高速・低遅延の通信を利用できます。山間部や離島、海上などネットワークの敷設が難しい、あるいは基地局の電波が届かない場所でも通信が可能です。
Starlinkをバックアップ回線として準備しておき、メイン回線断絶時に自動で切り替わる冗長構成も容易に構築できます。これまで冗長化が難しかった拠点でもBCP対策を強化し、グローバルレベルで「止まらないビジネス」を実現できます。
バックアップ回線の新たな選択肢として
回線のブロードバンド化に伴い、以前はバックアップ回線として利用されてきた通信キャリアのネットワークサービスも提供終了したものが少なくありません。フレッツ・ADSLは2026年1月、フレッツ・ISDNは2026年1月、NTTドコモの3Gサービス「FOMA」は2026年3月にサービス提供を終了しました。
これらの回線を利用していた場合は新たにバックアップ回線の整備が必要ですが、有線の回線は提供エリアによって利用できない場合や別途工事が必要になる場合があります。モバイル回線の場合は基地局の電波が届かないと利用できません。
Starlinkならそうした心配は要りません。衛星アンテナを設置すれば高速・低遅延の衛星ブロードバンドを利用できます。バックアップ回線の新たな選択肢として、Starlinkは“有望株”と言えそうです。
2. 災害対策用の回線として利用する
平時利用で高める災害用回線としての実効性
通信確保は、災害時の事業継続における生命線と言っても過言ではありません。しかし大規模な自然災害が発生すると、物理的な回線の寸断、機器や基地局の故障などが発生する恐れがあります。いざという時の備えであるバックアップ回線も使えなくなる可能性は捨てきれません。
その点、衛星を使うStarlinkは地上の災害状況に影響されず、安定的に高速・低遅延のブロードバンドを利用できます。過酷な環境でも安定した通信が可能で、可搬性に優れた小型の衛星アンテナもあります。災害時の緊急通信手段として活用できる安心感はStarlinkの大きな強みです。
更に、災害対策としての実効性を高める方法として、平時からStarlink回線を業務に利用し、災害時も継続して利用する方法があります。災害時のみ利用するとしても、実際には機器の保管・点検、利用手順の周知などを継続的に行う必要があり、いざという時に想定どおり活用できないリスクもあります。平時から利用していれば、機器の取り扱いに慣れた状態を維持できるほか、通信状態も日常的に確認できます。災害時に初めて機器を設置・設定する場合と比べて現場の負担を抑えることもできます。
“普段使い”のネットワークで投資を無駄にしない
平時からの利用は投資の有効活用につながります。メイン回線に加えてStarlinkを導入すると、その分のコストがかかります。いつ使うか分からない回線のために、毎月コストが発生するわけです。そうした懸念は“普段使い”のStarlinkで払しょくすることができます。
“二刀流”で投資価値を高める
メイン回線とStarlinkで冗長構成を実現し、メイン回線断絶時にはStarlinkに切り替わる仕組みを構築します。その上でStarlinkをゲスト用回線として平時から利用するのです。
オフィスであれば、来客スペースや会議室向けのWi-Fiとして活用できます。また、公共施設のコミュニティスペースやホテルのラウンジでWi-Fiを提供することで、利用者の満足度も向上します。
ビルの法定点検や設備点検によるネットワーク停止時も、その補完ネットワークとして使うことができます。平時と有事の“二刀流”なら投資を無駄にせず、ネットワークを有効利用できます。
設置工事や保守までIIJがワンストップ支援
実際にStarlinkを利用する場合は、正規代理店に申し込み、天空が開けた安定している場所にアンテナを設置して使用します。衛星アンテナのタイプや使い方によっては、設置工事やオフィスまでのケーブル敷設工事などが必要です。
IIJはStarlinkの正規代理店として、法人向け衛星ブロードバンド接続サービス「Starlink Business」を提供しており、衛星アンテナの設置工事から保守までワンストップで対応します。アクセスポイントとの接続、LAN工事(有線・無線)なども対応可能です。導入時は以下の図のようなステップで手続きや工事を進めていきます。
Starlinkは衛星からの電波を受けて通信を行います。地上に設置するアンテナの上空に遮蔽物があるとサービス中断の恐れがあります。
屋内や窓際では、電波が遮られ、十分な通信品質を確保できない場合があります。IIJはヒアリングを行った上で、実際に現地で周囲の環境や気象の影響、電波の受信状況などを調査し、最適な設置場所を提案します。
従来の衛星通信より安価で、持ち運び可能なタイプも
サービスプランは国内での固定・モバイル接続に最適な「ローカル優先プラン」と、海上やグローバルな接続が可能な「グローバル優先プラン」の2つがあります。従来の衛星通信サービスに比べて安価に利用できます。
衛星アンテナを含むStarlinkキットは一式を月額レンタルで提供します。Starlinkキットは衛星アンテナのサイズによって小型・軽量の「Mini」、建物への取り付けを想定した中型の「Standard」と大型の「Performance」の3種類があります。
サイズによる通信速度や受信性能に大きな差はありません。持ち運びして使うなら「Mini」、定置利用なら「Standard」、強風対応・船舶搭載など耐候性を重視するなら「Performance」が最適です。
Miniは、手提げバッグに収納できる小型・軽量の衛星アンテナです。IIJでは、利用シーンに応じて、折りたたみ式三脚やポータブル電源などを組み合わせた持ち運びしやすい構成でのご提案も行っています。設置工事は不要で、パソコンやスマートフォンなどをWi-Fiで接続すれば、移動先でもすぐにStarlinkを利用できます。ただし、日本国内では電波法による規制があるため、陸上において移動しながらの利用はできません(※1)。
(組み合わせはイメージ)
Starlinkは厳しい気象条件や自然災害下でも強固な接続性を備えた、信頼性の高い高速インターネットを提供するために構築されています。耐候性が高く、豪雪や豪雨時でも通信を維持できることを確認しています。ただし通信品質は設置環境や気象条件により変動します。具体的な設置場所がある場合は、まずはサービス提供事業者に相談してみることをおすすめします。
衛星アンテナには融雪機能もあり、雪が降っても溶かしながら稼働します。IIJは北海道の豪雪地帯のお客様に衛星アンテナを設置した実績があります(※1)。降雪の多い厳しい冬を通じて安定的な通信を実現しています。
Starlinkを軸にネットワーク全体の価値向上を支援
IIJは既にStarlinkの導入を多数支援しています。様々なお客様環境に対応し、迅速・確実な設置工事が可能です。
多様なサービスを組み合わせ、お客様に最適なネットワーク環境を提供できるのもIIJの強みです。例えば、既存のメイン回線とStarlinkを組み合わせ、Starlinkをバックアップ回線とする冗長構成ネットワークの設計・構築も可能です。
Starlinkのネットワークに、IIJが提供するSD-WAN「IIJ Omnibusサービス」を組み合わせて、社内ネットワークへの高速かつセキュアなアクセスを実現することもできます。
サプライチェーンを担うビジネスを止めない―。地域社会を支える行政サービスを止めない―。衛星通信のStarlinkはその“要”になります。投資を無駄にしない平時の有効活用など、お客様のニーズや要望をもとに様々なユースケースもご提案可能です。より強靭なBCP・災害対策をお考えのお客様は、ぜひIIJにご相談ください。
記事監修者
1995年IIJ入社。サーバインフラ、メールサービス、個人向けインターネットサービスやモバイルサービス(IIJmio)などの企画・運営に携わる。ゲーム関連企業への出向を経て、2022年にIIJへ帰任。現在はStarlinkを中心に技術動向調査や活用提案を推進。法人向けサービス「Starlink Business」の紹介やユースケース検討、情報発信を行う。IIJ Engineers Blogでは現在30本以上のStarlink関連記事を執筆。
よくあるご質問
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高速で低遅延の衛星ブロードバンド接続サービスという特長から、ビジネスのあらゆるシーンでの活用が進んでいます。BCP対策における通信確保のほか、海上、山間部、建設現場など光回線の敷設やモバイル通信が難しい場所(不感地帯など)での通信格差解消の方法として利用が広がっています。
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利用できます。従来の光回線やモバイル回線と異なる通信インフラのため、平時から利用できるBCP対策の通信手段として注目されています。
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利用できます。自然災害や回線障害時の通信手段として、既存の回線と組み合わせて導入するケースも増えています。
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SpaceX社が提供するStarlinkは、個人・法人向けに提供されている衛星インターネットサービスです。IIJが提供するStarlink Businessは、法人のお客様向けのサービスです。お客様の利用用途や利用環境に応じたプランをご提案しています。
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IIJでは、Starlink Businessの提供だけでなく、お客様の利用用途や設置環境に応じたプランの選定、導入支援、ネットワーク構成のご提案、運用までトータルでサポートします。また、長年培ってきたネットワークインテグレーションの知見を生かし、既存ネットワークとの接続や冗長化構成など、お客様の環境に合わせたご提案が可能です。
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Starlinkは過酷な環境に耐えられるよう設計されており、高い耐候性が特長の1つです。ただし条件下によっては、通信速度の低下や通信品質への影響が発生する場合があります。
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利用形態によって異なります。一時利用や持ち運びの利用では比較的簡単に設置できる場合がありますが、常設利用ではアンテナ設置工事やLAN配線工事が必要になります。IIJでは設置工事にも対応しています。詳しくはお問い合わせください。
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利用できます。IIJではSD-WAN(IIJ Omnibusサービス)と組み合わせることで、様々なWAN構成へのニーズに対応します。既存拠点ネットワークのバックアップ回線や冗長構成として利用できます。
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期間は利用環境や工事有無等によって異なります。IIJで設置工事の準備(設置にかかる申請など)を含めて行う場合は、お客様へのヒアリング・提案から工事実施そして完了まで4ヵ月程度を見込みます。詳しくはお問い合わせください。