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AIネイティブ」企業を目指す事業戦略を受けて、効率的かつ着実な実装を担う「AI実装タスクフォース」が始動した。エンジニアの豊富な知見を活かしながら、いかにして具体的な「成果」に結びつけていくのか? その基本構想と実施概要を述べる。
IIJは創業当初からエンジニアを中心とした組織であり、現場発の取り組み、いわゆる“草の根活動”を得意としてきました。 AIについても例外ではなく、技術者同士が自発的に集まり、技術検証や活用方法の検討を重ねてきました。
社内には複数のAI関連ワーキンググループ(WG)が立ち上がり、「IIJでは今後、 AIをどのように活用すべきか」といった議論が深まると同時に、有志によるコミュニティの形成も進んでいます。2024年には当社会長の鈴木を室長とするAI導入実験室が発足し、 IIJにとって最適なAI活用を模索しています。
こうした積み重ねを通して、すでに一定の知見と手応えを得ていますが、このたび社長の谷脇が掲げる全社的なAI戦略を実現すべく、組織横断型の取り組みとしてAIを事業実装し、競争力向上や成果実現につなげることを目指して、 AI実装タスクフォース(以下、 AITF)が発足しました。
本稿では、まだ道半ばであるものの、現段階におけるAI実装の基本構想について紹介します。我々は、 AIの進化が速いからといって特別なことを行なうつもりはなく、組織として成果を出すための具体的なゴールを設定して、実行プロセスを定義し、成果を評価しながらフィードバックを回していくことを想定しています。
2022年末、世界中に衝撃を与えたChatGPTの登場から、わずか数年しか経っていませんが、 AIが驚異的なスピードで進化していることは周知の通りです。当初は検索ツールの延長、つまり受動的な情報収集手段と見なされ、多くの企業ではPoCにとどまる試験的な活用が大半でした。
しかし、 AIエージェントの登場により状況は一変しました。人間が担ってきた業務を代替・補完することが現実的になり、ここ半年の進化は「凄まじい」のひと言です。特にソフトウェア開発においては、コード生成やテスト工程の多くを代替できる段階に達しており、要件定義においてもAIが有効な支援を行なえるようになっています。システム運用に関しても、アラート分析、ナレッジ参照、初動判断の支援など、従来は人間が行なっていた判断や作業の一部をAIで代替できる可能性が見え始めています。
そうしたなか、筆者がこれまでに触れてきた国内外の企業のAI活用事例に共通しているのは「成果の定量化」に苦労しているという点です。 IIJでは、 AIを単なる便利ツールとして扱うのではなく、組織に実利をもたらす施策として位置づけ、定量的な成果を確実に示していかなければならないと考えています。
ここで具体的な内容を述べることは控えますが、例えば、外部パートナーに委託していた開発・運用モデルなどは、 AIによる効率化の成果が確実に出る分野です。また、社内での実装から得たノウハウは、同様なITシステムを扱う他企業にも有益であるため、ソリューションとして提供すれば新たな収益機会になるのでは、と期待しています。
各施策は社長をトップとするガバナンス体制のもと推進していますが、経営サイドの意図と現場レベルの実行がリンクする場を創出して、 AIに関する意思決定が迅速に浸透する環境作りを心がけています。
社長直轄の組織として設置されたAITFは、各部門や既存のAI関連WGとも連携しながら、全社的な推進を主導する役割を担っており、 AIの進化スピードを加味しつつ、変革を強力に後押しする体制を整えていきます。
各現場でAI活用を進めるにあたり、プロフェッショナルの視点から業務改革の提案および実装を支援できるよう、AIのエキスパートを中心としたCoE(Center of Excellence)の組成を進めています。ビジネスの最前線に立っている現場は、どうしても眼前の業務に追われて、変化に対して慎重になることがままあります。そうしたことも考慮して、成果を出すための推進役が必要と考えた次第です。
AITFでは、巻頭記事で谷脇が掲げた「AIネイティブ」な事業構築に向けた4つの取り組みについて明確な達成目標を設定して、実行計画に落とし込んだうえで施策を推進していきます。
ここで重要になる指標がROI(投資収益率)です。コストをともなうAI利用に対して、組織としての成果をどのように評価するのかは容易ではありませんが、外部パートナーに任せていた業務プロセスやソフトウェア開発の多くがAIによって代替できることが明らかになっているので、まずはこれらを定量的な指標として可視化し、目標値として設定します。
なお、全社共通の基盤構築やデータ活用など短期的には数値化がむずかしい取り組みもありますが、これらは将来的に事業価値創出の源泉となるものです。社内で蓄積した技術やノウハウは、社外に展開することで収益化が可能であり、そうした観点からもROIを捉えていく必要があります。
AI活用は、従来の便利ツールとしての利用から、実際に得られた成果に対して責任が生じる経営施策へとシフトしつつあります。 IIJではこうした取り組みを次の中期経営計画のなかで具体化する予定です。
AIはイノベーションの源泉である一方、外部への情報流出や不測のリスクへの対応が不可欠であり、Claude Mythos(クロード・ミュトス)のようなフロンティアAIの進展により、従来とは異なる備えが求められています。
AI利用を推進する際、そうしたリスクに対するルール整備は非常にむずかしいのですが、当社では2024年に制定した生成AI利活用ガイドラインを全面的に改定し、現在のAI環境に適合したルール整備を進めています。そこでは全社としての基本的統制と部署ごとの利用用途を鑑み、個々に設定できる部分を組み合わせるかたちを考えています。
AI導入は既存の組織文化や業務に対する変革そのものです。 AIによって得られる効果を理解しつつも、日々の仕事に追われるなかで踏み出せない状況や、先の見えない業務の変化、それにともなう不安などが、 AI導入のハードルになっています。
ただ、近年入社した新入社員の多くは学生時代からAIを経験しており、AIネイティブな環境にも違和感がありません。こうした世代間のギャップも含め、組織としての課題を1つずつ解決しながら、変革を進めていく考えです。
AITFの活動は途に就いたばかりですので、今後、 IIJにおけるAI活用がどのように進展したのかについては、機を改めて紹介したいと思います。

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