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詳解!Streaming Technology 動画配信新時代 ~ますます重要度を増す動画配信をめぐって

IIJ.news Vol.175 April 2023

動画配信は今後、企業活動にも欠くことのできないツールとなっていくことが予測される。
本稿では、最新動向を整理しながら、事業者視点の取り組みや、IIJの新たなチャレンジについて紹介する。

執筆者プロフィール

JOCDN株式会社 執行役員
IIJネットワーク本部 配信事業推進部長

福田 一則

先日、ニッポン放送の深夜のラジオ番組「オールナイトニッポン」の55周年を記念して、72時間にもおよぶ特番が放送されました。高校生の頃、筆者はオールナイトニッポンの第2部が放送されない地域に住んでいたため、「芳賀ゆい」という架空アイドルの存在は知っていたものの、架空アイドルを創り出した伊集院光のオールナイトニッポンを聞くことができず、まさに“歯がゆい”思いをしたものです(笑)。今回、ビタースイートサンバのジングルに載った伊集院光の声や「芳賀ゆい」の曲を聴いて、頭の片隅で埃を被っていた記憶が蘇ると同時に、数10年抱えていた想いを晴らすことができました。

その昔、自分が住んでいる地域で放送されていないラジオ番組を聞きたい時は、ラジオのダイヤルを少しずつ回して遠方から微かに届く電波を拾う努力をするか、泣く泣くあきらめるかのどちらかでしたが、今では「radiko」(ラジコ)を利用すれば、日本国内であればどの地域でも番組を楽しむことができます。

今回の72時間の長時間番組は、その話題性もさることながら、放送時間中にSNSで継続的に取り上げられたので、その内容を目にしてradikoで聞いた方もいらっしゃるでしょう。映像や音声のコンテンツを放送ではなく、パソコンやスマートフォンのアプリで楽しむことが一般的になってきました。

スポーツイベントも動画配信で見る時代に

2022年11月に実施されたサッカーワールドカップは、いわゆる三笘の“1ミリ”やメッシ率いるアルゼンチンの優勝で大いに盛り上がりましたが、筆者にとっても印象深い大会になりました。これまで世界的なスポーツイベントといえば、テレビでの放送がメインで、副次的にネット配信が実施されていましたが、今回は「AbemaTV」が日本戦を含む全試合を配信し、テレビでは一部の試合のみが放送されるにとどまりました。これは過去になかった逆転現象です。

筆者は職業柄、こういった大きなスポーツイベントのインターネットトラフィックの動向が気になり、各IX事業者のトラフィックグラフを眺めてみました。これまでのスポーツイベントの配信は、テレビでの放送が始まると、トラフィックが落ち込む傾向がありました。これは、インターネットでの動画視聴などを中座してテレビ放送で試合を視ていると推測でき、例えばサッカーの試合だと、(テレビ放送がCMを流す)ハーフタイムになると律儀にトラフィックが盛り上がり、再び試合が再開されると落ち込む……といった推移が見られました。

ところが、今回のワールドカップでは、試合中にトラフィックが盛り上がるといった状況が確認されました。もちろん、テレビで視聴している人も大勢いて、視聴率も30 パーセントに届く試合もあったようですが、トラフィックの落ち込みはなく、AbemaTVでサッカーの試合を配信している時間帯に、トラフィックが顕著に盛り上がるグラフが表示されていました。これは日本戦だけでなく、深夜から明け方といったタイミングでも同じような傾向を確認できました。

こういったトラフィックの変化、視聴傾向の変化を見ると、今回のワールドカップのインターネット配信は、スポーツイベントをインターネットで視聴することが定着する起点になる出来事だったと考えています。

人気の高いスポーツコンテンツのライブ配信は、動画配信サービスの新規顧客獲得策の一環として頻繁に実施されます。国内の動画配信サービス市場は、オリジナルコンテンツの品揃えを謳ってはいるものの、邦画やアニメ、テレビ局の番組など、各サービスが同様のコンテンツをラインナップしていることもあり、差別化がむずかしい状況にあります。また、高めの料金設定をしていた「Netflix」が広告を視聴する代わりに安くなる料金プランを始めるなど、料金面での改善が見られるものの、コンテンツにおける差別化という点では、スポーツを中心にしたライブコンテンツは依然として貴重なリソースなのです。

放送のシステムは、大多数の視聴者にコンテンツをいっせいに配信するのには非常に効率のよい仕組みです。これまでスポーツコンテンツは放送によって目にしていましたが、今後は徐々に動画配信サービスでしか見ることができない時代になるのかと思うと、インターネットの仕事をしている筆者でさえも複雑な心境です。

放送局が進めるネット配信の取り組み

放送局もネット配信の取り組みを進めています。民放の見逃し配信サービスを提供していた「TVer」では、一部の時間帯で各系列が揃ったかたちでの同時配信を開始しました。残業の合間に気になるドラマを視聴されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。また、NHKの同時・見逃し配信サービス「NHKプラス」は、各地方で放送しているニュースなどの番組も見逃しコンテンツとして視聴できるようになりました。どちらのサービスも直近の見逃しコンテンツだけでなく、過去のドラマなども配信することでサービスの魅力を高めています。

また、両サービスとも当初はPC、 スマホ向けのサービスでしたが、スマートテレビやスティックタイプのセットトップボックスで見逃しコンテンツの視聴ができるようになりました。テレビといえば、放送波で流れてきたコンテンツを視聴するものでしたが、NetflixやAbemaTVなどの動画配信サービスは、スマートテレビのアプリやテレビリモコンのボタンですぐ利用できるので、同じようにスマートテレビのアプリでNHKプラスやTverなどを視聴可能なことは、放送コンテンツとの接触機会を高めるうえで重要な施策と考えます。

コンテンツを創り出す役割としての放送局は、これからもネットへの取り組みを強化していくでしょう。放送局とIIJの出資により事業を推進しているJOCDN株式会社もその一例です。JOCDNは放送の仕組みのなかにおいて電波塔からご家庭のアンテナまでのあいだ、まさに放送と同じ部分をインターネットの世界において担うCDNサービスを提供しています。放送局が運営している数多くの動画配信サービスでご利用いただいていますが、放送局向けに特化しているわけではなく、エンタープライズのお客さまにもご利用いただけます。企業や公共団体、重要な情報提供を行なっているWEBサイトやアプリ、ソフトウェアの大規模なダウンロードなど、品質が求められるネット配信サービスを支えるCDNを、ぜひご活用ください。

企業活動に資する動画

動画をはじめとしたコンテンツ配信は、コンテンツ事業者だけでなく、エンタープライズのお客さまにとっても重要な情報発信手段になっています。最近では「YouTube」や「TikTok」などで企業が公開している動画を目にする機会が多くなりましたし、コロナ禍への対応としてWEB会議やオンラインセミナーが一気に広まりました。読者の皆さまの多くもWEB会議のツールを利用されているでしょうし、社内のセミナーや訓示などの動画のコンテンツに登場された方もいらっしゃるのではないでしょうか。

YouTubeなどの動画サイトを検索すると企業がアップした動画を簡単に見つけることができますが、WEB会議の録画の動画をそのまま配信していたり、全体的に暗い映像になっていたりと、動画の品質には大きな差があるように見受けられます。企業が入居するオフィスビルやコーポレートサイトは“企業の顔”と捉えられる面もありますが、企業が公開する動画に関しても、今後は同じような視点で見られるようになるかもしれません。

IIJはこれまで、「東京・春・音楽祭」におけるコンサートのライブ配信、自社のIRイベント、サービス説明会など、さまざまな機会に撮影から配信までを手がけており、ご視聴いただいた皆さまからその品質に高い評価をいただいております。そしてさらに、これまで培った知見をお客さまのコンテンツ制作にも還元できるよう、その拠点として「IIJ Studio TOKYO」を社内に整備しました。

スタジオは防音対策を施した構造になっており、外部からの音の入り込みの心配もなく、万全の環境で収録を行なっていただけます。弊社はこのスタジオを映像制作の拠点として、撮影から配信までを一気通貫で行なえる体制のもと、お客さまの説明会やイベント配信の成功に寄与してまいります。

以上、最近の動画配信のトレンドについて、私見を交えながら述べてきましたが、この先、動画配信の技術やサービスはどのような変化を遂げていくのでしょうか? 例えば、Tiktokは2016年にリリースされ、まだ10年も経っていないことを考えると、今後の数年のあいだにさまざまなサービスがリリースされ、淘汰されていくと思われます。

弊社でも新たなチャレンジを続けていく所存ですが、読者の皆さまのなかには、日本発で世界に向けて発信できるようなサービスをご検討されている方もいらっしゃると思います。ぜひ、動画配信の未来を議論させていただきながら、ご一緒できる機会をいただけましたら幸いです。

JOCDN株式会社

  • 本社:〒102-0071 東京都千代田区富士見2-10-2 飯田橋グランブルーム
  • 設立:2016年12月1日
  • 事業内容:国内向け動画配信プラットフォームサービスの提供、放送システムの構築・運用

JOCDN株式会社は、IIJと放送事業者が共同出資した純国産のCDNサービス会社です。IIJが持つ大規模配信に関する高い技術力と、放送事業者が持つ動画配信サービスの運営ノウハウを融合し、高品質なCDN(Content Delivery Network)サービスを放送事業者および動画配信事業者向けにご提供いたします。


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