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インターネット・トリビア 4Gと5Gの同じ所、違うところ

IIJ.news Vol.170 June 2022

執筆者プロフィール

IIJ MVNO事業部 事業統括部シニアエンジニア

堂前 清隆

「IIJmioの中の人」の1人として、IIJ公式技術ブログ「てくろぐ」の執筆や、イベント「IIJmio meeting」を開催しています。エンジニアとしてコンテナ型データセンターの開発やケータイサイトのシステム運用、スマホの挙動調査まで、インターネットのさまざまなことを手掛けてきました。

通信業界に限らず、5Gへの注目が続いています。5Gの特徴の一つに「通信速度が格段に速くなった」ということがよく言われています。ですが、実は無線通信に使われている技術を見ると、4G(LTE)と5Gでは基本的な考え方はあまり変わっていません。今回は通信速度の観点から「変調」、「多重化」という仕組みの概略と、4G・5Gの違いを見てみたいと思います。

電波を使って情報を伝えるためには、何らかの方法で電波を少し変化させてやる必要があります。例えば、原始的な無線通信では電波を送信する(オン)・止める(オフ)という操作を繰り返すことで情報を伝達します。これは「モールス信号」を使った通信方式としても知られています。このように、情報を伝えるために電波を変化させることを「変調」と呼びます。

4Gや5Gの携帯電話網では、もう少し複雑な変化をさせます。電波は文字通り「波」の形で表すことができますが、この波の大きさ(振幅)を変化させたり、波の「位相」を変化させます。「位相の変化」というのは、波が一定のペースで大きくなったり小さくなったりを繰り返している途中で、あるとき突然、変化をすっ飛ばしてしまうという状態を想像してください。波の変化がどのぐらいすっ飛ばされたかを測ることによって、何パターンかの情報を送ることができます。振幅・位相の変化のさせ方を組み合わせることによって、ある瞬間に多数の異なるパターンを表現できます。この方法で64パターンの組み合わせを表現できるようにした変調方式を64QAM、256パターンの組み合わせを表現できるようにした場合は256QAMと呼ばれています。64QAMより256QAMのほうが一度に送信できる情報量は多くなりますが、波の微妙な変化を見分けなければならないので、利用できる条件が厳しくなります。

また、携帯電話網では複数の端末が同時に通信を行なう必要があります。このための技術を「多重化」と呼びます。4G・5Gで使われている多重化方式では、ある一定の「周波数幅」の電波を小さな幅の複数の電波に分割します。これをサブキャリアと呼びます。さらに、これらのサブキャリアを短い時間ごとに区切って、通信を行なう端末に割り振ります。こうすることで、多数の端末が混乱することなく電波を利用できるようになります。この方法をOFDMと呼びます。OFDMの面白いところは、用意された電波の周波数の幅に合わせてサブキャリアの数を変えることができる点です。通信に利用できる周波数幅が広ければ、たくさんのサブキャリアが使えます。

携帯電話網では、それぞれのサブキャリアに変調を行ない、通信します。そのため、サブキャリアの数を倍に増やせば、一度に送信できる情報量も倍になります。これは通信速度が倍になったことに相当します。電波の周波数幅を広く確保できれば、それだけ通信速度の向上が見込めるというのがOFDMの特徴です。

4Gと5Gはどちらも変調方式「64QAM・256QAM」と、多重化方式「OFDM」を採用しています。この点で両者に大きな違いはありませんが、4Gと比べて5Gでは用意されている電波の幅が格段に広がっています。4Gで利用できる周波数の幅は10MHzや20MHzでしたが、5Gでは周波数帯によっては最大で400MHz幅の電波が用意されています。つまり、OFDMで多くのサブキャリアを用意できるようになったことが、5Gの高速化の大きな理由なのです。

基本的な原理は共通しているとは言え、5Gでは4Gの時には扱わなかったような高い周波数帯の電波を扱います。また、広い周波数幅で多数のサブキャリアも同時に扱わなければなりません。これらの実現のために、無線技術や信号処理技術の発展が大きな貢献をしています。こうした基礎技術の進歩が5Gを支えていると言うことも忘れてはならないでしょう。


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