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コラム|Column

日本、日本人、日本製品、日本企業

親日という場合に、日本が好き、日本人が好き、日本製品が好き、日本企業が好き、という四つは、必ずしもイコールにならないことに注意が必要です。多くのインドネシア人は日本が好きかもしれませんが、日本人が好きかどうかは、実際に日本人と会ったことがあるかどうか、会った日本人が好きかどうかによって変わります。そして、よい日本人と出会うことによって、日本がさらに好きになるということもあるでしょう。

同様に、日本製品が好きだから日本が好き、という場合もあります。しかし、日本が好きだから日本製品が好きとはならないかもしれません。昨今、韓国製、中国製、インドネシア製の製品の品質が向上し、価格競争力を持つため、日本製でなければという範囲が小さくなっています。韓国製や中国製の製品を使っていても、日本が好きということは十分にありえます。

では、日本企業についてはどうでしょうか。筆者は国立ガジャマダ大学で大学3・4年生の就職カウセリングをしたことがありますが、就職先の人気トップは欧米系多国籍企業、以下、財閥系国内企業、国営企業の次に、日系企業が位置しました。しかも、多くの学生が日系企業を選ぶのは「日本に行きたい」という動機が主であり、日本から帰国したら他の大企業へ転職したり、大学院に入り直したりするというキャリアパスを描いていました。日本は好きなのですが、だから日本企業が好きとは言えないのです。

また、日系企業で働くインドネシア人中堅職員に対して本音ベースの日本イメージを聞くと、プラスイメージとして、規律正しい、時間厳守、福利厚生が充実、データ重視、法規の遵守、コミットメントが高い、などを挙げます。しかし、マイナスイメージとしては、給料が低い、ストレスの多い職場環境、ケチである、性差別、発言や決定における一貫性の欠如、一度失敗すると汚名挽回しようにもマイナス評価が覆らない、粗野な言動、カラオケや飲酒が好き、など、プラスイメージの何倍もの事例が挙げられます。

日本人側からもインドネシア人従業員に対して、プラスやマイナスの様々なイメージがあると思いますが、問題は、双方のイメージが思い込みとして並列した状態のままであるということです。互いの思い込みを克服して初めて、日本人側とインドネシア人側との信頼関係が生まれるならば、まず日本人幹部からインドネシア人職員へ働きかけを行うのが望ましいと考えます。

このように、日本が好きということと、日本人が好き、日本製品が好き、日本企業が好き、ということは必ずしもイコールでない、ということを忘れずにいたいものです。

親日と親インドネシアの共鳴へ

日本のメディアでは、インドネシアの高速鉄道事業の受注で日本が中国に負けたことをもって、今後の日本企業のインドネシアでの活動に悪影響が出るのではないかという懸念が出されています。たしかに、ジョコ・ウィドド(ジョコウィ)政権の中国志向は注意してみていく必要がありますが、日本とインドネシアの関係は、この件で疎遠になるようなものなのでしょうか。

現在の日本とインドネシアとの関係は、反日暴動を克服し、新たな関係を築くために地道に努力し続けてきた日本人とインドネシア人の協働の分厚い蓄積の上に成り立っています。短期的な利益を追求するあまり、この蓄積の上にあぐらをかき、日々の活動の中で信頼関係を構築する努力を怠ってはいないだろうか、という自戒を込めた問いが湧いてきます。とくに、我々日本人は、インドネシアが親日であることを求める一方で、自分たちも親インドネシアであろうとすることを忘れているのではないでしょうか。

対等なパートナーシップを謳うのであれば、親日と親インドネシアが交差し、共鳴し合う関係を築いていく努力を続けていくほかはありません。日本=インドネシア関係の今後は、我々自身のインドネシアとの関わり方如何にかかってくる面が大きいのです。

松井 和久 氏

松井グローカル 代表

1962年生まれ。一橋大学 社会学部卒業、インドネシア大学大学院修士課程修了(経済学)。1985年~2008年までアジア経済研究所(現ジェトロ・アジア経済研究所)にてインドネシア地域研究を担当。その前後、JICA長期専門家(地域開発政策アドバイザー)やJETRO専門家(インドネシア商工会議所アドバイザー)としてインドネシアで勤務。2012年7月からJACビジネスセンターのシニアアドバイザー、2013年9月から同シニアアソシエイト。2013年4月からは、スラバヤを拠点に、中小企業庁の中小企業海外展開現地支援プラットフォームコーディネーター(インドネシア)も務めた。2015年4月以降は日本に拠点を移し、インドネシアとの間を行き来しながら活動中。