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  6. 1. 定期観測レポート IIJインフラから見たインターネットの傾向~2023年

Internet Infrastructure Review(IIR)Vol.61
2023年12月
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目次

1. 定期観測レポート

IIJインフラから見たインターネットの傾向〜2023年

インターネットサービスを提供するIIJは、国内でも有数規模のネットワーク・サーバインフラを運用しています。ここでは、その運用によって得られた情報から、この1年間のインターネットの動向について報告します。特に、BGP経路、DNSクエリ解析、IPv6、モバイルの各視点から変化の傾向を分析しました。

Theme 01 BGP・経路数

最初に、IIJ網から他組織に広報している「IPv4フルルート」の情報(表-1)及び「IPv4フルルート」に含まれるunique IPv4アドレス数の情報(表-3)を確認します。

表-3「IPv4フルルート」に含まれる unique IPv4アドレス総数及び「IPv6フルルート」に含まれる unique IPv6 /64ブロック総数の推移

経路総数の年間増加はわずか1.4万に留まり本定期観測開始以来の最低値となりました。2018年をピークとする減少傾向が継続しており(図-1参照)、総数が節目の100万経路に到達しないこともあり得そうな状況です。なお今回初めて/20及び/21経路数の減少が観測されました。加えて/13 〜/18の経路数も軒並み減少している一方で/22 〜/24の経路数の増加は昨年の1/3程度しかなく、その結果unique IPv4アドレス数は1300万弱(0.4%)の減少となっています。

図-1「IPv4フルルート」経路の総数及び年間増加数の推移

表-1「IPv4フルルート」に含まれるプレフィクス長ごとの経路数の推移

次に「IPv6フルルート」の情報(表-2)及び「IPv6フルルート」に含まれるunique IPv6 /64ブロック数の情報(表-3)を確認します。

表-2「IPv6フルルート」に含まれるプレフィクス長ごとの経路数の推移

経路総数は昨年と同程度の伸びで約18万に達しました。プレフィクス長の短い経路の増加は少なかったものの、その他も含めた増加経路の60%がuniqueブロック数の加算に寄与する、より短いプレフィクス長の情報がない経路であったこともありunique /64ブロック数は大きく増加した昨年から更に30%増となりました。IPv6の導入、IPv6ネットワークの拡大が順調に進んでいることが窺えます。

最後に「IPv4/IPv6フルルート」広報元AS(Origin AS)数を確認します(表-4)。なおこの1年の間に、APNICに2048、RIPE NCCに3072の32-bit onlyAS番号が追加割り振りされています。

表-4「IPv4/IPv6フルルート」の広報元AS数の推移

16-bit AS番号Origin ASの減少数は昨年より更に減少しました。今回は32-bit only AS番号Origin AS数も大きく減少しましたが、これは一昨年にAPNIC地域で大量増加した「IPv6のみ」ASの多くが経路情報に現れなくなったことが影響しています。なお当該ASから広報されていた経路は現在、同組織と思われる他ASから概ね広報されており、一時的に別ASからとしたIPv6経路広報の整理が行われたものと推測されます。

また今回は「IPv4+IPv6」32-bit only AS数が初めて同16-bit AS数を上回りました。「IPv4のみ」32-bit only AS数の減少も初めて観測されており、少なくとも新興のASではデュアルスタック構成が今後の主流となるのか、来年も注目したいと思います。

Theme 02 DNSクエリ解析

IIJでは利用者がDNSの名前解決を利用できるようフルリゾルバを提供しています。この項目では名前解決の情況を解説し、IIJで2023年10月18日に行ったフルリゾルバの1日分の観測データのうち、主にコンシューマサービス向けに提供しているサーバのデータに基づいて分析と考察を行います。

フルリゾルバは利用者端末からのDNS問い合わせに応じて名前解決機能を提供します。具体的には、名前を解決するためrootと呼ばれる最上位のゾーン情報を提供する権威ネームサーバのIPアドレスを手がかりとして、問い合わせを行い、適宜権威ネームサーバをたどって必要なレコードを探します。フルリゾルバで毎回反復問い合わせを行っていると負荷や遅延の影響が問題となるため、得られた情報はしばらくキャッシュしておいて再び同じ問い合わせを受けた場合にはそのキャッシュから応答しています。最近はこの他にも家庭用ルータやファイアウォールなど、通信経路上の機器にもDNS関連の機能が実装されており、DNS問い合わせの中継や制御ポリシーの適用に関わっている場合があります。また、Webブラウザなど一部のアプリケーションでは独自の名前解決機能を実装している場合があり、OSの設定とは異なるポリシーで名前解決を行っている場合もあります。

ISPは接続種別に応じたPPPやDHCP、RA、PCOなどの通知手段を利用してフルリゾルバのIPアドレスを利用者に伝え、利用者端末が名前解決用のフルリゾルバを自動設定できるようにしています。ISPは複数のフルリゾルバを利用者に伝えられるほか、利用者は自身でOSやWebブラウザなどの設定を変更して利用するフルリゾルバを指定することもできます。端末に複数のフルリゾルバが設定されている場合、どれを利用するかは端末の実装やアプリケーションに依存するため、フルリゾルバ側では利用者が総量としてどの程度の問い合わせを行っているか分かりません。このため、利用者側の挙動や状態が変わると、突然あるフルリゾルバ向けの問い合わせが増えることも考えられるため、フルリゾルバでは問い合わせ動向を注視しながら、常に処理能力に余裕を持たせた運用を心がける必要があります。

IIJが提供するフルリゾルバの観測データを見てみると、利用者の利用傾向を示すように時間帯によって問い合わせ量が変動し、朝3時10分頃に問い合わせ元のIPアドレス当たり最小の0.15query/sec、夜22時5分頃にピークを迎えて0.36query/sec程度になっています。昨年に比べると、全般に+0.02ポイント程度伸びています。ピーク時の伸び率は多少鈍化したように見られますが、引き続き増加傾向が続いています。問い合わせ傾向を通信に使われたIPv4とIPv6のIPプロトコル別に見てみると、昨年とほぼ同様の傾向が見られ、IPv4を通信に使った問い合わせが全体の約60%、IPv6が約40%となっています。

近年の特徴的な傾向として、朝方の毎正時などキリの良い時刻に一時的に問い合わせが増加しています。問い合わせ元数も同時に増えていますし、特に朝6時朝7時に顕著に傾向が見られるため、利用者の端末でタスクをスケジュールしたり、目覚まし機能などで端末が起動することに伴う機械的なアクセスが原因ではないかと推測しています。その他、毎正時の14秒前と9秒前の問い合わせも増加しています。これは近年見られている傾向で、毎正時に増加する問い合わせ量では急な増加後、緩やかに問い合わせ量が減っていくのに比べて、毎正時前の増加では急な増加の直後にそれまでの問い合わせ量程度に戻っています。つまり多くの端末が綺麗に同期して問い合わせを行っていることから、何かすぐに完了する軽量なタスクが実行されているのではないかと推測しています。例えば接続確認や時刻同期など基本的なタスクを本格的なスリープ解除前に終わらせるような機構があり、これに利用されている問い合わせが影響していると予想しています。

問い合わせプロトコルに注目すると、UDPが98.581%でほとんどがUDPでの問い合わせになっています。ただ、TCPでの問い合わせは2021年が0.189%、2022年が0.812%、2023年が1.419%であり、ここ数年TCPでの問い合わせ割合が増加してきています。主な増加要因として、DNS over TLS(DoT)での問い合わせが増えてきていることが挙げられます。DoTでは基本的にTCPの853番ポートを使って問い合わせするため、DoTの利用が増えるとTCPの問い合わせが増えることになります。

問い合わせレコードタイプに注目すると、ホスト名に対応するIPv4アドレスを問い合わせるAレコードとIPv6アドレスを問い合わせるAAAAレコード、そしてWebサービスの解決に用いられるHTTPSレコードが全体の96%を占めています。AとAAAAの問い合わせ傾向は通信に利用されるIPプロトコルで違いが見られ、IPv6での問い合わせではより多くのAAAAレコード問い合わせが見られます。IPv4での問い合わせでは、全体の57%程度がAレコード問い合わせ、17%程度がAAAAレコード問い合わせです(図-2)。一方IPv6での問い合わせでは、全体の38%程度がAレコード問い合わせ、35%程度がAAAAレコード問い合わせとAAAAレコード問い合わせの比率が高まっています(図-3)。昨年と比べるとIPv4、IPv6共に3ポイント程度Aレコードの問い合わせが減少しています。2020年から観測され始めたHTTPSレコードのDNS問い合わせがIPv4で20%、IPv6で24%程度を占めており、昨年と比べるとIPv4で+5ポイント、IPv6では+3ポイントと順調な伸びを示しています。特にIPv4ではAAAAレコードよりもHTTPSレコードの方が多く問い合わせられるようになっており、HTTPSレコードに対応した実装が多くなっていることが推測できます。昨年から観測され始めたSVCBレコードは、IPv4で0.26%、IPv6では0.60%とまだ全体に対する比率は少ないながらも順調に問い合わせが増えてきています。これは、Discovery ofDesignated Resolvers(DDR)という、クライアントが暗号化に対応したフルリゾルバを検出するための新しいプロトコル提案の実装が進んでいるためと推測しています。

図-2 クライアントからのIPv4による問い合わせ

図-3 クライアントからのIPv6による問い合わせ

Theme 03 IPv6

今回もIIJバックボーンのIPv6トラフィック量、送信元AS、主なプロトコルについて見ていきます。また、2019年と昨年にも紹介した、モバイルサービスの端末OS別のIPv6接続状況などについて、調査したいと思います。

トラフィック

IIJのコアPOP(東京3ヵ所、大阪2ヵ所、名古屋2ヵ所)のバックボーンルータで計測したトラフィックを図-4に示します。集計期間は2023年2月1日から9月30日までの8ヵ月間です。2023年は新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行し、社会経済活動もコロナ禍以前に近い形に戻りつつありますが、インターネットトラフィック量の期中の推移としては、IPv6は横ばい、IPv4は微増となっています。ただ、昨年同日(グラフの薄い色の線)と重ねて比較すると、IPv6、IPv4共にそれなりに増加していることが分かります。

図-4 IIJコアPOPのバックボーンルータで計測したトラフィック

図-5に、2023年2月1日を100として指数化したグラフを示します。先ほど紹介したとおり、年初からのトラフィック量の推移としては大きな変化はなく、概ね横ばいとなっています。

図-5 2月1日のトラフィックを100としたときの変動状況

次に、トラフィック全体に占めるIPv6の比率を図-6に示します。最小17%から最大23%ほどで推移しています。こちらも大きなトレンドは見て取れませんが、昨年同期と比較すると、5ポイントほど増加しており、IPv6トラフィックが伸びていることが分かります。

図-6 トラフィック全体に占めるIPv6の比率

表-5に6年前からのIPv6比率の推移を表にします。昨年までも同様に年ごとのIPv6比率を紹介していましたが、2021年と2022年の比率計算が誤っていたことが分かりましたので、お詫びして訂正いたします。

表-5 過去6年のIPv6比率の推移

送信元組織(BGP AS)

次に2023年2月1日から2023年9月30日までの、IPv6とIPv4の平均トラフィック送信元組織(BGP AS番号)の上位を図-7と図-8に示します。

図-7 IPv6の平均トラフィック送信元組織(BGP AS番号)

図-8 IPv4の平均トラフィック送信元組織(BGP AS番号)

IIJ内の配信などが約6割を占めますが、それを除くと前回の本レポートVol.57(https://www.iij.ad.jp/dev/report/iir/057.html)同様に日本の大手コンテンツ事業者であるA社がIPv6トラフィック量1位になっています。2位はほぼ同量で米検索大手のB社、3位はランキング初登場のC社となりました。また、大きな順位変動としては、米クラウド事業者のH社が16位から8位に、米CDNのM社が5位から13位に変わっています。M社は昨年買収がありましたので、ネットワーク再編をしているのでしょうか。

利用プロトコル

IPv6トラフィックのProtocol番号(Next-Header)と送信元ポート番号で解析したグラフを図-9に、IPv4トラフィックのProtocol番号と送信元ポート番号のグラフを図-10に示します。期間は2023年10月2日(月)から10月8日(日)までの1週間です。

図-9 IPv6トラフィックの送信元ポート解析

図-10 IPv4トラフィックの送信元ポート解析

IPv6では、昨年4位のTCP80(HTTP)が昨年5位のESP(IPSec)と逆転しています。HTTPSやQUICへの移行が進んでいる現れでしょうか。6位以下はトラフィック量が少なく、切り取る期間によって順位変動が大きいものと思われます。

1つこのグラフで興味深いところは、10月8日の夜19時頃から22時頃までのトラフィック量の変化で、図-9の一番右側の山の部分になります。TCP443(HTTPS)がかなり増加しているのが分かりますが、この時間帯に何があったか調べてみると、ラグビーワールドカップ2023フランス大会の日本代表対アルゼンチン代表の試合、そしてパリ五輪予選を兼ねたワールドカップバレー2023の日本対アメリカの試合でした。どちらの試合の影響が大きかったのか分かりませんが、IPv6での中継も一般的になってきていることを感じます。

モバイルのIPv6接続状況

昨年の本レポートVol.57(https://www.iij.ad.jp/dev/report/iir/057.html)に引き続き、今回も個人向けモバイルサービス(IIJmioモバイルサービス)の接続における、IPv6有効化率を調査します。今回は端末OS種別による違いに加え、端末メーカによる違いの有無も見てみることにします。

昨年の調査では、IPv6有効な接続が全体の56.3%で過半数となっていました。今回は2023年10月20日(金)15時30分頃の時点で、IPv6有効化率58.73%となっており、若干(2.43ポイント)増加していました。また、Apple iOSとAndroidで比較すると、Apple iOSのIPv6有効化率は86.37%で昨年比0.67ポイントの微増、AndroidのIPv6有効化率は25.82%で昨年比4.12ポイントの増加となっています。

次に、IIJmioモバイルサービスに接続している端末の上位20位までのメーカ別IPv6有効化率を見てみます。図-11に上位20社のグラフを示しますが、1位のAppleが接続数としては飛び抜けているため、下位の棒グラフは見づらいものとなってしまいました。具体的な数は示せませんが、IIJmioにおけるApple端末の接続数シェアとしては、54.3%となっており、1社で過半数となっています。そして、Apple端末のIPv6有効化率は、前回の調査(85.7%)から若干伸びて86.35%となりました。

図-11 UEメーカIPv6有効化状況(上位20社)

2位は1位と大きな開きがありますが、シャープ製端末となっています。こちらはIPv6の観点では残念ながら、2.73%しか有効となっておらず、端末のAPNプロファイルのデフォルト設定がIPv6有効になっていないものと思われます。Android端末はAPN設定でPDP-TypeをIPv4、IPv6、IPv4v6の3種の設定から選択できますが、ほとんどのユーザはデフォルト設定のまま使う、もしくはAPN自動設定で使っていると想定され、出荷時のデフォルト設定がどのようになっているかでIPv6有効化率は大きく変わるものと想像しています。

3位以下はIPv6有効化率の高いメーカについてのみ触れます。3位Googleは非常に高いIPv6有効化率(89.63%)となっており、Apple以上のIPv6率となっています。また、7位のMotorolaも89.12%と、率ではAppleより多くなっています。

10、11、12及び17位にSonyやSony Mobileが並んでいますが、こちらをすべてSony1社として合算すると全体の5位になり、Huaweiの上に躍り出ます。なお、その場合SonyのIPv6有効化率は14.7%となり、あまり有効化率は高くありませんが、日本メーカの中では高い方となっています。

メーカ別に全体的に見ると、米国のメーカはIPv6有効化率が高く、日本や中国などのメーカでは、IPv6有効化率が低い傾向にあるようです。

まとめ

今回もIIJバックボーンコアのトラフィック、送信元AS、プロトコルについて紹介しました。トラフィック量は期中横ばいですが昨年比では増加、IPv6の利用率も1年前より増加し、過去7年で最高となりました。送信元ASは具体的な名前を書いていないので分かりにくいと思いますが、意外な国が伸びていることが分かりました。大手CDN事業者も一通りIPv6対応が進んでいるようで、あまり意識せずIPv6を利用・有効化する時代になってきたようにも思います。

利用プロトコルについては、ここ数年(10年以上?)世の中の多くのサービスがAPI含めてHTTP(S)を利用するようになり、TCP/UDPのポートだけ見てもアプリや利用用途は分かりません。ですが、IPv6の方が相対的にHTTPS/QUICの利用が多いことは見て取れます。比較的新しく構築されたシステムでは、HTTPS/QUICを導入すると共にIPv6も一緒に有効化が進んでいるのだろうと想像しています。

モバイルについては、Android系OSの端末でIPv6有効化率が上がっているのが確認されましたが、日本・アジアのメーカは米国メーカに遅れを取っているように見受けられます。いろいろな事情があるところかとは思いますが、より多くのユーザが自然にIPv6を利用できるよう、APNのデフォルト設定をPDP-TypeIPv4v6にすることを検討いただきたいと思います。

引き続き様々な角度からIPv6の状況を観察しつつ、何か新しい発見がありましたら紹介したいと思います。

Theme 04 モバイル3G、LTE(5G NSA含む)の状況

ここ数年間、モバイルのトラフィック傾向はコロナ禍の影響を受けた状況となっていました。ここ1年での世の中の動きとしては、2023年5月8日に新型コロナウイルス感染症の位置づけが「新型インフルエンザ等感染症(いわゆる2類相当)」から「5類感染症」に変更されました。それを踏まえて、ここ1年間のトラフィック状況をまとめます。対象期間は、2022年10月1日から2023年9月30日です。

まずは、NTTドコモが2026年3月末で3G通信サービスを終了することになっています。現状の3Gトラフィックはどのようになっているかを報告します。

全体トラフィックにおける3G(図-12)の割合は下記のとおりになっています。コンシューマ向けサービスにおいては平均で全体トラフィックの0.033%程度しか3G通信はなく、ほぼゼロに等しい状況になっています。法人向けサービスにおいては平均で全体トラフィックの4.25%が3G通信として使われている状況です。法人向けサービスのトラフィック傾向の3G通信に関する割合はほぼ横ばいという状況になっていますので、残り約2年半の間でどれだけ法人向けサービスの3G通信が減っていくかを見守る必要があります。

図-12 全体トラフィックにおける3G通信の割合

次は法人向けサービスにおけるトラフィック状況とセッション数状況を見てみます。2022年10月1日を基準日としたときの法人向けサービスのトラフィック量(図-13)とセッション数(図-14)に関する傾向をグラフにしました。

図-13 法人向けサービストラフィック量傾向

図-14 法人向けサービスセッション数傾向

まずトラフィック量についてです。LTEのトラフィック量に関しては徐々に増加傾向は年間通じて続いていますが、2023年4月以降と2023年7月以降は増加傾向が少しだけ加速しているように見えます。こちらに関してはキャリアとの相接点の集約を行ったことによりピーク時間帯以外の通信がより流れやすい状態になったことで効率的な活用につながったことが要因と考えられます。3Gのトラフィック量に関しては昨年報告した際には減少傾向という状況でしたが、ここ1年に関しては徐々に増加する傾向になっています。LTEのトラフィック量と同様に、3Gのトラフィックに関しても2023年4月以降と2023年7月以降で増加傾向が加速している状況になっています。こちらも前述の通りにキャリアとの相接点の集約による効果と考えられます。

また、セッション数に関してですが、LTEのセッション数はトラフィック量と同様に徐々に増加している傾向が年間を通じて続いている中、2023年4月と2023年5月それぞれで一段と多く増えているように見えます。多くの日本企業の会計年度の始まりという時期であるため傾向が変わりやすい時期ではありますが、今年に関しては新型コロナウイルス感染症の位置づけが変更されることにより企業の働き方が変更されたことによってモバイルの利用状況が増えた可能性があると考えられます。3Gのセッション数に関しては、トラフィック量に反して断続的に減少する傾向が続いており、約30%程度の減少となっています。セッション数が減っていることで3Gからの撤退が進んでいることが伺えますが、引き続き安定的なサービス提供を心がけながら見守りたいと思っています。

次は、コンシューマ向けサービスにおけるトラフィック状況とセッション数状況を見てみます。2022年10月1日を基準日としたときのコンシューマ向けサービスのトラフィック量(図-15)とセッション数(図-16)に関する傾向をグラフにしました。

図-15 コンシューマ向けサービストラフィック量傾向

図-16 コンシューマ向けサービスセッション数傾向

コンシューマ向けサービスに関するトラフィック量に関しては先述のとおりほぼすべてLTE通信と言っても過言ではない状況です。ですので、ここではLTE通信の傾向を中心に説明していきます。コンシューマ向けサービスに関するトラフィック量は2023年2月頃まで特に目立った増減がなく、2022年10月頃から同等レベルのトラフィック量で推移しています。コンシューマ向けサービスのクーポン付与時期の関係で、1ヵ月間のトラフィック量の傾向は「月頭はトラフィック量が多く月末に向けて減る傾向になり、また翌月の月頭にトラフィック量が増える」ということを繰り返します。2023年2月頃まではこの傾向が顕著に出ています。2023年2月頃以降は傾向が変わり、右肩上がりの傾向となっています。これには前述の通りにキャリアとの相接点の集約による効果と考えられます。更に2023年5月1日前後のゴールデンウィーク期間中は通信量が一時的に増加しています。これは例年どおりの動きです。また2023年7月末以降は大きくトラフィック量が増加していますが、こちらも前述の通りにキャリアとの相接点の集約による効果と考えられます。同様に3G通信に関しても大きく効果が出ています。

また、セッション数を見てみると、LTE通信に関しては1年を通じて微増で推移しています。3G通信に関しては断続的に減少しています。2022年10月1日を基準日として年間で80%まで減少したという状況です。ここでは詳細な数値は控えますが、絶対数は3G停波までの道筋が見えたと思えるような数字になっています。

執筆者プロフィール

1.BGP・経路数

倉橋 智彦(くらはし ともひこ)

IIJ 基盤エンジニアリング本部 運用技術部 技術開発課

2.DNSクエリ解析

松崎 吉伸(まつざき よしのぶ)

IIJ 基盤エンジニアリング本部 運用技術部 技術開発課

3.IPv6

佐々木 泰介(ささき たいすけ)

IIJ 基盤エンジニアリング本部 モバイル技術部

4.モバイル3G、LTE(5G NSA含む)の状況

齋藤 毅(さいとう つよし)

IIJ 基盤エンジニアリング本部 モバイル技術部 部長

1. IIJインフラから見たインターネットの傾向〜2023年

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