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Internet Infrastructure Review(IIR)Vol.31
2016年6月13日発行
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目次

2.2 迷惑メールの動向

ここでは、迷惑メールの動向として、IIJのメールサービスで提供している迷惑メールフィルタが検知した迷惑メール量の割合の推移を元に、迷惑メールの変化の動向について報告します。これまでと同様に迷惑メールの割合は、一週間単位で集計し全体の受信メール量に対して、迷惑メールと判断された受信メールの割合の推移をグラフなどで示します。ここしばらく迷惑メールの量及び割合は、IIRの発行当初の2008年に比べて大幅に減少してきましたが、2016年3月に一時的に増加しています。

図-1に示す迷惑メール割合の推移のグラフは、前回のIIR(Vol.27)からの1年間、2015年3月30日から2016年4月3日までの53週間を含む、3年分のデータです。これより以前の推移については、IIR Vol.27を参照してください。迷惑メールの割合は、グラフを見て分かるとおり、年末年始の長期休暇期間などを除き、概ね減少傾向が続いてきましたが、2015年あたりから下げ幅が縮小してきました。2015年度の平均割合は、24.2%でした。2014年度が31.7%でしたので、7.5%程度減少したことになります。2013年度から2014年度の減少幅は15.7%でした。しかし、2016年3月には再び増加傾向となり、2016年3月28日の週は、44.8%まで上昇しました。その後、速報値では再び20%前後に戻りましたので、一時的な増加と考えています。この時期に増えた迷惑メールの傾向については、後ほど分析します。

図-1 迷惑メール割合の推移

2.2.1 引き続き危険度は高い状況

警察庁が平成28年3月17日に発表した資料(※1)によれば、平成27年中のインターネットバンキングに係る不正送金事犯の被害額が、過去最高の昨年を更に上回り約30億7,300万円であったことが報告されています。標的型メール攻撃も、連携事業者などからの報告が、3,823件と過去最多となっており、引き続きメールに起因する危険度は高い状態が続いていると言えます。更に、標的型メールの送信元アドレスの多くが偽装されていると考えられるものが77%であったと報告されており、やはり送信者情報の詐称を防ぐ、送信ドメイン認証技術の普及及び導入が急務であると言えます。

2.2.2 迷惑メール送信元の割合

2015年度の第4四半期にあたる、直近の2016年1月から3月までの迷惑メールの送信元を地域別に示したグラフを図-2に示します。

図-2 迷惑メール送信元地域の割合

この時期、最も迷惑メールを送信した地域は米国(US)で、16.8%でした。これまで発表してきた調査の中では、IIR Vol.10(2010年第3四半期)以来の1位でした。2位は中国(CN)で6.4%、これまで1位だったのですが今回は2位となりました。3位はブラジル(BR)で割合としては同じ数値となっていますが6.4%でした。4位も同じ割合ですが日本(JP)の6.4%でした。以後、インド(IN、6.3%)、ベトナム(VN、6.1%)、メキシコ(MX、5.4%)、香港(HK、3.1%)、アルゼンチン(AR、2.5%)、スペイン(ES、2.5%)と続きます。日本に近い、香港やベトナム以外は、国土が広くて人口の多い地域が上位となっていることが分ります。これら、上位10ヵ国の迷惑メール送信量の推移を図-3に示します。今回は、2016年3月の迷惑メール量の増加を分析するため、迷惑メール割合の推移ではなく、迷惑メール量の推移としています。そのため、縦軸の数値は示していませんが、それぞれの地域間での比較が具体的に分かるようになっています。

2.2.3 主要送信元地域の推移

図-3を見て分かるとおり、上位地域の中で、米国(US)、中国(CN)、日本(JP)、香港(HK)はもともとが送信量の多い地域ですが、2016年3月の増加時期でもそれ程大きな増加はありませんでした。この期間、最小送信数と最大送信数の差は2倍から3倍程度の違いでした。一方で、それ以外の上位地域、インド(IN)、ベトナム(VN)、メキシコ(MX)、ブラジル(BR)、アルゼンチン(AR)、スペイン(ES)の最小と最大の差は、いずれも10倍以上、特にアルゼンチン(AR)は、85倍の差がありました。いずれも迷惑メール割合の高かった2016年3月に増加している地域であることから、この時期の増加の要因であることが分ります。これらの地域が増加した原因の可能性としては、地域的にも分散していることから、ボットネットが活発に迷惑メールを送信していたのではないか、と推測しています。今後も、国際的な連携を元に、こうしたボットネットの対策をしていくことが必要と考えています。

図-3 迷惑メール送信元上位10地域の推移

  1. (※1)平成27年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢について(http://www.npa.go.jp/kanbou/cybersecurity/H27_jousei.pdfPDF)。
2. メッセージングテクノロジー

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