コンサルティング、システム開発、運用・改善など、ITの一連のプロセスを一括して受託する菱化システム。同社は、グループ及びグループ外の顧客企業の業務及びITシステムの効率化への貢献をミッションとし、幅広い課題に応えている。
しかしながら昨今、大きな懸案として浮上してきたのが、世の中で頻発している情報漏えい事件である。菱化システムの伊能秀樹氏は、「悪質化していく脅威を見据えて、インターネットセキュリティに関する技術力を早急に向上させる必要がありました」と話す。
同社のセキュリティ対策のスキームは、インターネットの水際で脅威を排除することを基本としている。具体的にはアジア、北米、欧州の3つのリージョンにインターネットへの"出口"を置き、その接点でセキュリティを守っている。しかし、オンプレミスで運用してきたWebゲートウェイ、メールフィルタなどのインフラは、1990年代の中頃から"増築"を続けてきたもので、これ以上のインターネット設備の増設はコストの観点から困難という事情もあった。
特に既存の迷惑メールフィルタは、察知した迷惑メールをエラーとして返すことしかできないという問題を抱えていた。ホワイトリスト/ブラックリストの設定・管理も、顧客からの依頼を受けて同社の運用側で一括して対応しており、タイムラグが発生してしまうことから、ユーザの不満を招きかねない状況にあった。
そこで同社が舵を切ったのが、外部のプロフェッショナルと手を組んだセキュリティインフラ刷新の検討である。伊能氏は、「お客様のデータは外部に出すことはできません。しかしながら"機能"については、むしろクラウドサービスを利用した方が、より迅速かつ低コストで効果を発揮できる可能性があると考えました」と話す。
様々なベンダーから寄せられた提案の検討を重ねた結果、Webアクセスセキュリティを統合するIIJセキュアWebゲートウェイサービス、迷惑メールフィルタとして機能するIIJセキュアMXサービスといったIIJのゲートウェイ型サービスを選定した。
「ソリューションの適合性、経済性、妥当性に関する総合評価を行った結果、ベストと判断されたのがIIJの提案でした」と同社の秋山正人氏は話す。一方で、伊能氏がこのように続ける。「最新のセキュリティ技術への精通や、熟練ノウハウだけでなく、本当に重視したのは、『物事の進め方そのもの』です。IIJは営業フェーズから多くのアイデアを提示し、テクニカルな相談にも乗ってくれたので、パートナーにふさわしいベンダーだと信頼を感じました」
例えば、他社では既成のサービスメニューの範囲を超える要求への対応の確約はできなかったが、IIJではクラウドサービスだけにとどまらず、オンプレミス側のインフラに関しても、IIJプライベートクラウドソリューションをベースにした個別SIから運用のアウトソーシングまでワンストップで提供するなど、積極的な提案を受けた。「こうした対応力の差が、IIJを選ぶ上での決定打になりました」と伊能氏は話す。
結果、防御系の機能をクラウドに移行する一方、認証系の機能についてはオンプレミス側に新たに構築した仮想環境(プライベートクラウド)に残すなど、目的・役割に応じた切り分けを実施。適材適所の運用を実現した。
こうしてIIJをメンバーに加え、プロジェクトは2014年7月にスタートした。しかし、サービスインは同年12月であり、非常にタイトなスケジュールですべての構築作業を完了させる必要があった。また、ユーザから多様な要望が寄せられる中で、迷惑メールフィルタ機能の仕様が定まらず、最後まで二転三転するという困難もあった。
「最初から多くの苦労に直面しましたが、なんとか無事に着地できたのは、IIJならではの柔軟なサービス提供のおかげです」と秋山氏は振り返る。例えば、IIJセキュアMXサービスは、ドメイン単位での迷惑メールの振り分けやレポート配布などが可能。こうしたカスタマイズ性の高さが、多様なユーザの要望を吸収しながら納得を得ていく、最終的な落としどころになったという。
加えて、IIJセキュアMXサービスは、迷惑メールの隔離機能やホワイトリスト/ブラックリストのセルフ設定機能などを即時に適用できることで、これまでにない利便性を付加した。「操作方法の習熟が進むにつれ、必ずユーザの満足度向上につながっていくと確信しています」と秋山氏は語る。
また、Webゲートウェイ及び迷惑メールフィルタの機能をサービスに移行した結果として、オンプレミスで運用するセキュリティ関連機器の台数は従来の約1/2へとシンプル化/集約化され、大幅なコスト削減を実現した。「ユーザ数に合わせてコストを変動費化すると共に、拠点が増えた場合でもセキュリティ機器を新規に導入する必要はありません。脅威の動向をキャッチアップした最新のリスク対策を、"サービス"としてタイムリーに調達して適用できます」と伊能氏も大きな手応えを掴んでいる。
同社はIIJとのパートナーシップを更に深めつつ、今回のプロジェクトで実証されたクラウド活用のアプローチを、将来的にグローバルにも展開していく考えだ。
※ 本記事は2015年3月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。
ただし、2023年の社名変更に伴い、社名とお客様プロフィールのみ変更しております。