株式会社 共和電業 様
計測データのクラウド可視化サービスを事業化
設計の自由度と信頼性を備えたIIJの基盤が挑戦を支える
Topics
導入前の課題
選定の決め手
自社ブランドのサービスを「自分たちの手で作り込める」基盤を求めて
「KYOWA CLOUD FIELD」のシステム構成について教えてください。
高橋氏
本サービスは、共和電業の計測技術とIIJのクラウド基盤を融合した「計測監視プラットフォーム」です。バックエンドには、IIJのクラウドサービス「IIJ GIO」上に自社設計のAPIを構築し、多種多様なセンサーからの計測データを受け入れる仕組みを実現しました。自社製品だけでなく、他社製品のデータも一元管理できます。フロントエンドの可視化基盤には、IIJが提供する産業IoT向けプラットフォーム「WISE-PaaS」を採用しています。ブラウザ上でダッシュボードを自由にカスタマイズでき、異常検知時にはアラートメールを自動送信する機能も備えています。更に、データベースやプログラミングの知識がなくてもすぐにデータを確認できる「デフォルトダッシュボード」を自社で作り込み、導入後すぐに使える直感的な操作感を実現しました。
どのような用途で利用されているのでしょうか。
齋藤氏
主な用途は、インフラ構造物や産業設備の遠隔監視・長期モニタリングです。ダムや橋梁の健全性監視、地滑り監視、河川の水位監視といった現場で活用されています。例えば、弊社は長年、ダム堤体の漏水量やたわみ計測などの観測システムにおいて、これまで実績を重ねてきました。この確かな技術をクラウド化することで、現場に足を運ぶことなく、遠隔監視を実現。慢性的な人材不足の解消だけでなく、異常の早期発見や管理業務の劇的な効率化をお客様に提供できると考えています。
パートナー企業の選定にあたり、IIJを選んだ決め手を教えてください。
高橋氏
大きく3つあります。1つ目は、設計の自由度です。他社のサービスでは、バックエンド側のAPIを自社構築できないなどの制約がありました。IIJであれば、クラウドサーバ上に独自のAPIを自由に設計でき、フロントエンドの「WISE-PaaS」も表示形式などの制約が少ないため、私たちが目指していたモダンで洗練されたUIを独自に作り込めました。共和電業のブランドとしてサービスを世に出す以上、ここは譲れないポイントでした。2つ目は、フロントエンドからバックエンドまでをセキュアに一貫構築できる点です。「WISE-PaaS」とクラウドサーバの両方がIIJの基盤上にあるため、フロントとバックエンドの間をセキュアな内部通信で完結させられました。3つ目は、IIJ自社のデータセンターで運用されている信頼性です。インフラからアプリケーション基盤まで一貫して提供されており、計測というデータの正確性と継続性が求められる分野において、エンドユーザに自信を持って提供できる安心感がありました。
導入後の効果
安定稼働とスピーディな提案を実現し、サービス拡張に注力できる体制へ
導入後の効果について教えてください。
高橋氏
リリース以降、インフラ起因の大きなトラブルはなく、24時間365日の安定稼働を実現しています。自社運用時代に懸念していたインフラコストの肥大化や保守工数も、インフラの運用・保守をIIJに委ねたことで最適化されました。インフラの維持に追われることなく、サービスの拡張や改善にリソースを集中できるようになったことが大きな変化です。また、お客様への提案のスピードも大きく変わりました。以前は特注で一つ一つ詳細を詰めていましたが、現在は「WISE-PaaS」の基本機能を活用して「こういう形のものが作れますが、いかがでしょうか」と素早く提示できます。新しい計測ニーズに対しても、まずデータを登録して可視化してみるといった迅速な試作が容易になり、現場の要望にスピード感を持って応えられるようになりました。
IIJのサポート体制はいかがでしたか。
高橋氏
「WISE-PaaS」は高度な柔軟性を持つ反面、使いこなすには深い知見が必要です。細かな仕様や実装方法について、IIJには常に詳細かつ丁寧な回答をいただきました。自由度の高い基盤を自分たちの手で作り込みながら、行き詰まった際にはプロフェッショナルの知見を借りるという、理想的な協力体制を築けました。現在も共有のQAシートを通じて、要望や不具合の報告を随時行っています。すでに200件近くやり取りしている中でも、一つ一つ丁寧にご対応いただいており、大変ありがたく感じています。今後もこの関係を継続できればと考えています。
最後に、今後の展望をお聞かせください。
吉澤氏
まずは対応機器の拡張です。弊社には様々な種類の計測器がありますが、現時点ではまだその一部しかクラウドに対応できていません。対応機器を増やし、より広い範囲の計測を支援していきたいと考えています。その先には、データの解析との連携があります。弊社は解析ソフトも提供しており、クラウド上のデータと連携したサービス展開を検討しています。データの収集・可視化にとどまらず、蓄積されたデータの分析を通じて、お客様に新たな価値を創出することを目指しています。
齋藤氏
本事業は3年間のフェーズで形にしていく計画です。1年目にあたる初年度(2025年度)は、運用システムの確立に注力しました。これから迎える2年目は、社内外の認知度を高めるフェーズです。営業も含め、積極的にデモを行い、お客様にサービスの価値を知っていただく活動を推進します。そして3年目には、事業として確実に成果が出せるように進めていきたいと考えています。
導入したサービス・ソリューション
お客様プロフィール
株式会社 共和電業
本社:東京都調布市調布ヶ丘3-5-1
設立:1949年6月
資本金:17億2,399万円
従業員数:541名(男445名 女96名)
※ 本記事は2026年3月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。

クラウドサービスの事業化に挑む―「モノ売り」に「コト売り」を組み合わせたビジネスモデルへ
貴社の事業概要について教えてください。
共和電業 吉澤幸真氏
弊社は「ひずみゲージ」をコア技術とした計測機器メーカーです。ひずみゲージとは、物体の表面に接着し、微小な伸び縮み(ひずみ)を電気抵抗の変化として測定するセンサーです。弊社は1951年に日本で初めてひずみゲージの商品化に成功して以来、この技術を応用した各種センサーの製造・販売、計測コンサルティング、保守・校正サービスまでを一貫して提供してきました。自動車や産業機械、道路・鉄道・橋梁・ダムなどの社会インフラ、更には航空宇宙分野まで、幅広い分野でご活用いただいています。
技術本部 商品企画部 クラウドサービスチーム 課長
吉澤幸真氏
2025年4月に計測データのクラウド監視サービス「KYOWA CLOUD FIELD」をリリースされました。その経緯を教えてください。
共和電業 高橋慶多氏
弊社はセンサーに加え、信号を記録する測定器やデータロガー、更にデータの集録・解析を行うソフトウェアまでを自社で提供してきました。「KYOWA CLOUD FIELD」は、クラウドを活用して測定データをどこからでも可視化・監視できるようにするサービスです。以前からお客様の要望に応じて特注でクラウドサービスを提供していましたが、今回それを標準化し、広くお客様にご利用いただける形で本格的に事業化しました。
技術本部 商品企画部 クラウドサービスチーム 副主査
高橋慶多氏
共和電業 齋藤隆宏氏
データの計測から可視化までのサービスを一貫して提供してきた弊社にとって、クラウドでの可視化はある意味自然な流れでした。お客様からも「共和電業さん、IoTはやらないの?」という声をいただくことが増え、社内に「クラウドサービスチーム」を新設して本格的に着手しました。弊社は創業以来、センサーや測定器といった「モノ」の販売を中心に成長してきましたが、今回目指したのは、従来のハードウェア販売に、継続的な収益を生むサブスクリプションを組み合わせた新しいビジネスモデルです。これは弊社のビジネスにとって大きな転換点でもあります。
技術本部 副本部長 商品企画部 兼 未来商品開発部 部長
齋藤隆宏氏
クラウドサービスの事業化にあたって、どのような課題がありましたか?
吉澤氏
技術面での最大の挑戦は、将来の拡張性を見据えた「デバイスフリーな独自APIの設計と構築」です。特定のセンサーや機器に依存しない、汎用的なデータの受け入れ口を自社で設計する必要がありました。また、UI/UXの刷新も大きな課題でした。それまでは案件ごとに個別対応していたため統一感が乏しく、共和電業ブランドとして洗練された操作性を実現することが求められていました。
パートナー企業に求めた要件は何でしたか。
高橋氏
1つは、自由度の高い開発基盤です。特定のパッケージ機能に依存するのではなく、自社製品だけでなく他社製品にも対応できるAPIを、自分たちの手で柔軟に設計・構築できる環境を求めていました。もう1つは、信頼性の高いデータ基盤とアプリケーション基盤です。計測データを安全に蓄積でき、ユーザにストレスなく可視化サービスを提供できる安定した基盤であることが重要でした。