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インターネット・トリビア ITの仕事と資格

IIJ.news Vol.194 June 2026

執筆者プロフィール

IIJ 広報部 技術統括部長

堂前 清隆

IIJの技術広報担当として、技術Blogの執筆・YouTube動画の作成・講演活動などを行っています。これまでWebサイト・ケータイサイトの開発、コンテナ型データセンターの研究、スマホ・モバイル技術の調査などをやってきました。ネットワークやセキュリティを含め、インターネット全般の話題を取り扱っています。

情報処理推進機構(IPA)が実施する日本の国家試験「情報処理技術者試験」が大幅に改定されるという発表がありました。改定後の概要についてはまだ発表されていませんが、ITに関わる方が多く受験する試験なので、動向が気になる方も多いのではないでしょうか。

情報処理技術者試験には、ITの利用者として、基礎的な知識を保有していることを示す「 ITパスポート」「情報セキュリティマネジメント」試験と、ITの専門家として、ITシステムの企画・開発・運用を想定した「基本情報処理技術者」「ネットワークスペシャリスト」などの試験があります。検討中の改定では、IT利用者を対象として、AIを想定したデータ活用能力の試験を追加することと、ITの専門家を対象としていた「応用」「高度」レベルの試験を再編することが、おもな変更点とされています。特に「応用」「高度」については、これまで9つあった試験を3領域に再編するという大きな変更が想定されており、受験を考えていた人にとっては重大な関心事となっています。

このように注目を集めている情報処理技術者試験ですが、実はIT関連の業務に不可欠な「資格」を得るためのものではありません。実際、日本のITの現場では情報処理技術者試験に合格していないエンジニアも多数活動しています。この点は、医師国家試験や司法試験などとは位置づけが異なります。医師国家試験や司法試験は、試験に合格して所定の手続きを経ることで、「医師」「弁護士」と名乗り、医療行為や法律事務を行なうことができます。これは「名称独占」「業務独占」が法律で規定されているためで、資格なく名乗ったり、業務を行なったりすると罰せられます。

一方、情報処理技術者試験で扱われるIT関連の業務は「業務独占」の規定がないので、資格の有無に関係なく業務を行なうことができます。なお、高度試験のひとつである情報処理安全確保支援士試験に合格して登録手続きを行なうと「情報処理安全確保支援士」という国家資格が得られます。こちらは「名称独占」が法律で規定されており、資格なく支援士を名乗ることはできません。ただ、「業務独占」の規定はないので、試験に合格していない人が情報セキュリティ関連の業務を行なっても問題はありません。

さて、ここからはもう少し広くITの現場を見てみましょう。現在のITに不可欠な通信、特に多くの利用者に影響をおよぼす可能性のある大規模な電気通信事業者の設備については、有資格者による工事の実施・監督が必要です。

電気通信事業者自身の設備は、電気通信主任技術者試験の合格者のなかから事業場ごとに電気通信主任技術者が選任され、主任技術者の監督のもと工事が行なわれます。また、電気通信事業者の設備に接続される利用者側の設備の「工事」も、工事担任者試験の合格者が実施・監督しなければならないとされています。

実は、通信を利用する企業が、インターネットに接続するためにルータを設置して、通信会社の光ファイバに接続するのも「工事」にあたり、法律の適用対象になります。こう聞くと驚かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、この規定には「プラグジャック方式等で接続する場合は資格不要」という但し書きがあります。ほとんどのケースでは、電気通信事業者から派遣された工事担当者がONUなどの「ジャック」を備えた機器を設置して、「プラグ」が付いたケーブルを差し込むかたちになっているため、利用者が有資格者を手配する必要はありません。

このように、ITの現場では「資格なし」で携わることができる業務も多く、高い能力を持っている人でも試験には興味がない、ということもままあります。ですが、試験にチャレンジすることで、普段はあまり注意していないことを改めて学習できるかもしれません。この機会に受験を検討されてはいかがでしょうか。


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