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IIJ.news Vol.194 June 2026

脱炭素社会の実現が急務となるなか、IIJのデータセンターは、エネルギー効率の向上に継続的に取り組むと同時に、広域電力供給網の活用や地域行政との協調を通して、社会全体の脱炭素化に寄与するインフラとして機能している。
IIJ ネットワークサービス事業本部 基盤エンジニアリング本部 エンジニアリング事業推進部 企画開発課長
堤 優介
IT機器を集約して運用するデータセンターは、拠点ごとに個別運用する場合に比べて、エネルギーをより効率的に利用できる形態と言えます。他方、需要の急増やIT機器の高密度化により、データセンターの消費電力量は増え続けています。デジタル領域が拡張するなか、「脱炭素化」をどのように実現していくのか? この問いは、今やデータセンターにとって避けて通れないものとなっています。
本稿では、省エネ技術や再生可能エネルギー(以下、再エネ)の利用拡大に加え、蓄電池を活用したエネルギーマネジメントを実装し、脱炭素化にどう向き合っているのかという観点から、IIJデータセンターの取り組みを紹介します。

データセンターは、デジタルインフラとして私たちの生活に欠かせない存在ですが、多くの電力を消費する施設でもあります。そのため、投資家や利用者からは、安定した運用に加え、環境への配慮やエネルギー効率の向上が強く求められています。
近年は、企業に対して気候変動への対応や温室効果ガス排出量の開示を求める動きが広がっており、改正省エネ法のもとでは、 PUE*1を指標としたエネルギー効率の改善も制度面から求められています。こうした流れを受け、IIJはデータセンターを環境対策の重点領域に位置づけ、「再エネ利用の拡大」と「エネルギー効率の向上」を目標に掲げて、対応を進めています。(下表)
取り組み目標と実績(TCFD提言にもとづく情報開示)
IIJは、エネルギー効率の向上に従来から継続的に取り組んできました。外気を活用した冷却方式(図1)や、電力損失を抑える三相4線式配電方式の採用など、設備と運用の両面から効率化を積み重ねています。その結果、電力使用効率を示すPUEは、政府が2030年度の目標水準として掲げる1.4を下回る1.3台を達成しています。

図1 白井データセンターキャンパスの外気冷却空調
省エネ施策に加えて、再エネ利用の拡大にも注力しています。データセンター建屋の屋根を活用した太陽光発電による自家消費(写真)や、非化石証書の直接調達を進め、松江データセンターパークでは再エネ利用率100%の運用を実現しています。

オンサイト型太陽光発電設備(松江DCP)
もう一つの特徴が、蓄電池を活用したエネルギーマネージメントです。データセンターには、停電時にもサービスを止めないためのバックアップ電源としてUPS用蓄電池が設置されています。(図2)

図2 データセンターの電気設備構成とリチウムイオン蓄電池による給電イメージ
IIJはこの蓄電池を大容量化すると同時に、充放電を高度に制御することで、非常時だけでなく平常時から「エネルギーを賢く使う」ための資源として活用しています。白井データセンターキャンパスでは、2020年夏季の年間ピーク日において、データセンター全体の電力需要に対し約11%のピークカット効果を実測しました。(図3)

図3 データセンターの電力需要とピークカット/ピークシフト
また2022年からは、電力使用抑制の要請に応じて報酬を得るVPP(バーチャルパワープラント)にも取り組んでいます。
さらに松江データセンターパークでは、環境省の公募事業「脱炭素先行地域」に選定された松江市の共同提案者として、蓄電池の電力を地域の非常時電源として活用する計画に参画しており、データセンター設備が、地域の防災力やレジリエンス向上にも貢献する事例となっています。
環境対策は「コスト」と思われがちですが、追加コストを投じて目標を達成するだけの取り組みでは、事業の持続可能性という観点から不十分です。重要なのは、環境対策によって得られる設備や仕組みを、利用者への新たな価値や、社会に還元できるモデルとして構築・提供し、普及させていくことだとIIJは考えています。
IIJが実装した蓄電池を活用したエネルギーマネージメントは、電力コストの最適化という直接的なメリットに加え、天候などによって変動しやすい再エネ電力を効率的に活用することを可能にします。これは、電力系統の安定化や再エネ導入の拡大にも寄与する取り組みであり、環境対策を新たな価値創出として捉え直す機会になっています。
これまでの環境対策は、施設内で完結する施策が中心でしたが、今回ご紹介した取り組みでは、データセンターが電力系統や地域と協調し、社会全体の脱炭素化を支えるインフラとして機能しています。
近年は、GPUサーバなど高消費電力の計算資源の急増を背景に、「電力をどこで確保するか」だけでなく、「データ処理をどこで、どのように実行・制御するのか」という観点から、データセンターの立地や処理配置の最適化が重要な論点になっています。電力と情報通信を一体で最適化する「ワット・ビット連携」の実現に向けては、政府から「データセンターの地方分散・高度化の推進」として「蓄電池等との一体運用」や「高度なワークロードシフトの技術開発」*2が示され、IIJも蓄電システムとコンテナデータセンターを活用した協業検討*3を発表しました。
IIJでは、ハイパースケールデータセンターに加え、コンテナ型やエッジデータセンターの開発も進めています。地域電源との連携など、分散処理・分散ネットワークのユースケースの創出を通して、ワット・ビット連携の実現を目指しています。
データセンターは、単に電力を消費するだけの施設ではなく、脱炭素社会の実現を支えるエネルギーインフラへと進化していくことが期待されています。データセンターの環境対策に単独で取り組むのではなく、 AI需要への対応、地域分散、災害時のレジリエンス強化などと組み合わせて、デジタルインフラ全体の最適化を追究していきます。
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