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IIJ.news Vol.194 June 2026

継続的な技術開発と実証実験の積み重ねによって進化・発展してきたIIJデータセンターの軌跡を振り返ったうえで、今後の事業展開について述べる。
IIJ ネットワークサービス事業本部 基盤エンジニアリング本部 データセンターサービス部長
橋本 明大
IIJのデータセンターは、自社サービス向けインフラと顧客向けデータセンターサービスの双方を組み合わせ、設計・構築から運用まで一貫して提供しています。2000年代に入ると、他社データセンターを活用した「DC in DC」モデルにより事業を拡大し、顧客ラックをデータセンター構内回線に接続するだけで、 IIJの高速・大容量バックボーンに直結できる環境を実現しました。これにより、安定したネットワーク基盤を提供し、ビジネスの拡大を支えてきました。
2011年4月、島根県松江市に「松江データセンターパーク(松江DCP)」を開設し、ITモジュール「IZmo(イズモ)」と、外気冷却型「空調モジュール」を組み合わせたモジュール型データセンターを本格展開しました。外気活用による空調動力の削減と、モジュール(コンテナ)による段階増設・分散配置を両立させ、環境配慮とスケールアウトを前提とした競争力のあるクラウド基盤の確立を目指しました。松江DCPの地域性を生かした省エネ運用と、拡張性・可搬性を重視した設計思想は、その後の運用・開発に継承され、近年のコンテナ型データセンターの再注目や、高密度・短納期で拡張が求められるAI基盤のような領域における先行事例となっています。
IZmoは用途・コスト要件に応じて2タイプを導入しました。ビル型データセンターの設計思想を踏襲し、運用・保守性を重視した「IZmo/W」と、サーバラックの傾斜配置により大型トラック輸送を前提としたサイズとし、製造・輸送コストを抑えてコスト効率を高めた「IZmo/S」です*1。コンテナ空間での集中冷却により高効率な熱処理を実現し、1ラック実効10kW、1コンテナ実効90kVAを実装可能にしました。さらに超高感度煙検知器、窒素ガス消火設備、二系統受電対応分電盤などをコンパクトに集約配置し、ビル型と同等のファシリティ機能を備えています。
空調モジュールは「2008 ASHRAE*2 handbook」の推奨温湿度条件を満たすべく、外気と室外機を自動制御し、外気状態に応じて「外気運転」「混合運転」「循環運転」を切り替えます。外気運転・混合運転時は室外機を停止できるため空調消費電力を大幅に低減し、高効率設備データセンターのPUE*3が1.6程度とされるなか、松江DCPでは1.2台の低PUEを継続的に達成しています。
2013年11月には隣接地に同規模のサイト2を開設するとともに、間接外気冷却方式の「co-IZmo/I(コイズモアイ)」をリリースし、省エネ性能を維持しながら、外気の空気質に依存しないよう設置条件の適用範囲を拡大し、順次導入を進めました。さらに2025年6月にはサイト1でシステムモジュール棟の運用を開始しています。
| 2011年 4月 | サイト1運用開始:コンテナ型DC「IZmo」稼働 |
|---|---|
| 2013年 11月 | サイト2運用開始:コンテナ型DC「IZmo」稼働 |
| 2018年 1月 | サイト2でコンテナ型DC「co-IZmo/I」稼働 |
| 2022年 2月 | 実質再生可能エネルギー由来の電力を導入 |
| 2023年 3月 | 太陽光発電設備を導入 |
| 2025年 6月 | サイト1で「システムモジュール棟」稼働 |

| オールインワン パッケージ |
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|---|---|
| 間接外気冷却方式 |
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| 連結拡張 |
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co-IZmo/Iは、海外展開も行なっています。2014年、経済産業省「平成26年度 地球温暖化対策技術普及等推進事業」として、ラオス人民民主共和国でのコンテナ型データセンター導入によるJCMプロジェクト実現可能性調査を受託し、co-IZmo/Iが実証事業に採用され、2016年にはラオス・ビエンチャンにおいて環境配慮型の国営データセンターが開設されました。
2023年にはウズベキスタン国営通信事業者ウズベクテレコムから「通信インフラ発展プロジェクト」を受注し、co-IZmo/Iの提供、クラウドプラットフォーム構築、運用担当者への教育・技術支援などを通じて、同国における持続可能なデジタルインフラの発展に貢献しています。co-IZmo/Iは順次納入され、今後、本格稼働する予定です。
技術開発・実証実験も継続してきました。2012年には「煙突効果」を活用したサーバ冷却の適用可能性を検証し、煙突の高さ・負荷容量の増加に応じて風量が増すことが確認されました。サーバ室側面から外気を取り入れ、熱を建物上部から排気する構成により送風ファンを補助できる可能性を示し、PUEを1.0に近づけ得る省エネ余地を見出しました*4。この知見は、後述する白井データセンターキャンパス(白井DCC)のシステムモジュール仕様にも反映されています。
2017年には「液浸冷却」を商用運用のライフサイクル全体で検証し、空冷比で消費電力を20%以上削減し、スペース効率は6倍以上の向上を確認する一方、蒸散による気密性や液切り待ちなどの運用課題も明確化しました。
生成AI普及によりGPUの高密度実装の要請が高まる現在、液浸冷却は有力な選択肢の一つですが、設備・運用要件や適用制約を踏まえて、空冷高度化や直接液冷などを含む複数方式から負荷密度と運用モデルに応じて選定する必要があります。
2019年5月1日千葉県白井市に白井DCCを開設しました。白井DCCはIIJの次世代基盤としてクラウド、ネットワークサービスを支える大規模データセンターであり、松江DCPの知見を継承しつつ拡張を進め、現在は三期棟を構築中です。設備・運用の標準化とモジュール化により、短納期での増設と安定運用の両立を図っています。三期棟はAI/GPU用の高密度ラックの需要増に対して、冷却方式を単一に固定せず、空冷の高度化と液冷(直接液冷など)を含む複数方式を要件に応じて選定・適用する方針をとっています。
白井DCCは、データセンター技術を中心としたIIJの関連技術の検証・高度化を担う拠点でもあります。
2020年11月には、同敷地内に「白井ワイヤレスキャンパス」を開設し、ローカル5GやプライベートLTE(sXGP)などの無線技術を集約して、デモ・評価、メーカの相互接続試験や共同実証の場を提供しています。
2021年10月、白井DCC敷地内にマイクロデータセンター(以下、 MDC)を屋外設置し、エッジコンピューティング基盤としての実用化に向けた技術検証を開始しました。設備性能および遠隔監視・運用スキームの検証を経て、同年11月にはエッジデータセンターソリューション「DX edge」の提供も始まりました。
DX edgeは、屋内外を問わず設置可能な柔軟性と拡張性を備え、電力・冷却・セキュリティおよびリモート運用機能を一体化したMDCで、空調・給電の冗長化やUPS (無停電電源装置)により、高い信頼性を確保するとともに、サーバやストレージを含めたターンキー提供が可能です。
2026年3月、 AI用途のGPU搭載サーバにも対応できるマイクロデータセンター「DX edge Cool Cube」をリリースしました。受電用キュービクルをベースとした完結型モジュール設計を採用し、1モジュールあたり20kW以上の電力供給能力と、それに対応したサーバ冷却性能を備えています。需要に応じてモジュールを連結できる構成にすることで、効率的な投資と無駄のない段階的な導入が可能です。
2026年には「超高効率AI計算基盤の研究開発」に取り組みます。白井DCCの敷地内において、co-IZmo/Iをベースに水冷冷却設備を追加したAI計算基盤対応の高密度コンテナ型データセンターを設置し(2026年2月)、これを実証環境として基盤技術に関する研究開発を推進します。具体的には、実用化に向けて経済性・継続性・即応性を備えたデータセンターのリファレンスモデルを整理するとともに、高発熱IT機器に対応する空冷技術と水冷技術を組み合わせたハイブリッド冷却方式を確立し、さらにはAI計算基盤に適した省エネルギー評価指標および評価手法の策定を進めます。これらの取り組みを通じて、 AI関連事業の拡大に必要な技術を着実に蓄積し、同分野におけるインフラビジネスの展開を目指していきます。

白井DCC敷地内に設置された屋外設置型12Uモデルのマイクロデータセンター
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