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IIJ.news Vol.192 February 2026


IIJ 広報部 技術統括部長
堂前 清隆
IIJの技術広報担当として、技術Blogの執筆・YouTube動画の作成・講演活動などを行っています。これまでWebサイト・ケータイサイトの開発、コンテナ型データセンターの研究、スマホ・モバイル技術の調査などをやってきました。ネットワークやセキュリティを含め、インターネット全般の話題を取り扱っています。
ここ1年ほど、データセンター、特にAIを意識したGPU設置用のデータセンターとして、コンテナ型データセンター(コンテナDC)が注目されています。一般的なデータセンターがビル型の建物として設置されるのに対し、コンテナDCは屋外や簡素な屋根の下に金属製の箱を設置し、サーバなどの機器を格納する部屋として利用します。
現在のコンテナDCと類似する設備としては、1990年代からNTTが各地に設置したRT-BOX(Remote Terminal BOX)があります。これは、電話交換機が設置されたビルから遠く離れた場所に、交換設備の一部を設置するために用いられる箱状の設備です。通信の需要があまり大きくない地域に低コストで設置するために考案されたと言われています。また、2000年前後には、IIJが設立したクロスウェイブコミュニケーションズ(当時)が全国に通信網を張り巡らせるにあたり、光ファイバを接続する機器を各地に展開するために海運用のコンテナを改造した設備を設置しました。短期間でコストを抑えながら全国にネットワークを構築しなければならないという要請に対し、工場で機器を搭載したコンテナをトレーラーで運んで現地に設置することで、工期短縮を図るというアイデアでした。
しかし、通信機器の設置を前提とした設備は、設備内で利用できる電力があまり大きくないなど、現在のコンテナDCとは設計方針がやや異なります。これに対し、2007年にサン・マイクロシステムズが発表したProject Blackboxは、大量のサーバを設置することを前提とし、大きな電力に対応できるようにした点で、現在のコンテナDCの嚆矢と言えるでしょう。それ以降、さまざまなコンテナDCが開発されるようになりました。これらのコンテナDCは、大がかりな建設工事を必要としないことによる初期コストの低減や、新設時・増設時の工期短縮が利点として挙げられます。
一方、コンテナDCはビル型と異なり、スペースに限りがあるため、多様な機器を設置し、頻繁に現地メンテナンスを行なうといった利用には適しません。しかし、2010年頃から立ち上がったクラウド向けのインフラは、画一的な機器が利用され、仮想化技術により遠隔から管理可能で、これがコンテナDCの特徴と整合しました。米国でもクラウド系事業者や自社で大規模なクラウド的設備を運用する事業者がコンテナDCの利用を進めています。また、日本初の商用コンテナDCとして2011年に運用開始したIIJ松江データセンターパークも、クラウド向けのインフラがおもな用途でした。
ところが、クラウドの需要が急増した結果、コンテナDCではなくビル型への回帰が起こりました。1つのコンテナDCに設置できる機器の数はビル型DCのフロアよりも少なく、また、複数コンテナを設置した場合の床面積に対する設置効率も、ビル型より低くなるためです。つまり、クラウドで利用する機器の規模が大きくなると、コンテナを逐次増設するより、ビルを建ててしまったほうが効率がいいということになったのです。
こうした流れから、コンテナDCの利用は下火になるかと思われましたが、そこに登場したのが、冒頭で述べたGPU需要です。GPUを搭載したサーバは、従来のサーバと比べると非常に消費電力が大きく、これまで以上に大きな電力や高い発熱に対応できるデータセンターが必要です。しかも、急速なAI需要の立ち上がりに対応するために、こうした仕様のデータセンターを至急確保する必要が生じました。このような需要には、短期間で構築可能なコンテナDCが適しています。GPUを扱う事業者のなかには、既存のデータセンターの敷地内にGPU専用の設備としてコンテナDCを設置しているケースもあります。
GPU需要に対応したコンテナDCは、今後しばらくは増えると思われますが、長期的には大電力・高発熱に対応する新設計のデータセンターに吸収されていくのではないかと考えています。コンテナDCは、大きな技術革新に対応する途上の、乱世のインフラなのかもしれません。
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