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IoTで足場固め IoTが描く新しい産業の地図

IIJ.news Vol.192 February 2026

村田製作所は、IIJとの協業を通して、アセアン地域において「IoTデータの販売事業」を展開している。
本稿では、交通渋滞の解消や都市計画の実現、さらにその先に広がる「データビジネス」への展望などについて紹介する。

執筆者プロフィール

株式会社村田製作所
IoT事業推進部
プロジェクトマネージャー

津守 宏晃 氏

1996年、株式会社村田製作所入社。2000年から4年間、Murata Electronics North America Inc., Chicago Officeに駐在。帰国後、06年より事業部内に新規事業開発課を立ち上げるが、1年で消滅。その後、本社企画、本社人事、San Jose Officeを経て、19年に交通量データビジネスを、21年にスポットコンサルティングビジネスを、それぞれ立ち上げ、その他にも新規事業の立ち上げを支援する。

IoTが描く新しい産業の地図

筆者は村田製作所でIoTデータの販売事業を担当しています。具体的には、アセアン地域で行政向けに交通量のリアルタイムデータを提供し、インドネシアのジャカルタなどで渋滞解消に取り組んでいます。

IoTは製造業だけでなく、社会インフラの分野でも急速に広がり、データ活用が新しい価値を生む時代が訪れています。産業IoTとインフラ系IoTは異なる領域ですが、データを活用するうえで重要な要素は共通しています。それは「どのタイミングで、どのようにデータを使うか」という点です。アセアン地域では、急速な都市化にともない交通渋滞や交通安全の課題が深刻化しています。こうした社会課題に対し、当社はIoTデータを活用することで、都市の効率化と安全性向上に寄与しています。さらに、当社の取り組みはIoTデータを直接販売し、収益を得るという新しいビジネスモデルを実現しています。

現場から始まるIoTの進化

現在、ジャカルタ向けに提供している交通量データは、統計情報として道路パフォーマンスをスコア化し、スコアの低い箇所から改善策を実行する用途が中心です。例えば、主要交差点ごとの混雑度を数値化し、行政が優先的に改善すべきエリアを判断する材料としています。今後、信号制御などリアルタイム性の高いアプリケーションに発展させ、渋滞緩和を実現する取り組みを顧客と進めています。これはデータ活用の高度化に向けた大きな一歩です。

インドネシアの事例では、インフラでありながらシステム運用を現地パートナー企業が担い、行政には取得したデータのみを販売するモデルを採用しました。販売方法はダッシュボード閲覧権とAPI提供です。行政はシステム運用を行なう必要がないため、本来の課題である渋滞解消にリソースを集中できます。また、運用ノウハウを地方行政とも共有できるため、国全体をカバーするサービスとして展開可能です。さらに、インドネシア政府が購買科目として登録することで、フェアトレードを担保しました。実際、カメラシステムを導入した行政が運用に苦労し、当社サービスに切り替えるケースも増えています。システム運用のためのリソースを新たに増やすことなく、交通情報を取得できる環境が実現しています。

タイでは、商用車ドライバーのアルコールチェック義務化に対応するため、TRAC(Transport Risk Assessment Cloud)サービスをクラウド型で提供しました。ここで重要だったのは、PDPA(個人情報保護法)への対応です。タイ国内にローカルクラウドを設置し、データ保護責任者(DPO)を配置することで、法令遵守を徹底しました。さらに、サーバ設計段階からデータ販売を見越した構成を採用し、将来的なビジネスモデルの基盤を整えています。この取り組みにより、交通安全対策の強化と法令遵守支援という新しい価値が生まれています。海外から着手した理由は、日本市場では規制や調整に時間がかかる一方、アセアン地域では交通課題が顕在化しており、スピード感を持って導入できる環境が整っていたためです。

ジャカルタの交通データを可視化するJKT Dashboard。行政向けに提供している交通量データのダッシュボード画面。主要交差点の混雑度や道路パフォーマンスをリアルタイムに表示し、都市計画や渋滞緩和の判断材料として活用されている。

ジャカルタ交通局の職員がダッシュボードを実際に使用している様子。交通状況をリアルタイムに監視し、渋滞緩和や信号制御の判断に活用されている。

データが生む新しい価値

交通データは単なる計測情報にとどまらず、都市計画や渋滞緩和に活用できる貴重な資産です。当社は現地パートナーがデータ販売を担える仕組みを設計し、他国にも展開できるよう、ライセンス化や収益分配モデルを推進しています。

顧客である政府がもっとも重視するのは、データの所有権とプライバシー保護です。このため、クラウド構成や契約スキームを工夫し、データの取り扱いに関する透明性を確保しました。さらに、データ越境に関する要件にも対応し、各国の法規制に沿った運用を実現しています。データの安全性を民間が担保し、資産であるインフラデータを行政が活用するモデルを構築しています。

こうした仕組みは、IIJが提供するクラウドやネットワークサービスとの親和性が高く、今後の協業にも期待しています。IIJの強みであるセキュアな通信基盤と組み合わせることで、データ流通の信頼性をさらに高めることができます。

広がる可能性、越えるべき壁

海外展開では、PDPAやGDPRなど各国の規制対応が不可欠であり、セキュリティとプライバシー保護を両立させながら、データ流通の仕組みを整えることが課題です。当社は、これまでの知見やサーバ設計ノウハウを活かし、他のIoTサービスにも適用できるプラットフォーム化を進めています。IIJとの協業により、交通データを安全に流通させる基盤を構築し、都市や企業がデータを活用できる環境を整えることが、次のステージです。

データ活用の可能性は、単なる渋滞解消にとどまりません。将来的には、都市全体をデジタルツインとして再現し、シミュレーションにより最適化させるスマートシティ構想にもつながります。こうした高度な取り組みを実現するためには、信頼性の高い通信基盤とセキュアなクラウド環境が不可欠です。IIJとの協業を通してこの基盤が強化され、データ流通の標準化やプラットフォーム化を進めていきたいと考えています。さらに、アジアで培ったモデルを他地域に展開することで、グローバルな交通課題の解決に貢献できると期待しています。

IoTのその先へ

IoTは単なるセンサ導入にとどまらず、データを活用したビジネスモデルへと進化しています。村田製作所は、海外事例で得た知見をもとに、データビジネスの可能性を広げていきます。IIJとの協業によるプラットフォーム化は、その未来を加速させる鍵になるでしょう。


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