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IIJ.news Vol.192 February 2026

株式会社インターネットイニシアティブ
代表取締役 会長執行役員 鈴木幸一
「いずれ、新聞のテレビの番組表など、利用のしようがないほど、視聴できるコンテンツのプログラムが増えてしまう時代が来る。時間の制約がないほどにコンテンツが溢れても、それを受信することが可能になる、テレビといった放送形態がインターネットによって、まったく違った形になる」。
1994年、米国でネット放送を先取りして、そのインフラを整備するというベンチャー企業に投資をしたことがあった。企業規模に比して、構想が大きすぎて、案の定、資金が足りなくなり、1995年には、マイクロソフトに売却してしまった記憶がある。
IIJを創業して、かなり時間を経た後、当時の郵政省から認可を得ることができ、インターネット接続サービスを始めることになって間もない頃である。シアトルまで飛んでマイクロソフトに協業を持ちかけたことがあった。「インターネットがまったく異なった世界を作るということは理解できるけれど、接続事業については、高度な技術が重要な割に、事業においてどのように競争の壁を作るのかクリアーではない」との指摘で、持ちかけたアライアンスに乗ってくれなかった。同じ年に、ウィンドウズ95が爆発的な売れ行きとなると、IIJが投資した「将来はネットによって、放送に代替する配信事業を作ると宣言していた」貧しい企業も買収してくれた。出資をしていたIIJは損失を免れたのだが、今となっては、将来を読むことはできたが、肝心の資金の当てがなかった当時のIIJのことを思い出す。残念だったといえば、残念だったのだが。
「日本には類似企業がないので」、証券会社のそんな言葉を聞いて、1999年にニューヨークのナスダック市場に株式を公開した後、本社も「米国に移したほうが」、そんな思いを持ったのだが、日本企業のまま2026年を迎える。
次回のサッカーのワールドカップに出場する国の数が48カ国と史上最多になるそうだ。ネットによる中継が主流になる時代、試合の実況中継も番組表に収まる範囲のテレビと違って、ネットなら、視聴者がいる限り、試合の中継が可能な時代になったわけで、出場国は増える一方である。また、ミラノ・コルチナ・ダンペッツォでは冬季オリンピックが開催されるが、かつて猪谷千春がスキーの回転競技で銀メダルに輝いた同じ場所で開催される冬季オリンピックの競技種目を見ると、いつからこんな競技が始まったのかと、年寄りには訝しく思えるほど、無数の競技が開催される。ネット中継なら、放送時間に際限がなく、見る気になればほとんどの競技を眺めることができる。変われば変わるものである。
新聞社や放送局は、なぜこれほどの競技が可能になったのか、ワールドカップの参加国が増えたのかについて、興味ある記事を出していない。今更だが、巨大な技術革新は、すべてを変えてしまうのである。
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