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イノベーションで振り返る30年 TOPIC 1 データセンター(DC)

IIJ.news Vol.173 December 2022

IIJは1990年代からデータセンター(DC)サービスを開始し、2011年にはクラウド専用の「松江データセンターパーク」を、19年には「白井データセンターキャンパス」を開設した。
本稿では、サービス提供の要となるデータセンター事業の成長過程を振り返る。

プロフィール

IIJ 基盤エンジニアリング本部
副本部長

川島 英明

2002年、IIJ入社。09年、DCの新規事業担当となる。現在は基盤エンジニアリング本部でインフラ構築・運用の業務全般を取り仕切っている。

プロフィール

IIJ 基盤エンジニアリング本部
基盤サービス部長

久保 力

2008年、DC関連の業務経験者としてIIJ入社。以降、一貫してIIJのDC事業に携わっている。

プロフィール

IIJ 基盤エンジニアリング本部
基盤サービス部 副部長

橋本 明大

2009年、DCに関する業務経験があるファシリティエンジニアとしてIIJ入社。松江・白井両施設の設計・構築を担当。初代白井データセンターキャンパス長。

クラウドサービスとDC

―― IIJがDCサービスを始めたのは、いつ頃ですか?

川島:
IIJのDCは、自社のサービス基盤としての利用と顧客向けのDCサービスの両方をうまく組み合わせて運用できているのが強みです。年代的には、1995年頃のネットワークオペレーションセンター、97年頃から始めたコロケーションくらいまで遡ることができます。
久保:
2001年に始めたマルチサイトは、当時としては画期的でした。日本全国、同じ品質でDCをサービスで提供できるというのは、ほかにはなかったと思います。
川島:
その後も他社の設備を使った「DC in DC」を拡大し、 DCサービスを強化していきました。そして2000年代後半、クラウドサービス「IIJ GIO」の開始を機にDCの在り方・役割が大きく変わりました。

―― クラウドサービスの登場ですね。

久保:
クラウドサービス向けの本格的なDC利活用は、既存の都市型DCから始まりました。クラウド基盤を収容するDCに必要なのは、効率的に大量の電力が使える環境です。しかし、既存の都市型DCは、おもに顧客向けコロケーションサービスに適していて、クラウドで求められる1サーバ当たりのコスト(電力やスペース)で見ると、決して優れているとは言えなかったのです。
川島:
クラウド事業では、大量のサーバを設置し、低コストで運用する必要があります。そこでまずは、大量に省エネタイプのサーバを調達し、オペレーションを工夫することでサーバ1台当たりのコストを下げました。次にクラウド専用のDCを自社で持つことでさらにコストを抑えました。

「松江データセンターパーク」を新設

―― クラウド専用の「松江データセンターパーク」を新設し、コンテナ型のDCをつくりました。

久保:
いくつか理由はありますが、1つはDCを「外気冷却」したかった。北米では外気冷却で省エネを実現しているDCがありました。しかし「日本では大変そうだし、誰もやっていないから」と、外気冷却にトライする事業者はいませんでした。
川島:
外気冷却とモジュール化の発想は最初からありました。今なら一度に数万台のサーバを導入するDCが当たり前ですが、当時、国内では1000台規模でも画期的でした。そのため、1回の導入は小規模にして投資リスクを抑えながら、徐々に全体を拡張するロードマップが好ましかったのです。コンテナを使えばモジュール化できるし、コンテナに外気を取り入れれば、冷却もできそうだ。こういう経緯でコンテナDCの構想が生まれました。
橋本:
私は2009年、コンテナDCプロジェクトが始まる頃に入社しました。奇抜で、情熱的なプロジェクトメンバーの要求やアイデアを聞いて半信半疑で(笑)、外気冷却方式のコンテナDCのもととなる「ポンチ絵」を描きました。すると、久保さんが、大勢が集まる会議で私の描いた絵を出して「これをやります!」と宣言したのです。突然のことで仰天しました(笑)。
承認はすぐに下りて、2010年には実証実験が始まり、静岡県富士市で試作機をつくりました。DCでは「PUE」という電力使用効率の指標を用いるのが一般的ですが、試作機で計測してみたら「1.08」というあまりに良い値が出たので、驚嘆しました。オペレーション用のプログラム担当と本社に測定結果の速報を送りつつ、間違っていないか何度も確かめました。1.08はそれほど強烈な数字だったのです。そして2011年、松江データセンターパークが完成しました。時間の流れがとても早く感じられた3年間でした。

当時のポンチ絵
初期の外気冷却コンテナコンセプト(社内企画資料より抜粋)

―― スピード感に溢れた開発が可能になった理由は何ですか?

久保:
コンテナDCの試作機も、松江のDC構築も、経営層からの反対は皆無でした。クラウド担当の役員からは、はっきり「クラウド専用のDCがほしい」と言われていました。
橋本:
経営層の反対はなかったかもしれませんが、現場の話をすると、完成したコンテナ型DCの初号機(IZmo/S)は、実は、ユーザには不評でした(笑)。大型トラックで輸送可能で、必要な機能は全て兼ね備え、PUEも非常に優れているのですが、ラックが斜めに配置された内部*が狭く、作業がしにくかったのです。そのため、斜め配置を採用したのはIZmo/Sだけとなり、その後は現場の意見を取り入れて、運搬性と運用性を考慮したバージョンアップ機(IZmo/W)をつくりました。IZmo/Wは、トラックよりコストがかかるトレーラーで輸送しなければなりませんが、内部空間は一般のデータセンターと同等です。現在、松江にはIZmo/Wが30個近く並んでいます。5台ずつ製造し、その都度、改良を施してより良いものにしてきました。

サーバを収納したラックが斜めに配置された
コンテナDCの内部

さまざまなアイデアをかたちに

―― 1度できたものでも細かい改良を重ねていくのですね。ほかにもユニークなものをつくったことはありますか?

橋本:
外気冷却にすると、熱交換に使う電力をある程度削減できますが、送風用のファンに使う電力は最低限必要です。もしファンがなければ、外気冷却に使う電力は0となり、PUEは「1.0」になります!そこで、ファンを使わず、煙突効果(温められた空気が上昇して煙突から排出され、空いたところに冷たい空気が入り込んでくる仕組み)を利用して冷却する方法を考案し、2012年に実証実験を行ないました。発泡スチロールで高さ20メートルほどの煙突をつくり、周囲に足場を組みました。そしてサーバの代わりにホットプレートで空気を温めて、発生する風量や温度の変化を測りました。これは久保さんの発案です。
久保:
ただ、煙突では冷却に足りる風量を発生させられず、いったん実証は終了しました。しかし、2019年に開設した「白井データセンターキャンパス」で、この時の経験が大いに役立ちました。

―― コンテナや煙突といった斬新なアイデアはどこから出てくるのですか?

久保:
海外の事例をキャッチアップして、自分たちでも試すようにしています。海外の事業者でも、実際に頼んでみれば、意外と快く見せてくれます。
川島:
アイデアを温めている人は大勢いますが、それをかたちにしてやりきることが重要です。我々のチームは、成功ばかりとは言えませんが、アイデアを具体的なかたちにし検討してきたから、今があると思っています。あとは、折衝や調整をいとわないことや、誰か1人のアイデアを周囲が協力してかたちにしていく姿勢も大切だと思います。

* IZmo/Sは、コンテナ内の複数のラックを斜めに配置することで、作業空間など必要なスペースを確保しながら、コンテナのサイズ縮小を実現した。このラックの傾斜配置については独自性が認められ、2012年8月17日、IIJは特許を取得した。

column

CWCとデータセンター

IIJは1998年、世界初のデータ通信専用の通信会社「株式会社クロスウェイブ コミュニケーションズ(CWC)」を設立しました。CWCが提供する広域LANサービスは、ユーザ側からイーサネットでそのままWANに接続され、距離ではなくポート数で課金されました。現在は各通信事業者から広域イーサネットサービスが提供されていますが、高速デジタル専用線によるWAN構築で、距離による課金が主流だった当時としては衝撃的でした。
さて、データ通信専用網をつくるなら、データを集約するDCが必要です。CWCはまず、東京・大阪にDC in DCを開設しました。札幌・仙台・名古屋・京都・福岡では適切なビルの一角にDCとして使えるコロケーションスペースを構築することで次々とDCを開設していきました。
コストをかけずに局舎を構築するのに使ったのがコンテナです。24時間365日運用しているネットワーク機器を設置するのに、コンテナが役に立つことは当時からわかっていました。2003年、CWCがIIJグループから離れたあとも、技術者にはコンテナをうまくデータセンターで活用できないか? という思いが残っており、開発部門で研究を継続していたのです。

CWCのコンテナ型の局舎

白井データセンターキャンパスのさまざまな挑戦

2019年5月に開設した白井データセンターキャンパスでは、サービス基盤の提供に加え、さまざまな実証実験や先進的な取り組みを行なっています。

● 省エネへの取り組み

空調設備には、消費電力を削減する「外気冷却空調方式」と、効率的に空調搬送できる「壁吹き出し方式」を採用しました。電気設備は三相4線式UPSを採用し、200ボルトを効率的に給電できるようにしています。また、リチウムイオン蓄電池を活用した空調電力のピークカット/ピークシフトにより、電力需要の平準化も進めています。

● ロボット利用による省人化

設備巡回に地上走行ロボットを活用し、RPA(Robotic Process Automation)/RBA(Run Book Automation)基盤による業務の自動化も進めています。また、ドローンを利用した巡回の実証や入館業務の無人化など、運用業務の自動化も推進していく予定です。

● 電力エネルギー制御の検証

2019年11月からテスラ社製産業用リチウムイオン蓄電池を活用して電力のピークカット/ピークシフト効果を検証しました。そして20年8月、夏にもっとも電力を使用したピーク日に対して、10.8パーセントのピークカット効果を実測しました。

● カーボンニュートラルへの取り組み

2023年4月竣工予定の2期棟では、オンサイトメガソーラー発電設備の併設やオフサイトの発電設備からの電力供給など、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを強化します。

● 白井ワイヤレスキャンパス

2020年11月からお客さまに公開している実験施設では、屋内外に無線基地局を設置したラボ環境を構築し、多くの無線通信技術を一箇所に集め、デモや展示を通じて、それぞれの特徴や実力値を体感していただけます。

白井データセンターキャンパス


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