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インターネット・トリビア 通信と事業者間接続

IIJ.news Vol.167 December 2021

執筆者プロフィール

IIJ MVNO事業部 事業統括部シニアエンジニア

堂前 清隆

「IIJmioの中の人」の1人として、IIJ公式技術ブログ「てくろぐ」の執筆や、イベント「IIJmio meeting」を開催しています。エンジニアとしてコンテナ型データセンターの開発やケータイサイトのシステム運用、スマホの挙動調査まで、インターネットのさまざまなことを手掛けてきました。

電話やインターネットなどを扱う電気通信事業者には、他の業種の会社とは少し違う特徴があります。それは、ビジネス上のライバルである同業他社同士が通信設備を相互接続する「事業者間接続」が広く行なわれていることです。

典型的な例として、携帯電話事業で激しく競い合っているNTT ドコモ・KDDI(au)・SoftBank の三社が挙げられます。ある会社のスマートフォンから他社のスマートフォンに電話をかけることができるのは、各社の設備が何らかのかたちで事業者間接続しているためです。携帯電話以外にも、固定電話や国際電話などのサービスを提供する各社が相互に接続して構成されたネットワークを「電話網」と呼んでいます。

ライバル同士が互いに協力して相互接続を行なうのはフェアプレー的な精神だけでなく、サービスの改善という利点もあります。ある事業者は相互接続している事業者の数が少なく、一部の事業者としか通話できないというのは、良い電話サービスとは言えないでしょう。相互接続を充実させ、多くの事業者と通話できるようにすることは、電話サービスの向上のために必要なのです。

同じようなことはインターネットにもあてはまります。世界中にはたくさんのインターネット事業者がありますが、もし、それぞれのインターネット事業者のネットワークが相互接続されていなければ、通信が行なえません。そのため、インターネット事業者はできるだけ多くの他の事業者のネットワークと相互接続するよう努めています。北米大陸、ヨーロッパ、アジアなどのエリアには世界各国のインターネット事業者が集まる拠点があり、そういった拠点まで自社のネットワークを伸ばし、他のインターネット事業者と相互接続を行ないます。この接続を「ピア(peer)」と呼んでいます。

ところが、インターネットは電話網と比べると参加している事業者数が格段に多く、全ての事業者がお互いにピアを行なうことは現実的ではありません。では、ピアを十分に行なえない事業者は、インターネットの一部分としか通信できないのでしょうか?

そこで登場するのが「トランジット」です。トランジットは、自分が直接、ピアで接続していない事業者宛の通信を、別の事業者に代わりに運んでもらうための相互接続の方式です。宛先がわからなくても、とりあえずトランジットをしてくれる事業者に通信を預ければ、通信を中継してもらえます。ある意味、トランジットを引き受ける事業者は、別の事業者に通信を中継するサービスを提供していると言えます。そのため一般的に、トランジットを依頼する事業者は、トランジットを引き受けてくれる事業者に費用を支払います。

トランジットを引き受ける事業者は、受け取った通信の宛先が自分自身のピアとして接続している場合、そちらに中継します。宛先が自分自身のピアに見つからない場合は、自分自身のトランジットを引き受けてくれている別の事業者に通信を預けます。最初の事業者から見ると、トランジットのトランジットという二段先に通信が預けられることになるわけです。

大変便利なトランジットですが、デメリットがないわけではありません。通信の視点から、目的地までのあいだにトランジットを挟むことは、通信の道のりが遠くなることを意味します。道のりが遠くなれば、通信にかかる時間も長くなりますし、場合によっては途中で道に迷って通信が失われてしまう可能性もあります。インターネットで品質の良い通信を行なうためには、できるだけトランジットの段数が増えないようにする必要があるため、ピアによる相互接続を増やして、トランジットへの依存度を下げることが効果的です。

しかし、ピアを増やすためには世界各国にネットワークを伸ばして相互接続したり、多数の機器で構成される複雑なネットワークを運用する必要があり、簡単ではありません。そこで、できるだけたくさんのピアを持つ事業者にトランジットを依頼するという方法が次善の策となります。


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