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新クラウドサービス「IIJ GIO P2 Gen.2」誕生 エッジコンピューティングを支えるマイクロデータセンター

IIJ.news Vol.166 October 2021

データセンターと言えば、大規模な施設を連想するが、エッジコンピューティングのニーズが高まるなか、設置環境を選ばない、超小型の「マイクロデータセンター」が注目を集めている。
本稿では、IIJ が開発したマイクロデータセンターのソリューションを紹介する。

執筆者プロフィール

IIJ 基盤エンジニアリング本部基盤サービス部サービス開発課長

室崎 貴司

データセンター・エンジニアリング関連サービスの企画と開発を担当。もともとアプリ開発でスクラムマスターを経験しアジャイルに造詣が深く、世界のDX推進をインフラ設備から支えたいと考えている。

クラウド時代に求められるエッジコンピューティングとは?

企業や官公庁のIT・デジタル基盤をクラウドへシフトする流れが進んでおり、ここ数年で基幹システムを含む“スケール感”のあるクラウド移行が多く見られるようになりました。クラウドシフトによりITインフラコストの削減だけでなく、次の時代を見据えたDX(デジタルトランスフォーメーション)の動きが加速し始めていることが実感できます。その背景として、先行きが不透明で将来の予測が困難なVUCA*1と呼ばれる時代に突入し、コロナ禍によって先を見通すことがいっそう困難になるなか、より機動力のあるIT・デジタル基盤が求められていると考えられます。

クラウドコンピューティングへのシフトが進む一方で、エッジコンピューティングのニーズも高まり始めています。エッジコンピューティングとは、IoT 端末などのデバイスそのものや、その近くに設置されたサーバでデータの分析・処理を行なう分散コンピューティングの概念で、クラウドにデータを送らず、エッジ側でデータを分析・処理するため、リアルタイム性が高く、負荷分散にもつながるので、通信の遅延も起こりにくいという性質を持っています。例えば、医療現場や製造業での IoT 活用、自動運転の実現といった分野では、モバイルの5G技術と合わせて、エッジコンピューティングによるリアルタイム性の高い処理が求められます。また、セキュリティの強化や「データ主権」*2実現のためにクラウドにデータを送信せず、ユーザの手元で処理したいという声も増えています。

今後のIT・デジタル基盤は、クラウドとオンプレミスのハイブリッド利用、クラウド/企業コアデータセンターとエッジの適材適所の複合的な利用が進むと考えられます。そこでIIJ では、クラウドコンピューティングと連携可能な、柔軟かつ安全に統合されたエッジ環境をグローバルに実現することを目指し、「マイクロデータセンター」を活用した「DX edgeソリューション」(コラム参照)を新たに開発しました。

エッジコンピューティングの要「マイクロデータセンター」とは?

マイクロデータセンターとは、通常はビル内に設えられるデータセンターを、設備の機能やサービス品質はそのままに、その名の通り“マイクロサイズ”にしたデータセンターです。

今回IIJ が提供するマイクロデータセンターは、冷蔵庫ほどの筐体にデータセンターに必要な機能が凝縮されています。サーバ冷却の空調、UPS(無停電電源装置)、温度や火災検知など各種センサのほか、遠隔から操作可能な電子錠や、セキュリティカメラなどの物理セキュリティも完備しています。また、故障検知だけでなく、電力消費などのセンサ情報を、管理システムで遠隔からリアルタイムに可視化できます。IIJ が提供するマイクロデータセンターは堅牢で、冗長化による信頼性の向上、高い防塵・防水性能と遮音性能を誇るため、設置環境を選びません。さらに、左記のような特長を備えています。

  • 省エネ性:サーバルーム全体ではなく、ラック単位で冷却。データセンターのなかでも(IT機器に次いで)消費電力が大きい「空調」の省エネを実現。
  • 信頼性:二系統受電や空調機の冗長構成が可能なため、信頼性が高く、よりクリティカルなシステムにも導入可能。
  • メンテナンス性:構成部品がプラグアンドプレイで保守しやすく、故障時はセンドバック保守のため、海外での展開も容易。
  • 過酷な環境への設置:防塵・防水規格(IP 65)で工場や倉庫内に設置可能。屋外設置タイプもあり、汚れた空気からIT機器を守る。
  • 居住環境への設置:高い遮音性能( 50dB以下)によりサーバの騒音を低減。空調室外機が分かれていて室内に排熱されないため、オフィス内に設置することも可能。

マイクロデータセンターの利点・ユースケース

IIJには「co-IZmo(コイズモ)」というコンテナ型データセンターのラインアップがあり、国内外での導入実績を重ねてきました。コンテナ型データセンターは建築基準法上建築物とならず、ビル型データセンターと比べて建設コストが安く、短期間で構築できます。しかし、1ラックやハーフラック単位での需要には大きすぎるという課題がありました。

そこで我々はラック単位で導入可能なソリューションを検討し、マイクロデータセンターの PoC(コンセプト実証)を自社の白井データセンターキャンパス(白井DCC)で実施しました。そして、国内初となる Zella DC 社(オーストラリア)のマイクロデータセンター製品を活用し、屋外に設置したマイクロデータセンターおよび遠隔監視・運用スキームを検証しています。

IoT、MEC(マルチアクセスエッジコンピューティング)などのエッジコンピューティング用途はもちろん、拠点のサーバルームとしての活用も期待できます。通常、専用サーバルームを新たに作る場合、高い工事費用、長い構築期間、将来的な拡張が困難といった課題がありますが、マイクロデータセンターであれば、より低いTCO(総所有コスト)、短納期、高い拡張性が期待でき、引っ越し時の移動も容易です。さらに、屋外や生産現場などに設置する際も、過酷な環境(温度・防塵)に対応した特殊な機器を選定する必要がなくなり、サーバ機器の選択肢を広げることができます。

今後は IoT、ローカル5Gやクラウドサービス「IIJ GIO」といったIIJサービスと連携し、5G基地局のそばなどネットワークエッジでデータを処理・分析するMECの実証を行ない、白井DCC内にある無線技術の実験施設・ワイヤレスキャンパスでデモ展示していく予定です。

  1. *1VUCA とは、先行きが不透明で、将来の予測困難な状態を表す言葉で、「Volatility(変動性)」、「Uncertainty(不確実性)」、「Complexity(複雑性)」、「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字を並べた造語。
  2. *2データ主権とは、一般に、企業が国境を越えて個人情報を移転することを制限し、自国民のデータが悪用されるのを防ぐための政府の取り組みを指す。企業でも自社のデータを物理的にどこに蓄積して処理するのかを完全にコントロールする意識が高まっている。
DX edge ソリューションとは?

DX 時代に必要なアジリティ(柔軟性・拡張性)を備えたエッジ環境を実現するソリューションとして、今年度下期のリリースを予定しています。その前段として、エッジ環境を素早く構築し、シンプルに運用できるサーバラックサイズの小規模データセンター設備(マイクロデータセンター)を提供します。将来的にはマイクロデータセンターからサーバ、ネットワーク機器、ストレージなどのIT インフラ、仮想サーバ、分散クラウドなどの仮想化基盤を、オールインワンでお届けすることを目指しています。

DX edge のコンセプト:統合された、柔軟で、安全な、エッジ環境


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