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コラム|Column

コンテナ型データセンターを世界へ

2014/08

より広範な利用を目指して開発されたIIJの新しいコンテナ型データセンターモジュール「co-IZmo/I」。今、このco-IZmo/Iが、世界に向けて羽ばたこうとしている。

データセンターに必要な空調設備、消火設備などを内蔵したコンテナ型データセンターモジュールは、数百台規模のサーバを収容できます。こうしたモジュールを海外、国内でいくつかのメーカが販売していますが、IIJはこれを独自開発し、IZmo(イズモ)と名付け、2011年4月から島根県の松江データセンターパークで、クラウドサービスIIJ GIOの基盤として運用しています。

自社で利用することを目的に開発したIZmo ですが、この一、二年で国内の大学や研究機関などから「敷地内で情報処理基盤を効率よく運用できるプライベートデータセンターを構築するために利用したい」という引き合いが増え、昨年度は四台受注し、数十ラック規模のデータセンターを提供しました。ただ、9ラックで3、400台のサーバを収容できるIZmo では大きすぎるため、提案を断念した小規模な案件もありました。

また IZmo は、外部の冷たい空気を直接内部に送り込むことで空調の消費電力を大幅に下げましたが、外気がきれいな場所に設置する必要があり、どこにでも設置できるわけではありません。そこで、新たな需要にも対応できるように、小規模で設置場所を選ばないモジュールを開発することにしました。

運搬しやすい20フィートコンテナ(約6メートル)をベースとし、間接的に外気を使う冷却方式を採用することで、設置場所の制約を少なくし、省エネを実現しました。また、これまでは物理的に分けていた空調や停電時用バッテリーなどの電気設備を一台のモジュールのなかにコンパクトに収容し、設置期間とコストを低減しました。

「co-IZmo/I」(co はコンパクト、I はIndirect で、間接外気を意味します)と名付けられたこのモジュールは、複数台連結すれば、中~大規模データセンターの構築にも利用できる設計になっています。

現在、co-IZmo/I は、大学や研究機関以外にも次のようなニーズを持つ国内のお客さまに検討いただいています。

  • サーバルームが一杯になり、空いている敷地にサーバルームを増設したい。
  • 有休地にコンテナ型データセンターを設置して、新たなビジネスを始めたい。
  • 緊急時に移動できるサーバルームを作りたい。

コンテナ型データセンターの海外展開

海外のお客さまとも複数の商談が進んでおり、成約に近い(と思われる)案件もいくつか出てきています。なかには弊社の代表電話に「コンテナを売って欲しい」と海外から連絡が入り、そこから商談が始まったケースもありました。コンテナの販売については、これまで対外的には積極的にアピールしていませんでしたが、海外のデータセンター専門のメディアなどでも IZmo が取り上げられ、弊社のコンテナに対する認知が広がり始めています。

現状、下記のような要望を持つ東南アジア、中国、東欧の企業や公共機関と商談を進めていますが、通常のデータセンターのように特殊な施設の設計や工事の要員を確保しなくても、コンテナであれば高品質なセンターを短期間で構築できるところが評価されているようです。

  • IT事業用にデータセンターを短期で作って、早く事業を始めたい。
  • 信頼性向上のために複数の場所に小規模のデータセンターを分散配置したい。
  • 公共機関の基盤システムとして高品質なデータセンターを作りたい。

輸出する際の苦労

co-IZmo/I は国内で生産しているので、海外で利用する場合、当面は輸出することになります。海外への運搬方法は、航空便や船便がありますが、数千台のコンテナを運ぶ「コンテナ船」で一般のコンテナのように積み重ねて運ぶことはむずかしいと考えています。

co-IZmo/I は、積み重ねに耐え得る強度を持っていますが、クレーンで吊って船に下すときの衝撃が問題で、これを吸収する仕組みが必要になります。衝撃を吸収することが困難なら、カーフェリーのようなRORO船(アール・オー・アール・オー)と呼ばれる貨物船で運ぶことになります。また、輸出先の国内での陸送はトラックか鉄道になりますが、その際、振動を吸収するエアサスペンションの付いたトラックやトレーラーを手配できるのか? 道路の状態は? 貨物輸送用の鉄道は使えるのか?(例えば、シベリア鉄道は材木などの積荷がたまらないと出発しないので、スケジュールが立てられない……)といったことも考慮して方法を決める必要があります。

また、お客さまとのコミュニケーションは、英語がベースとなりますが、英語圏ではない国も多いため、それ以外の言語での対応が必要な場合も出てきます。それでも、電子メールでいつでもどこでも連絡がとれたり、ドキュメントは英語以外の言語でも機械翻訳でなんとなくわかったり(最終的な合意には英語のドキュメントは必要ですが)、会話も単語レベルであれば、スマホの翻訳アプリで間に合ったり……等々、ひと昔前では考えられなかったことが“ITの力”で何とかなったりして、「世界は小さくなっているな」と感じます。

IIJの強みとコンテナDC販売の意味

コンテナ型データセンターを製作・販売しているメーカは国内外に多数あります。そのなかでもIIJは高い評価を受けており、競合他社のコンテナと比較して、「IZmo はレクサスだ」と言っていただいたこともあります。この違いは、IIJがメーカではないことに起因している、と考えています。

IZmo 本体はOEM生産ですが、データセンター固有の空調制御や内部構造などは、これまでのデータセンターの運用経験から、メーカ側ではなく顧客の立場から、ノウハウを凝縮して設計・開発している点が強みになっている、と感じています。また、松江データセンターパークを見学した海外のお客さまの声を聞くと、実際のクラウドサービスの基盤として数十台の IZmo が3年以上にわたり運用されている点もポジティブな印象を与えているようです。

IIJは、インターネット接続、SI、運用アウトソース、回線、データセンターラック貸しなどのITサービスを提供してきましたが、コンテナを提供することで、これまでIIJと関わりのなかったデータセンターファシリティ構築にも、ビジネスの領域を広げることができるようになります。それにより、ITシステムの構築、ネットワーク、その後の運用もワンストップで提供できるチャンスが増え、海外へはファシリティだけでなく、データセンターに関わる全てを輸出できる可能性も出てきます。

今年度は国内外で10台の販売を目指し、今後数年で100台規模のビジネスになるよう尽力し、全国そして全世界に広がる IZmo を松江から一元的に管理・運用するなど、お客さまの利便性をさらに高める施策も検討していきます。

IIJ サービスオペレーション本部 久保 力

本記事は、弊社広報誌のVol.123 (2014年8月発行)に掲載されています。
Topics 加速するIIJの国際展開
「コンテナ型データセンターモジュールco-IZmo/Iの海外展開」
IIJ サービスオペレーション本部 データセンターサービス部長 久保 力
https://www.iij.ad.jp/news/iijnews/2014/pdf/vol123.pdf