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次世代ホストネットワーク

2010年12月15日

IIJでは、自社サービス用に数千台のサーバ機器を複数のデータセンターで運用しています。サービスの拡充・拡大につれて多種多様なシステムを構築してきた結果、運用コストが増大していきました。そこで、IIJでは、運用の効率化とコスト圧縮を目指した「次世代ホストネットワーク:NHN(Next Host Network)」を設計。クラウドコンピューティングをはじめとする新たなIIJのサービスと既存サービス移行のための基盤を整備しました。ここでは、NHN導入の背景、設計思想、技術要素について説明します。

サービスの運用効率向上とコスト圧縮を図るNHN

IIJでは、これまでサービス単位でデータセンター内のラックを確保し、それぞれのサービスごとに設備を構築していました。しかしこの方法では、将来の需要増を見越してある程度余裕を持たせた状態で、ラックスペースやネットワーク機器を用意する必要があるうえに、サービスの計画変更に伴う拡張や廃止の設備転用が困難で、コストがかさむだけでなく構築作業に時間が掛かるという問題がありました。また、障害時の現地対応などを考慮して、物理システムにアクセスのよい東京近郊で立地のよいデータセンターを利用しなければならないという制約もありました。

これらの課題を解決するために、NHNは開発されました。サーバプール方式を採用し、一度に100台規模でサーバを設置して、需要に応じて切り出して使っていくことで、設備を集約化。これにより、遠隔データセンターを利用しても、利用サーバ台数を増減するなどの自由度と機動性を確保しながら、サービス全体の運用効率を向上させることができました。

NHNの主な特長

  • サービス単位のラック割をやめ、制限電力ぎりぎりまでサーバを収容し、ラックごとのサーバ収容数を向上させました。また、サーバはディスクレスとして、必要なデータはすべてIP-SAN(iSCSI ストレージ)上に配置しました。
  • サーバプール方式により、同一スペックのサーバを多数設置。機器の設置、障害機器の物理交換等の現地作業は、計画作業として月1回などに集約できるようになりました。
  • サーバ構成を画一化して構成管理のコストを抑えるために、物理搭載メモリ量の変更やローカルHDDの搭載など物理構成を変える作業は行いません。
  • 仮想化技術を使うことで、設備の集約度を向上。また、物理構成を変えない範囲であれば、リソースの自由度が確保できます。
  • VLANを使用し、現地での配線変更をせずに、リモートからの設定作業のみで論理ネットワークを構成できます。
  • iSCSIを利用して安価なSANを構成。ストレージは極力サービス停止が起きないようにRAID コントローラや接続パスなど二重化を行っています。
  • ディスクレスサーバは壊れることを前提にしています。ハードウエアの障害発生時には、リモートから切替え作業を行い一次対応の完了ができます。
  • ディスクレスサーバ故障発生時に予備サーバへの切り替えが完了するまでの時間がサービス停止として許容できない場合には、あらかじめ系の異なる2つのサーバを準備してロードバランサなどを利用して冗長構成を取り、アプリケーション側での冗長構成を実現しています。

サービス開発サイクルにも影響を与えるNHN

NHNは、2008年10月からサービスの開発環境兼NHN実証環境として稼働を開始しました。IIJの社内では、導入当初は「仮想サーバでは不安。物理サーバとして渡された時にオーバスペック。安価なサーバの方が適している。ディスク単価が高い」などの意見も多数ありました。しかし、個々のサーバが多少高価となっても仮想化の導入による集約のメリットや、ファシリティや運用コストまで考慮した場合にトータルで安価となることへの理解がすすみ、現在では特に機材等に制約がなければNHNを使用しています。また、サーバは、必要時から数日で利用可能となり、不要時にはデータセンターでの物理作業をせずにサーバを返却できるメリットも大きいと言えます。IIJでは、NHNの導入により、サービスの開発フローや設備増強の需要予測の仕組み自体も、変わりつつあるといっても過言ではありません。

IIJのクラウドサービス「IIJ GIO」では、ネットワーク・サーバ設定部分のAPI化による自動化や、処理時間の短縮、ライブマイグレーションの導入による機器や基盤ソフトウエアのメンテナンス実施などにも取り組み、さらに進歩を続けています。IIJでは、今後もサーバ基盤技術としてNHNの改良を続け、各種サービスの運用の効率化とコスト圧縮を目指していきます。

NHN写真

牧野 泰光

執筆者プロフィール

牧野 泰光(まきの やすみつ)

IIJ サービス本部 プラットフォームサービス部 サーバプラットフォーム課
1999年4月、IIJ入社。新卒でIIJに入社後、ファイアウォールサービスの開発業務を経て、2003年よりIIJの法人/個人サービスのサーバインフラの設計、運用業務に従事。大規模なデータセンター移転プロジェクトを経験するなかで、効率よく運用業務を遂行するための仕組みの必要性を痛感する。2008年度より、サービスホストの設備関連を基盤システム化させた設備の集約化と、現地業務を含む運用業務の効率化を推進している。

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