アメリカ人宣教医師ヘボン博士がクララ夫人とともに横浜で、明治学院大学の淵源となるヘボン塾を開設したのがちょうど150年前の1863年。同学は創設者のヘボン博士が生涯貫いた精神"Do forOthers(他者への貢献)"を教育理念に掲げ、今日まで受け継いできた。
そして、教育・研究活動をはじめ、学生生活や教務などを支えるインフラとしてキャンパスのICT環境を積極的に整備・拡充。特に「近年は大学を取り巻くICT環境が大きく変化しており、継続的にネットワークやシステムの見直しを図っています」と、学内でのICTの企画・運用を担当する情報センター次長の萩原昌幸氏は述べる。
ICT環境の変化の一つに、学生や教職員が所有するスマートフォン、タブレット端末の急速な普及が挙げられる。キャンパス内では無線LANを利用して各自のモバイル端末からインターネットに接続する学生が多く、動画などもよく見られている。「インターネットに接続するアクセス回線の帯域が逼迫する懸念もあります」と、学内の通信トラフィックを監視する情報センターの土井伴紀氏は話す。
明治学院大学のICTインフラの特徴は、可用性・信頼性を高めるため通信回線やネットワーク機器を冗長化していることだ。例えば、白金キャンパスのインターネット接続回線はかつてシングル構成だったことから障害発生時の影響が大きかった。
そこで、IIJではインターネット接続回線の冗長化を提案。異なる通信キャリアのイーサネット専用線を2本引き込み、IIJバックボーンへ接続。加えて、IIJがルーターを監視・運用するIIJマネージドルーターサービスを導入。主回線の障害時にも自動的に副回線へ切り替える仕組みにより、インターネット接続を継続できる環境を整備している。
また、大地震など災害への備えに対して、ICTの見直しも必要とされていた。BCP、DRの観点から白金キャンパスと横浜キャンパス間で、データバックアップを実施。キャンパス間を結ぶWAN回線についてもIIJの提案で冗長化と帯域を増強している。
光回線の通信経路が異なる通信キャリアの広域イーサネットサービスを2回線利用し、万一の回線障害時にも「止まらないネットワーク」を構築。「IIJは通信キャリアの制約を受けることなく、中立的な立場で最適なネットワークを提案してくれました。また、インターネットサービスの老舗としての高い技術力もあるので、信頼できます」と萩原氏は評価する。
学内・学外とのコミュニケーション手段としてメールが利用される。教員は学会などで自身のメールアドレスを公開することから、「迷惑メールを受けるケースも多く、その対策が大きな課題になっていました」と情報センターの高橋大氏は振り返る。迷惑メールやウイルス対策として学内に専用アプライアンスを導入していたが、大量の迷惑メール処理でシステムに負荷を与えていたという。
「学内の教職員に届くメールのうち、60~70%は迷惑メールでした」(土井氏)という状況にあって、正規のメールが迷惑メールのフォルダーに振り分けられ、教員から「メールが届かない」といった苦情も情報センターに寄せられていた。そこで、自前のアプライアンスに代えてIIJの統合メールセキュリティゲートウェイ「IIJセキュアMXサービス」を導入。専用のWebページで教職員自身が自分宛ての迷惑メールの隔離状況を確認でき、情報センターのスタッフの負担を軽減している。メールが届かないといった問い合わせに対しては、「ログでメールの送受信状況を確認し、的確に対応できます」と高橋氏はメリットを語る。
また、統合Webセキュリティ「IIJセキュアWebゲートウェイサービス」を導入。Webフィルタリングや、Web経由でのウイルス感染の防止、監視・運用を含めてIIJへアウトソーシングすることでセキュリティの強化と運用の負荷軽減を図っている。
情報センターでは、約1 万6000アカウントに及ぶ学生・教員のメールを刷新。マイクロソフトの教育機関向けメールサービス「Live@edu」から「Microsoft 365 education」のExchange Outlineへ移行する計画だ。かつて学内でメールシステムを構築・運用していたが、定期的な法定点検時にもメールシステムを止めずに稼働したり、メールボックスの容量を増やしたりする狙いから、IIJの提案でLive@eduを導入し、学内システムとの認証連携を行ってきた経緯がある。
Microsoft 365の移行ではActive Directory(AD)との連携が必要になる。「学内ADとクラウド上に構築するADフェデレーションサービスと同期してユーザー認証を行うなど、可用性の高いメールサービスの提案とサポートをIIJに期待しています」(高橋氏)。重要情報を扱う教員向けには、IIJセキュアMXサービスからMicrosoft 365へメール配送を行うことで、セキュリティを向上させている。
そして、回線からネットワーク機器、セキュリティ、認証まで一括してIIJにアウトソーシングすることにより、「運用管理の負荷軽減のみならず、万一の障害時にも問題箇所の切り分けが容易になり、ダウンタイムを短縮できます」と萩原氏は導入効果を話す。学生・教職員に安定的なICTサービスを提供することが情報センターの使命だという。明治学院大学の各種システムをIIJ GIO上で運用する提案など、IIJでは可用性・信頼性の高いICTインフラの整備に向けたサポートを続けていく。
※ 本記事は2013年4月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。