高度な真空技術を生かし、ディスプレイ・太陽電池・半導体などの産業・研究機関向け装置を開発・製造するアルバック。業務におけるIT活用に積極的に取り組む同社では、情報システムセンターが全社的なITの運用をリードしている。
象徴的な取り組みの一つが、システム及びサポートを含む提供サービスに対して課金する「社内課金制」である。「業務部門から対価を得ることで、今後に向けた開発・運用の原資とし"攻め"のITを加速するのが狙いです」と情報システムセンター 情報システム部 部長の行本淳氏は話す。
その一方、既存のシステムには課題も抱えていた。その一つがグループウェアである。「従来から情報共有やナレッジの活用を図るため、グループウェアを整備していましたが、検索機能などの使い勝手に課題があり、全社的な利用があまり浸透していませんでした」と情報システムセンター IT室 室長の山中勝貴氏は課題を述べる。メールシステムについても、レスポンス低下に頭を悩ませていた。「長年の運用により、メールの利用シーンや利用頻度が拡大していました。開発当初は十分なパフォーマンスでしたが、次第にメールの遅延などが発生するようになっていたのです」(山中氏)。
そこで同社は、情報共有基盤の要となるグループウェアとメールの刷新を計画した。重視したのは、要件を満たす機能を最適なコストで提供できるコストバランス。「社内課金制を実現しているため、現場部門の負担を考えて、サービスはより安価に提供したいと考えていました。そのためには"仕入れ"に相当するシステム調達の部分をいかに最適化するかが重要でした」と行本氏は語る。
こうした観点から同社が選択したのが、グループウェアクラウド「IIJ GIOサイボウズ ガルーン SaaS」及びメール・情報セキュリティ対策システム「IIJセキュアMXサービス」である。
「IIJ GIOサイボウズ ガルーン SaaS」はサイボウズ ガルーンの機能をサービスとして利用できるのが特長。提供されるサービスは高信頼なIIJのデータセンターで運用されており、業務の利便性と可用性の向上が見込める。また「IIJセキュアMXサービス」はアンチウイルス、迷惑メールフィルタをはじめ、情報漏えい対策やコンプライアンス強化を支援するセキュリティ機能を豊富に実装し、快適なメール環境を安全・安心に利用できる。
しかも、両サービスともシステム構築の必要がないので、導入コストを削減できる。使った分のコスト負担で済む上、自前でシステムを保守する必要もない。「これにより、最適なコストでサービスの提供が可能になると考えました」(行本氏)。
IIJの対応力も大きな選択ポイントだった。同社は認証基盤としてアカウント管理システムを運用している。社内の情報セキュリティポリシー上、導入するサービスはこのアカウント管理システムとの連携が必要になる。だが、一般に標準化を軸とするSaaSでは、個別のニーズに対応することは難しい。「それに対し、IIJは単にサービスを提供するだけでなく、顧客の取り組みや考え方を理解し、きめ細かく対応してくれました」と山中氏は評価する。
さらにIIJは新サービスの導入によってトラフィックがどのように変化し、ネットワーク機器に及ぼす影響を綿密に調査し、その結果を定量的に提示した。その結果、既存ネットワークでも問題なく利用できることが分かり、サービス移行に踏み切ることができたという。「SIポテンシャルとキャリアポテンシャルをあわせ持つ、柔軟な対応力を高く評価しています」と行本氏は語る。
現在、同社では海外約1,000ユーザを含むおよそ5,500ユーザが「IIJ GIOサイボウズ ガルーン SaaS」及び「IIJセキュアMXサービス」を利用している。
導入による最大のメリットは、従来に比べ低コストでの社内提供が可能になったことだ。「必要十分な機能を満たしつつ、グループウェア及びメールシステムについて、従来に比べて2割も安価に提供できるようになりました。現場のコスト軽減を実現しています」と行本氏は満足感を示す。インフラを自前で構築・運用する必要がないクラウドのメリットを生かし、その分をエンドユーザへ還元しているのだ。
もちろん、機能面での評価も高い。「『IIJGIOサイボウズ ガルーン SaaS』はパフォーマンスが高く、全文検索も快適に行えます。多言語の対応もできるので、海外拠点でも施設予約などへの活用が始まっています」と山中氏は話す。
メールシステムに関しては、Webメール、メールクライアントの双方に対応している点が現場のビジネスで役立っている。「外出先で自分のメール環境を利用できない場合はWebメールを使うなど、適宜使い分けを図ってコミュニケーションの迅速化・活性化に役立てているユーザも大勢います」(山中氏)。
今後は導入したサービスの有効活用をさらに促進するとともに、日本の情報を海外の拠点でもシームレスに共有できることを目指す。「SIポテンシャルとキャリアポテンシャルをあわせ持つIIJには、サービスを提供するだけでなく、さらにもう一歩踏み込んだ提案を期待しています」と話す行本氏。オンプレミスからクラウドを中心とした共有型サービスへの移行を視野に、今後も同社は付加価値の高いIT活用を推進し、さらなるビジネス強化に取り組む構えだ。
※ 本記事は2013年11月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。