大成建設株式会社 様
大手総合建設会社が災害時通信手段としてIIJ公共安全モバイルサービスを採用。大規模災害対策訓練で有効性を確認し建設作業所へ導入を計画
Topics
導入前の課題
選定の決め手
災害時におけるIIJ公共安全モバイルサービスの有効性を評価
貴社は2024年10月に「IIJ 公共安全モバイルサービス」を採用し、順次ご活用範囲を拡大いただいております。選定された理由についてお聞かせください。
原口氏
選定理由は大きく3つありました。1つ目は、当社の業務アプリとの親和性を備えていたことです。当社の標準貸与スマートフォンと同機種の端末でIIJ公共安全モバイルサービスが活用可能だったため、当社の情報連携標準業務アプリのMicrosoft Teamsが活用できることに加え、主な利用者となる災害時に意思決定を行う義務を持つ職位者も戸惑わずに活用できる点も有効だと判断しました。
2つ目は、IIJ公共安全モバイルサービスの災害時優先電話機能をスマートフォンで利用できることです。過去には他社MVNOの災害対策用通信サービスも検討したこともありましたが、採用を見送った経緯がありました。IIJ公共安全モバイルサービスのデータ通信は、災害時優先電話のように優先接続はされませんが、公共機関向けの専用設備で運用されるため、一般ユーザによる混雑やトラフィック増加の影響を受けにくいことが確認できたため、選定の大きな決め手となりました。
3つ目は、大手通信事業者としての信頼性です。既に当社ではIIJのモバイルサービス以外にもIIJの閉域接続サービスやMicrosoftクラウドサービス接続などを活用してきた実績があり、当社の情報企画部(情報システム部門)が求める高いセキュリティ要件を満たす信頼性がありました。また、過去の経験からも、導入時や導入後の充実した伴走支援にも期待ができました。
導入後の効果
災通信手段の冗長化により、有事の際の即応性が向上
社内の情報連携や、自治体などからの支援要請への対応体制が強化
2024年11月1日に実施された大規模災害対策訓練でIIJ公共安全モバイルサービスをご活用されたとうかがっています。
清水氏
2024年5月頃から公共安全モバイルシステムの調査・検証を開始し、PoC(概念実証)などを経て、IIJ公共安全モバイルサービスの採用が決定したのは同年9月でした。時間的猶予もない中、IIJが当社情報企画部と綿密に調整しながらキッティング作業や端末管理プログラムの登録作業なども含めて支援してくれたおかげで、トラブルなく短期での導入が実現し、目標だった大規模災害対策訓練での運用に間に合わせることができました。
導入した150台のIIJ公共安全モバイルサービス端末は現在、本社と12箇所の支店に配備し、大規模災害が発生した場合、速やかに利用できるようにしています。今回の大規模災害対策訓練では、南海トラフ地震の半割れケースを想定したブラインドシナリオを作り、被害が発生した地域を当日に発表するというリアルな訓練を実施しました。普段使っているスマートフォンの通信がしにくくなるという設定で、リハーサルなしに該当する支店と本社との間でIIJ公共安全モバイルサービス端末のテザリング機能を立ち上げて回線を接続。災害時に社内で連携する情報を送受信する一連の行動を試すことで、有効性を実感することができました。その情報を元に現場で二次災害防止措置を行い、被害が拡大しないように保全措置をした後、社会インフラの復旧フェーズに移行するため、最適な人員を投入していくための通信手段が最も重要になります。IIJ公共安全モバイルサービスは当社BCPの核になっているといえるでしょう。
試験運用後に明らかになった効果や今後の課題についてお聞かせください。
原口氏
災害時の通信手段の安定性実現に向けては、マルチキャリア回線で冗長化され、インターネット回線が使えなくなるという懸念が大幅に緩和されました。災害時に強い通信網を活用することで、音声のみならずインターネットアクセスが維持され、社内連携をより強化することが確認できたほか、関係省庁や自治体などからの支援要請に即応できる体制の構築を図ることも可能になりました。今後は、首都直下地震が発生して通信がつながりにくい状況になっても、作業所から現地の状況を報告したり、支援に回るべき地域を確認できる環境を拡充していく考えです。
また、IIJが親身になってバックアップしてくれたおかげで伴走支援のありがたさも感じました。
清水氏
今後は、新設と撤収が頻繁に発生する有期事業の作業所に配備したいと考えています。また、現在は1台ずつのパケット通信量の契約ですが、次の段階では当社が活用する端末全体でパケットをシェアする契約に変更することも視野に入れています。
最後に、公共安全モバイルシステムについてのご意見をお聞かせください。
原口氏
総合建設会社のBCP(事業継続計画)では社会資本であるインフラの早期復旧が重要目的となります。当社のBCPにおいても、社員と家族の安全確保を前提とした上で、発災後にいち早く現場に駆け付け、迅速に社会インフラの復旧にあたることを使命と捉えており、国や地方自治体、企業などへの事業継続に向けた貢献を重要業務と定めています。実際に能登半島地震では、日建連が締結する災害協定に基づいた国土交通省からの要請により、道路啓開をはじめとした複数個所の応急復旧を実施しました。そうした活動の中で、安定的にデータ通信が行えたり、災害時優先電話機能を使用できたりすることは、建設業界のみならず官民が連携して災害復旧を少しでも早める鍵になるのではないかと感じています。この施策が今後さらに広く波及していくことを願っています。
導入したサービス・ソリューション
お客様プロフィール
大成建設株式会社
本社:東京都新宿区西新宿一丁目25番1号 新宿センタービル
設立:1917年12月28日
資本金:122,742,158,842円
※ 本記事は2025年2月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。

災害時に強い通信網を活用し社内連携の強化や支援要請に即応できる体制の構築を行いたい
貴社が災害対応や防災対策に注力されている理由についてお聞かせください。
原口氏
当社は、超高層ビル、スタジアム、ダム、橋、トンネル、地下鉄工事、都市開発などの大規模な建設事業を中核とする総合建設会社です。
「人がいきいきとする環境を創造する」という当社のグループ理念をもとに、安全・安心で魅力ある街づくりや社会資本の整備、大規模な自然災害からの復旧・復興、さらに国土強靭化にも貢献することで、建設会社としての社会的責任を果たすことが重要と考えています。地震や風水害などの大規模災害が発災した場合、すぐに本社及び管轄する支店に対策本部を立ち上げ、本社や全国の支店から支援物資を手配すると共に、応援社員をいち早く現場に派遣します。迅速に社会インフラの復旧にあたることが求められていることから、その一環で毎年BCPにもとづき大成建設グループ全社が参加する大規模災害対策訓練を行っています。
管理本部 総務部総務室
課長代理
原口 翼 氏
大規模災害対策訓練の概要とポイントについてお聞かせください。
原口氏
直近では2024年11月1日に、本社及び全国の12支店とグループ27社を含む全役職員約2万名が参加して実施しました。南海トラフ巨大地震の形態の一つである“半割れ”(南海トラフ地震の想定震源域の東西それぞれでマグニチュード8以上の巨大地震が時間差で起きるケース)が発生したことを想定し、先発地震の発生、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)の発表、後発地震の発生など、未曽有の災害への対応を訓練しました。
そうした有事においては社員や協力会社との速やかな情報連携が重要となります。今回は特に災害時の通信手段の維持・強化に取り組み、政府が推進する公共安全モバイルシステムや、低軌道衛星ブロードバンドサービスなど、様々な通信サービスの活用を訓練で取り入れたこともポイントでした。普段は光回線を利用していますが、回線が寸断されると本支店間の連絡手段が途絶するため、これまでは予備手段として衛星携帯電話やMCA無線、簡易無線など音声通話に限った手段を用いていましたが、訓練ではそれらに加えてIIJ公共安全モバイルサービスを活用することで、音声のみならずインターネットへのアクセスが維持され、社内連携体制がより強化されました。また、関係省庁や自治体、企業などからの支援要請に即応できる体制の構築も図ることが可能になりました。
従来の災害時通信手段における課題についてお聞かせください。
清水氏
課題の1つは、通信手段の冗長性の確保です。衛星電話やMCA無線は環境やエリアによってはつながらない場合もあることに課題を感じていました。それが現実になったのが、2024年1月に発生した能登半島地震でした。当社も会員となっている一般社団法人日本建設連合会(日建連)からの支援要請を受け、発災直後から石川県能登地方で復旧活動を開始。主に道路の啓開作業(災害による道路の損傷や倒壊物・放置車両などを処理し緊急車両が通行できる救援ルートを確保する作業)や、既存の施工物件の被害確認などを行いました。私も支店対策本部への応援要員の一人として現地入りしました。活動支援を行う中で感じたことは、場所によってつながりやすいモバイルネットワークがあること、衛星電話やMCA無線も場所によって活用できないことがあるという実態でした。広域災害では、通信手段の冗長性の確保が重要だと痛感しました。
もう1つの課題は、有期事業である建設作業所における通信手段の確保です。当社の支店や事業所では、先に述べたような非常時通信手段を既に導入しています。一方で、作業所への導入には様々な障壁があり十分に進んでいないのが現状です。音声による通信手段の確保だけではなく、インターネット回線の確保も課題でした。
そうした中で、2024年に総務省が公開した公共安全モバイルシステムは、携帯電話網の冗長性が考慮された通信回線であることに加えて、災害時優先電話機能も付加できる仕様があり、魅力を感じました。同時に、通信事業者の中でもIIJがいち早くこのサービスに参入するという情報が伝えられたため、私たちも強い関心を持っていました。
管理本部 総務部総務室
主任
清水 雄輝 氏