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株式会社きゅうべえ 様 株式会社きゅうべえ

京都の老舗自転車専門店のシェアサイクルにIIJのSIMが採用
パケットシェアとSIM管理でシェアサイクルの競争力を強化

京都市の自転車専門店の老舗として知られる株式会社きゅうべえ(以下、きゅうべえ)は、観光客が京都市内を自由に移動できるシェアサイクル「kotobike」(コトバイク)のサービスを2019年に開始。スマートフォンアプリと通信して開錠・施錠するスマートロックには、LTE-Mの通信モジュールと「IIJモバイルサービス/タイプI パケットシェアプランC」(以下、IIJモバイルタイプI)のSIMを採用し、安定した通信手段を確保した。稼働中の全てのSIMで必要最小限のパケットを分け合うパケットシェアプランによりkotobikeの利用料金を低く抑え、かつ開通管理やサスペンド機能も活用してコスト削減に大きく貢献したという。

導入前の課題

密閉した筐体へのSIMの格納や安定した送受信、低消費電力化の実現が課題

シェアサイクル事業kotobike誕生の経緯についてご紹介ください。

森氏

kotobikeは京都市内に点在する約50ヵ所の駐輪ポートで乗り捨てが可能なシェアサイクルサービスです。京都市では1973年のマイカー観光拒否宣言を皮切りに、自転車専用レーンの設置など、交通渋滞の解消のための施策を様々に打ち出してきました。当社も自転車に係る事業を包括的に行っている企業として、その活動の一助になればと考え、2019年からシェアサイクル事業を開始しました。
京都は小さな路地や通りにも見どころがたくさんあり、スムーズで自由な観光のための移動手段として、小回りの利く自転車は最適です。シェアサイクルを利用して観光や通勤をする姿は、もはやアジアやヨーロッパでは日常の風景になっています。日本を代表する観光地の京都でもシェアサイクルを定着させたいと思い、古都に映える自転車という意味のkotobikeと名付けました。

株式会社きゅうべえ
シェアサイクル事業部
森 匡央 氏

kotobikeの開発体制についてお聞かせください。

森氏

自転車本体は完全オリジナルで当社が開発しました。シェアサイクルビジネスの心臓部となるスマートロック(スマートフォンアプリと通信して開錠・施錠する電子ユニット)は、岡本無線電機株式会社(以下、岡本無線電機)に開発・製造を委託し、同社が仕様検討ならびにデバイス選定・調達を行うとともに、スマートロックのハードウェア・ソフトウェアの設計は全て株式会社アズマ(以下、アズマ)が担当。一方のスマートフォンアプリの開発はインディゴ株式会社(以下、インディゴ)に担当していただき、マルチベンダー体制のプロジェクトとなりました。

kotobikeのスマートロック開発にはどのような課題があったのでしょうか。

森氏

開発を開始した2018年当時、国内ではシェアサイクルビジネスはまだ黎明期で、未経験の当社としては手探りの状態でした。シェアサイクルビジネスが先行していた中国をベンチマークし、想定しうるビジネスモデルを元に岡本無線電機とアズマの協力を得ながら日本仕様を検討しました。
一方、通信部分についても多くの課題がありました。シェアサイクルでは利用者が思い思いの場所を走行したり駐輪したりするので、いかなる場所や環境でも通信が途切れないことが必要でした。そのため、LTE-M方式の通信モジュールを採用することは開発の初期段階から決定していました。ただし、スマートロックの筐体はアルミ製で、防水性・防塵性などを維持するために内部を密閉する必要があり、かつ自転車のサドル下に設置するので、電波の送受信が問題なく行われるか不安でした。
また、シェアサイクルは屋外で利用されるため、スマートロックには風雨や直射日光、振動・衝撃などを受けても安全なニッケル水素電池を採用しました。ただし、リチウムイオン電池と比較すると、同じ量の電気を蓄えるにはバッテリーのサイズが大きくなるため、筐体面を工夫するとともに、電子回路の省電力化も強化する必要がありました。

選定の決め手

パケットを複数のSIMで分け合えるパケットシェアプランが選定の決め手

「IIJモバイルサービス」の選定理由についてお聞かせください。

森氏

そうした課題を、岡本無線電機の提携先であったIIJグローバルに相談したところ、IoT開発の実績や知見を元に熱心にアドバイスいただき、SIMの無償貸し出しを受けられたことで、一気に問題解決へと進みました。
2018年11月に、貸し出しを受けたSIMをスマートロックに収め、利用者様が走行すると想定したルートを何度も巡回。1ヵ月以上かけて観光地・ショッピングモールの地下駐輪場・トンネル内・ビルの陰など、電波が入りづらそうな場所を探しては、送受信状態の確認を繰り返しました。天候の影響も考慮し、雨の日も走り回りました。その結果、LTE通信が途切れることはほとんどないことが分かったのです。
その他にも、IIJモバイルタイプIに注目したポイントはいくつかありました。その1つが、パケットシェアプランの設定です。kotobikeは通常、1日に1回だけスマートロックの充電残量や駐輪位置などの情報をクラウドに送信し、どこに何台駐輪されているか把握できるようにします。利用開始時と利用終了時にも情報を送信します。しかし、お客様が利用中の移動軌跡はプライバシー保護や電力消費の関係で収集していません。一時駐輪でカギの開け閉めのあった地点だけ記録を取るようにしています。したがって、kotobikeの1台あたりの通信量はさほど多くないのです。IIJモバイルタイプIにパケット量を複数のSIMでシェアできるプランがあったのは、選定の大きな決め手となりました。

現在のkotobikeの運用状況についてお聞かせください。

森氏

kotobikeは2019年9月から本格運用を開始しました。現在の運用台数は約120台。最大で200台運用可能ですが、現在の駐輪ポート数が約50箇所なので、駐輪適正台数に合わせて抑制しています。サービスの展開地域は主に京都市内で、お客様層の中心は20~40歳代。主な利用目的は、観光や買い物などが多数を占め、バスや電車に代わる交通手段として活用いただいています。

利用イメージ

導入後の効果

無駄の出ない1GBのパケットシェアプランでkotobikeの利用料金を低く設定

IIJモバイルタイプI活用によるメリットをお聞かせください。

森氏

大きく3つあります。1つ目は、通信品質の安定性です。kotobikeのサービスを開始して2年以上経過していますが、現在までにSIMを原因としたトラブルは1件も発生していません。京都、大阪、滋賀での運用においても電波障害や通信不良もなく、信頼性が非常に高い印象です。また、その点は岡本無線電機、アズマ、インディゴのご協力によるスマートロックの設計・製造品質が優れていたことも大きく貢献していると思います。
2つ目は、やはりパケットシェアの効果です。シェアサイクルは車両によって利用頻度も利用時間も異なるので、SIMを1台ごとの定額プランにすると、パケット量の想定は最大利用した場合の上限に合わせなければなりません。それでは利用料金の高額化につながってしまいます。IIJモバイルタイプIのパケット量を決めるにあたり、車両200台でパケットをシェアする評価テストを開始したところ、1台あたりの平均通信容量は想定よりも少ないことが判明しました。IIJからは無駄の出ない1GBのプランを提案いただいたことで、kotobikeの利用料金設定も低く抑えることができ、非常に満足しています。
3つ目は、SIMライフサイクル管理の機能です。それがコスト削減に大きく貢献してくれました。実証実験段階では有償のSIMを使ってより広範な地域でテストを繰り返しましたが、SIMの一部だけを一定期間開通することで、ローコストで準備を進めることができました。また、待機状態のシェアサイクルのSIMやメンテナンスに入ったシェアサイクルのSIMも、利用しない期間はサスペンド状態にすることで基本料金が軽減されます。そしていつでもアクティブ状態にして利用可能にすることができます。シェアサイクルビジネスを弾力的かつ能動的にコントロールできるのも、IIJモバイルサービスを選択した効果だと思っています。

目標だった低消費電力化も成功されました。

森氏

その通りです。低消費電力化にはもう1つの効果がありました。京都は比較的日中の寒暖差が激しい上に、密閉されたスマートロック内部ではバッテリーや基板のRF回路周辺ではある程度の熱が発生するので、通常なら結露が生じ、電子回路などを腐食させる可能性がありました。しかし、IoTに豊富な知見を持つアズマの低消費電力技術と基板設計ノウハウ、及び電子部品・基板・ユニットアッセンブリに長けている岡本無線電機の工夫によって、スマートロック内部の温度変化は想定よりも少なくなり、結露もほぼ発生しない構造になったのです。SIMの周辺部分にもタメージを与えず、より信頼性と安定性を高められたことは大きな収穫でした。

今後のkotobikeビジネスの展開計画をお聞かせください。

森氏

kotobikeでは2021年度中にも電動自転車版のシェアサイクルを提供していく予定です。また、kotobikeのポートも100以上に増やす計画で、シェアサイクルの運用台数も倍増を目指しています。電動自転車に移行して十分な電力が使えるようになれば、プライバシーに十分配慮しながらお客様が観光地を辿ったルートを可視化したり、消費カロリーを計算したり、ナビゲーションに合わせて観光案内したりするサービスなども検討したいと考えているので、全体でシェアするパケット量も増えていくでしょう。
さらに、現在の京都、大阪、滋賀以外の地域にもシェアサイクルのノウハウをOEMの形で拡大していくことも視野に入れています。その場合はkotobike以外のブランド名で多くの皆様にご利用いただけるかもしれません。
今後、kotobikeの利用台数が増えていけば、現状のプラスチック製SIMカードから、スマートロックの更なる小型化・高機能化に寄与するチップ型SIMやSoftSIM(通信モジュールに実装するSIM機能を有したソフトウェア)などの組み込み型のSIMへの変更も検討の俎上に載せられると思っています。スマートロック内部のSIMスロットが削減できるため、振動や腐食による不具合の発生が格段に低下するほか、省スペース化によってバッテリー容量の拡大も期待できるからです。

この度のkotobike開発プロジェクトを振り返りご評価をお聞かせください。

森氏

IIJは開発前段階にも関わらず質問への親身な対応をしてくれたほか、開発開始後もPoC(概念実証)に向けたSIMカードの無償提供にも応じてくれるなど、迅速かつ手厚いサポートをいただけたお陰でスムーズに開発を進めることができました。IIJモバイルタイプIは通信品質も安定していたため、予定よりも早くkotobikeサービスがリリースできたことにも大変満足しています。IIJやIIJグローバル、そして協力会社の皆さんには、引き続きサポートいただけることを期待しています。

導入したサービス・ソリューション

お客様プロフィール

株式会社きゅうべえ
本社:京都市東山区下堀詰町246 テイブンビル2F
設立:1981年2月2日
資本金:4,500万円(資本金2,500万、資本準備金2,000万)
1957年の創業以来、自転車専門店「自転車のきゅうべえ」は、長年の経験で培われた組立・整備技術と充実した商品・信頼されるサービスを提供し、世代を超えて愛されてきた。現在は京都市を中心に6店舗を展開し、オンラインショップも運営。シェアサイクル事業、ブランド・商品開発事業(スポーツサイクル・用品ブランド)、リテール事業(Eコマース・リアルショップ)の3本柱でビジネスを拡大している。

株式会社きゅうべえ

※ 本記事は2021年7月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。

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