株式会社バディネット 様
みかん畑から食品工場まで、広がるLoRaWAN®センシングの実用化
電波調査のクラウド可視化で、センサー導入を更に効率化
Topics
導入前の課題
選定の決め手
現場の信頼を生むIIJの「課題起点」のアプローチ
現場での電波調査から設置工事というのは、具体的にどのような作業を行うのですか?
宮下氏
大きく分けて、電波調査と機器設置の2段階です。電波調査では、まずIIJが提供しているLoRaWAN®のゲートウェイを、電源が取れてお客様側からも設置の許可をいただける場所に仮設置します。そして、センサーの設置候補地点に「LZ-01」という電波測定用デバイスを持参します。LZ-01が実際のセンサーに代わって、合計30回のデータを送信し、ゲートウェイで安定して受信できるか——受信成功率や電波の強度(RSSI)、ノイズの状況(SNR)——を確認します。
たとえば、食品加工工場の冷蔵庫であれば、冷蔵庫の付近でLZ-01を用いて電波状況を確認し、問題がないことを確認した上で、後日改めて庫内に温度センサーを設置するという流れになります。
2026年7月29日に発売された新型のLoRaWAN®測定用デバイス「LZ-01V3」。従来型の「LZ-01V2」から筐体の小型化・軽量化・堅牢化が進められた。
これまでのLoRaWAN®の案件の中で、特に印象に残っているものはありますか?
立原氏
愛媛県のみかん畑のプロジェクトです。愛媛県が地域課題の解決にデジタル技術を活用する「トライアングルエヒメ」という事業の一環で、八幡浜市の真穴地区という温州みかんの一大産地全体に、LoRaWAN®のネットワークと土壌水分センサー(※2)を整備しました。見渡す限り広大なみかん畑なのですが、それでも農家さんの方の頭の中には「あの樹の下で測りたい」という狙いが明確にあります。長年の経験から、特定の場所のデータが重要だとわかっているのだと思います。我々は農家の方と一緒にみかん畑を歩いて、計測ポイントをひとつひとつ決め、電波調査をしながら土壌水分センサーを設置していきました。
- (※2)土壌水分センサー:土の中に電気を通して、その通り方から水分量を計測するセンサー。土壌の乾燥状態をリアルタイムに把握できるため、灌水(水やり)の最適なタイミングを判断する指標として使われる。
このプロジェクトでは、どのようなことを目指していたのですか?
立原氏
真穴地区には、毎年安定して素晴らしいみかんを作られる農家さんもいれば、品質や収量に課題を抱えている農家さんもいらっしゃいます。その差を生んでいる要因の1つが「水やりのタイミング」ではないかという仮説のもとプロジェクトが進められました。安定収穫できている場所の水やりのタイミングや土壌の水分量を土壌水分センサーで数値化して、地区全体で共有すれば、品質を底上げできるのではないかと考えています。開始して2年が経過していますが、農作物の品質や収量には様々な要因が影響するため、成果を見極めるには更に数年かけてデータを蓄積していく必要があります。農家さんには毎年センサーの数も増やしていただいており、継続的に分析を行っているところです。
IIJをLoRaWAN®のパートナーとしてどのように評価していますか?
立原氏
IoTの分野では、「この技術を作ったから導入してほしい」というプロダクトアウト型のアプローチをとる企業も少なくありません。またPoCの段階で我々が施工を手伝っても、結局頓挫してしまうケースもありました。IIJはその逆で、まず自治体やエンドユーザの課題に入り込んでいく。先ほどのみかん畑の案件でも、農家さんの困りごとから出発しています。そういうアプローチなので、実際に我々が現場に入ると、農家の方々からのIIJへの信頼が非常に厚いですね。我々のような外部業者が現地の施設に入る際にも、車や資材の置き場所まですべて段取りしてくださる。エンドユーザとの関係構築がしっかりしているので、我々もとても動きやすいです。
導入後の効果
測定データのクラウド可視化で、電波調査の生産性が飛躍的に向上
IIJは2025年7月に「IIJセンシングデータマネジメントサービス(以下、SDMS)」の提供を開始しました。貴社でも活用されていますが、どのような変化がありましたか?
宮下氏
効果は明快です。SDMSはセンサーから取得したデータをクラウド上で一元管理できるサービスで、電波測定のデータもリアルタイムでクラウドに上がるようになりました。
宮下氏
以前は、測定用デバイスでデータを30回送信した後、ゲートウェイ本体へPCをUSB接続してログをCSVファイル形式で取得し、受信成功率や電波強度の平均値を手計算していました。今はSDMSの画面を開けば必要なデータが表示され、平均値も自動計算されています。設置作業中に値が出ていなければ、すぐに場所を変えて再測定するという判断もできます。以前は一度作業を終えて持ち帰ってから検証し、結果が悪ければ再度現場へ行くという流れだったので、現場での電波調査のスピードは格段に上がっています。
立原氏
愛媛で最初にご一緒した頃は、測定デバイスのディスプレイに表示されるスコアを1ヵ所ずつ紙にペンで書き取っていました。今は現場にいながらクラウドですべて確認できるので、お客様にもリアルタイムで結果をお見せできますし、レポーティングのスピードも格段に上がりました。
IIJに対して、今後期待することや要望はありますか?
立原氏
今回のSDMSのようにIIJの先進的なプロダクトは我々の業務を劇的に変えてくれました。今後は、我々が現場で泥臭く電波調査や施工を行う中で得られた「リアルな課題」や「顧客の潜在ニーズ」といった現場の一次情報を、IIJの次なる技術革新や製品アップデートにダイレクトに活かせるような、双方向のフィードバック体制を更に深めていきたいです。
技術を創るIIJと、現場を繋ぐ我々がシームレスに連動することで、より市場のニーズに合致した、強力なプラットフォームを一緒に育てていけるのではないかと期待しています。
最後に、今後の展望をお聞かせください。
宮下氏
先程ご説明した愛媛の案件のような官民一体のプロジェクトに、提案の段階から伴走させていただけるのは我々にとって非常にありがたいことです。バディネットが最終的に目指しているのは、関わるすべての人がきちんと収益を上げて幸せになれること。農業のように、これまで数値化されていなかった領域にデータでアプローチしていける取り組みは、社会のために動いているという実感を持てます。IIJが扱うソリューションの幅が今後更に広がるのであれば、ぜひそちらにもご協力させていただきたいです。
立原氏
今回はLoRaWAN®の話が中心でしたが、最近ではWi-Fi HaLow(IEEE 802.11ah)の案件でもIIJとご一緒させていただいています。Wi-Fi HaLowはLoRaWAN®と同じ920MHz帯を使いながら、カメラ映像のようなより大きなデータも扱える無線技術で、今後の展開が非常に楽しみな領域です。我々バディネットは、「繋ぎ方で、世界を変える。」をミッションステートメントに掲げ、すべてのモノが繋がる社会の基盤づくりに日々尽力しております。今後もIIJと連携し、無線技術を駆使したIoTソリューションの拡大をしっかりとサポートさせていただくことで、社会課題の解決に貢献してまいります。
導入したサービス・ソリューション
お客様プロフィール
株式会社バディネット
本社:東京都中央区新富1-18-1 住友不動産京橋ビル3F
設立:2012年2月
資本金:1億円
従業員数:283名(バディネット単体、2026年3月31日現在)
同社の核となるのは、ICTを徹底活用した独自のメソッド「通信建設テック®」であり、物価高や人手不足といった社会課題を解決しながら効率的な施工を実現しています。
また、ITデバイス向け保守パッケージ「Buddy Qr(バディキュア)®」や、ロボットの導入から保守までを支援する「ROBONARA」などの自社サービスも展開。コンタクトセンターやプロジェクト支援、ハードウェア開発事業も含めた多角的なアプローチで、通信建設の枠を超え、先端技術の社会実装を通じて次世代インフラの構築を牽引しています。
※ 本記事は2026年6月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。

LPWA構築案件の拡大に伴い、効率的な調査方法を検討
貴社の事業概要について教えてください。
バディネット 立原磨乃氏
弊社は、電子機器・通信関連事業分野における製品・ソリューションを総合的に提供するAKIBAホールディングスの中核企業として、社会インフラ構築事業を展開しています。グループ内のシナジーとして、メモリ・IoT分野の「アドテック」や高性能計算機(HPC)の「HPCテック」といった製造・販売企業と連携し、最先端IT機器の設置工事やインフラ構築を一手に担っております。更にグループ外のお客様に対しても、携帯基地局やインターネット回線などの通信インフラ工事を起点に、IoT・ロボット・EV充電設備の設置から再生可能エネルギー関連工事に至るまで、最先端技術の社会実装を「導入から運用まで」ワンストップで支援しています。
事業推進課 兼 エンジニアリング事業部 営業企画課 主任
立原磨乃氏
バディネットの強みはどこにありますか?
立原氏
全国293拠点・計1,040名による、日本全国を網羅する施工・保守体制は、弊社の大きな強みです。お客様から高く評価いただいているのが「プロジェクト推進力」です。ICTを徹底活用する独自のメソッド「通信建設テック®」を駆使し、工事業界が直面する物価高騰や人材不足といった様々な課題を解決に導いています。
加えて、従来の工事会社の枠を超え、システム開発やコンタクトセンター、BPOといった機能も自社内に完備しています。お客様の事業拡大に向けたスキーム構築や機器開発から、施工・保守、日々の運用オペレーションに至るまで、一連の業務を一気通貫で対応できる体制を整えています。「バディネットに頼めば事業の課題を解決してもらえる」。お客様からそう言っていただける対応力こそが、弊社の最大の特長です。
貴社はLoRaWAN®(※1)に関してIIJと協業しています。具体的にはどのような取り組みなのか、その経緯も含めて教えてください。
バディネット 宮下卓也氏
LoRaWAN®を使ったセンシングの案件で、電波調査から設置工事までを担当させていただいています。きっかけは、2023年に大規模な物流施設へ熱中症対策用のセンサーを導入する案件で、設置工事のご相談をいただいたことでした。
弊社は通信キャリア様の基地局工事やWi-Fiの構築など、これまで数多くの通信インフラの構築に携わってきました。ただ、LoRaWAN®のようなLPWAは、使用する周波数帯も、屋内での電波のふるまいも、それまで扱ってきた無線とは大きく異なりました。事業として本格的に取り組んでいくには、机上の知識だけでは十分ではなく、現場でしか得られないノウハウをひとつひとつ積み上げていく必要がありましたが、IIJと案件を重ねる中で、LoRaWAN®の電波伝搬に関するナレッジを蓄積できました。みかん畑での土壌水分データの可視化から、食品工場の冷蔵庫の温度管理、トイレの開閉検知、ワインセラーの温度管理、浴場の湯温監視まで、案件は多岐にわたります。
エンジニアリング事業部 フィールドソリューション推進課 主任
宮下卓也氏