垣副氏
GDPRでは、データへの侵害が発生した際の報告義務があります。72時間以内に管轄監督機関に通知しなければならないのですが、GDPRの要件を読み解いていくと既存の代理人との契約では常時対応できる体制が取れない可能性が出てきたのです。
垣副氏
これまでは、属人的なつながりでEU代理人となる協力者を見つけていました。今回は、そうした属人的なつながりだけでは対応が十分ではないと判断し、世の中のスタンダードを知るためにインターネットで「EU代理人」について検索しました。そこで見つけたのが、「IIJ EU代理人/UK代理人サービス」に対してのインターネット上の記事でした。
GDPR対応をうたう代理人サービスは、インターネットサービス事業者や法律事務所などから多く提供されていることが分かりました。しかし、それらのWebサイトを見ていくと、サービス内容がよく分からないのです。具体的にどのような内容を、どこまでサービスとして提供してくれるのかが明記されていないものがほとんどでした。そうした中で、IIJのEU代理人サービスのWebサイトを見てみると、明確に「EU代理人のサービス」であることが分かり、さらにその中で何ができるかが明記されていました。
IIJ EU代理人/UK代理人サービスはEU各国(27カ国)と英国にいるEU代理人が、データへの侵害などへの問い合わせに対応してくれます。対応言語は、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語で、日本側に対しては日本語で対応してくれるほか、GDPRの専門家としてのアドバイスも行ってくれる点は魅力でした。
長島氏
2020年9月にWebサイトから問い合わせをしました。実は、問い合わせをしてからのスピード感がIIJのサービスを導入するに至ったもう1つのポイントでもありました。Web問い合わせからすぐにレスポンスがあり、その後も速やかにミーティングの設定の連絡がありました。GDPRについての質問やサービスの内容を問い合わせたときも、翌営業日までには返答が来ました。これは重要なポイントです。
EU代理人は、EU圏内で起きたデータ主体に対する侵害の事象の通知に対して、72時間以内に対応をしなければならないという時間との勝負が求められます。そうしたスピード感を求めるサービスの日本窓口の対応がのんびりしていたら、実際に事が起きたときの対応にも不安が残ります。IIJの対応は、こうした懸念を払拭するものでした。
長島氏
2020年9月に最初の問い合わせをして、10月に商談を開始しました。11月には正式な発注をして、12月にはサービスの提供を受け始めました。IIJ側のスピード感ある対応によって、早期のサービス利用が可能になりました。
GDPRの執行強化への対応を速やかに行うということだけでなく、新サービスの提供を控えていることも早期のサービス利用を求める理由の1つでした。新サービスを開始する前に、GDPR対応のリスクをできるだけ減らしておきたかったのです。IIJはこうした要望に迅速に応えてくれたと感じています。
垣副氏
迅速で分かりやすい説明が印象深いです。資料や説明の中でも、サービス利用者が何をすればいいのか、利用には何が必要なのかということを明確に伝えてもらえました。EU代理人サービスを利用する中で、どこまでサービス側でカバーできるのか、そしてサービス利用者側にはどのような対応が必要になるのか、といった細かい点まで明確になっていたことはありがたかったです。
長島氏
法規制にはきっちりした対応が求められますから、サービスを利用するとしてもその内容は十分に精査しなければなりません。一方で、湯水のように費用をかけられるわけではないのも事実です。コスト感についても検討材料に上がりました。
実は、GDPRが施行されて2年以上経ちますが、これまでGDPR関連の問い合わせをEU圏からいただいたことはありませんでした。何も起こっていない状況の下でEU代理人を選定するとなると、何かが起こったときの保険的な意味合いが強くなります。そのため、大きな予算を組むことはできないのが現実です。一方で、執行強化により今後どのような対応が求められるか分かりません。
こうした中で、IIJ EU代理人/UK代理人サービスは実際にEU代理人が稼働した業務に対して従量制の料金体系なのがポイントの1つです。基本料金はありますが、EU圏から問い合わせなどがなければ低いコストで信頼感のあるサービスを利用できる点は魅力的でした。従来の代理人に依頼している際のコスト感と比べても、納得できる料金だと思っています。
垣副氏
フォースバレー・コンシェルジュでこれから提供を考えている新サービスは、グローバルに幅広く提供していくものです。現時点では詳細は申し上げられませんが、全世界に向けたインターネットサービスとして広く使ってもらうことを想定しています。その中にはEU圏の利用者も多く含まれると考えていますし、個人情報のデータ侵害に関わる問い合わせがまったくないままでサービスを展開していけるとは思っていません。ビジネスを大きく広げることを考えたとき、GDPRに対応できるしっかりとしたEU代理人を選任できるサービスを利用することは、安心感につながります。
フォースバレー・コンシェルジュのサービスを支えるインフラとして、IIJ EU代理人/UK代理人サービスを導入することで、自身のビジネス拡大に役立てていきたいと感じています。
※ 本記事は2020年12月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。
GDPRの執行強化によりEU代理人の見直しが急務に
フォースバレー・コンシェルジュ様は、海外との人材の架け橋になるビジネスを展開されています。会社とビジネスの概要をご紹介ください。
長島氏
世界中の人材を日本の企業とつなぐ人材サービスを提供しています。2007年設立で、創業者で代表取締役社長の柴崎(洋平氏)がメーカーに勤務していた時代に、日本の少子高齢化による労働力不足問題の解決や海外の人材を有効に活用する意義に目覚めたのが設立のきっかけです。柴崎が東京・四ツ谷の上智大学出身ということで本社も四ツ谷にあります。
事業としては、国内外で合同企業説明会を実施する人材獲得支援や、グローバル人材と日本企業をつなぐマッチングサービスのオンラインプラットフォーム提供などを行っています。新型コロナウイルス感染症の影響で海外の合同企業説明会などの実施が難しい状況が続いていますが、一方でリモートワークなどへの理解が高まり、オンラインプラットフォームを活用した採用活動への注目が高まっています。
EU圏でビジネスを本格的に始めたのはいつ頃でしょうか。
長島氏
日本でIT人材の枯渇が叫ばれるようになった10年ほど前から、まずインドやアジアの人材を日本企業にマッチングするビジネスを展開してきました。その後、米国に対象を広げ、欧州では2011年にロンドンである企業様の採用支援を開始したのち、2017年ごろに同じくロンドンで合同説明会を開催したのが最初の大きな取り組みでした。
人材紹介ビジネスでは、個人情報の取り扱いには細心の注意を払う必要がありますね。
垣副氏
人材会社として個人情報の取り扱いは最重要事項の1つで、適切な処理や対応が必須です。個人情報保護はEUに限った話ではなく世界中で求められますが、EUではGDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)が2018年5月に施行されて、厳しい罰則などが設けられるようになりました。
もともと人材会社では、アナログ的な個人情報の管理が主流でした。しかしこの数年でDX(デジタルトランスフォーメーション)の枠組みを見据えて、完全なデジタルデータ化や情報の整理を進めています。その一環として、GDPRに対応できる情報の整理、再構築を進めていました。
GDPRでは、欧州に拠点を持たないけれどもEU圏内で取引する企業に対してEU代理人(EU representative)を選任する義務があります。
垣副氏
そのため、EU側に出先の担当者を置かなければなりません。これまでは協力者に依頼して、EU代理人の役割を担ってもらっていました。ところが、2020年6月24日にEU当局よりEU代理人不選任の執行が強化されるというアナウンスがありました。その内容を精査していくと、従来の協力者の対応では要件を満たせないことが分かってきました。
同時に、EUを含むグローバルを対象とした新しいサービスのローンチを控えていることもあり、ビジネス拡大を前提にしたときにGDPRの要件を満たしたEU代理人を専任する必要性があったのです。既存の体制では、万が一EU代理人を通じて対応しないといけない事態が起こったときに、要件を満たした対応ができないリスクがあります。急いで適切なEU代理人を選任してもらえるサービスを探すことにしました。