市原氏
決め手は2つあります。1つはコスト面です。通信料については他社提案とは異なり、利用状況に応じて柔軟にパケットをシェアできるプランの提案をIIJからいただけたため、お客様にとってランニングコストを含めたコストパフォーマンスが最も高いと判断しました。もう1つは、安定性です。検討していた当時はIaaSの「IIJ GIO」を利用しており、トラブルがほとんど発生していなかったことからサービスレベルの高さを実感していました。IIJモバイルタイプIを採用することで、“IIJ品質”によるサービスの安定化を実現させたいという強い思いがありました。
市原氏
主に3つあると思います。第1に、新見守りセキュリティサービスのType-S NEOを無事にリリースできたことです。それにより東急セキュリティ様との共同プロジェクトにも貢献できました。今後は、現在旧モデルをご利用中のお客様に対し、Type-S NEOへのリプレイスを確実に行っていくことで、安心して継続利用いただくことを最優先にしています。
第2に、LTE-M通信を使った見守りセキュリティサービスを低コストでお客様に提供できることです。Type-S NEOでは、留守→在宅、在宅→留守への切り替え時や、24時間安否確認メールの配信など、1日最大10回程度のメール送信となるため、1台あたりのパケット数は1日あたり10MB程度で運用しています。メールもテキスト形式で、最小限の重要事項を送付することに特化した機器のため、1回あたりの文字数も少なく、低コストでのサービスが実現しています。これはType-S NEO全体でパケットをシェアできるプランをIIJが適切に提案してくれたおかげであり、弊社だけの取り組みでは開発できませんでした。IIJとタッグを組むことで取引先へも、より柔軟な料金プランの提案が可能となり、とても感謝しています。
第3は、より大きな安心をご利用者へお届けできることです。IIJ GIOで実感した信頼性やサービスレベルの安定性は予想通りのもので、安心して利用できます。安定的な通信環境を得られたことで、旧モデルからType-S NEOへのマイグレーションも問題なく進むと考えています。
村嶋氏
弊社にとっても最大のメリットは、単身者世帯の賃貸住宅にもホームセキュリティサービスを提供できるようになったことです。これまでのホームセキュリティサービスの導入には通信回線や設置工事が必要であったため、心理的な抵抗を感じられる賃貸住宅の入居者様やオーナー様も少なくなく、主なターゲット市場は分譲マンションや戸建て住宅でした。賃貸住宅市場はこれまであまり開拓してこなかった分野だったのです。
SAFE-1にはIIJモバイルタイプIのLTE-M通信が活用されているので、配線工事が不要となり、文字通り“部屋に置くだけ”で利用できるサービスです。安否センサーや非常ボタンが搭載されたSAFE-1を活用することで、賃貸住宅にも単身世帯のシニアの見守り強化を進めることができるほか、通信回線や電気が通っていない空き家・賃貸物件の空室対策の促進にも活用できると期待しています。
市原氏
今後は従来の不動産管理会社様以外にも、官公庁や住まいに関する事業者にも展開し、コロナウイルスの拡大や異常気象による見守りニーズの高まり、空き家の防犯・防災・公衆衛生問題に取り組むお客様の解決につながるサービスとしてType-S NEOを提案し、東急セキュリティ様とともにさらに広い領域で社会に貢献したいと思っています。
盛田氏
IIJモバイルタイプIを活用するSAFE-1ならではの強みを活かし、更に今後は個人・法人ニーズに合わせて、緊急時メール通知のみでご家族や関係者だけで対応することを想定した「セルフモニタリングプラン」や、弊社の強みである警備員駆け付けプラットフォームを活用した「セルフモニタリング×警備員駆け付けプラン」などのメニューを拡大し、他社サービスとの差別化を図りながら、東急沿線以外に展開することも視野に入れています。
市原氏
今回の製品開発については通信規格としてLPWAを採用しました。LPWAについての情報はこの製品開発プロジェクトが始まる前から情報提供をいただき、最終的な通信規格の選定に至りました。また、今回の製品開発において、IIJ様の守備範囲以外の部分についても相談に乗っていただき、単なる個別案件としての関係性ではなく、この新たな事業を育てるパートナーとして感謝するとともに今後とも変わらぬ姿勢に期待しております。
※ 本記事は2022年10月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。
新たな社会問題の発生と通信技術の進化で見守りセキュリティサービスを改良
まずスリーS様にうかがいます。見守りセキュリティ端末の開発経緯についてお聞かせください。
スリーS 市原氏
当社が長年お取引させていただいている不動産管理会社様において、単独世帯、主に高齢者による孤独死が連続で発生したことがあり、相談を受けたのがきっかけです。
加速する高齢化社会に向けて、独り暮らしの高齢者への賃貸契約に不安を持つ管理会社様や、物件オーナー様のお役に立てるサービスは何かと考え、セキュリティ端末とその端末を運営するサービスを提供できないかとチャレンジしたのが始まりです。
その後、空き家問題や新型コロナウイルス感染拡大など新たな社会問題への関心が高まり、IoT機器として活用できる通信技術も進化したことから、より広い範囲の住宅関連事業者の皆様に貢献したいと考え、2022年9月にType-S NEOをリリースしました。
市原康太郎氏
Type-S NEOの特徴についてお聞かせください。
市原氏
Type-S NEOは主に3つの問題に解決策を提案します。1つ目は、賃貸物件における単独世帯の孤独死問題。2つ目は、空き家増加による治安の低下。そして3つ目は、自然災害の増加による見守りニーズの高まりです。一般の安否確認やホームセキュリティのサービスでは通信回線が必須であることが多く、「住宅に通信回線がない」、「空き家になり電気・電話回線を解約したため、利用できない」、「賃貸住宅なので設置工事ができない」などの理由により導入を断念するケースが増えています。
こうした課題に対応すべく、Type-S NEOでは、1)安否確認・侵入者検知・緊急通報の3つの機能を一台に集約、2)Wi-Fiや光回線が不要なモバイル通信対応、3)人感センサー内蔵の卓上(壁面)設置型、4)電源コード不要の乾電池駆動、5)わかりやすさを考慮したシンプルな表示とボタン配置、6)コンパクトサイズ(幅130㎜×高さ100㎜×奥行30㎜)などを実現しました。
次に東急セキュリティ様にうかがいます。スリーS様との協業の経緯とSAFE-1の概要についてお聞かせください。
システム警備事業部 セキュリティ営業部 課長盛田禎二氏
東急セキュリティ 盛田氏
弊社も東急線沿線にお住まいのお客様を対象に、2008年から安否を確認するセンサーや、非常時に握ると警備員が駆け付ける緊急ペンダントなどのサービスを提供しています。しかしお客様の中には、家の中にセンサーの設置工事をすることに抵抗感をお持ちの方が多く、導入に踏み込めない要因になっているケースが多いと感じていました。
そのため、新しい見守りセキュリティサービスを開発すべく、ビジネスマッチングサービスを利用して開発委託先を探した結果、共同開発会社を通じてスリーS様をご紹介いただくことができました。
東急セキュリティ 村嶋氏
SAFE-1はスリーS様と共同開発した商品であり、当社の製品名となります。「安否確認・非常・防犯」機能を集約し、設置工事不要、部屋に1台置くだけで「防犯」「見守り」などの多様なニーズに応える新サービスとして提供しています。具体的な採用例としては、独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)様の「高齢者向け見守りサービス連携事業者」に選定され、2022年10月1日からUR賃貸住宅にお住まいの方々を対象としたSAFE-1による見守りサービスの提供を開始しています。
システム警備事業部 セキュリティ営業部 部長村嶋孝之氏
Type-S NEOの開発において、特に通信機能にはどのような課題があったのでしょうか。
市原氏
Type-S NEOの旧モデルは他社の3Gサービス(FOMA)を利用していました。3Gサービス終了に伴う停波のお知らせが開示された後、弊社としてもサービスを継続するために3Gサービスに代わる通信手段を模索していました。その中でも運営コストの低減や省電力化を実現できるLPWA(Low Power Wide Area)に注目していました。その後LPWAが一般的に使われるようになり、通信コストを含めたランニングコストの低減にチャレンジしていた弊社において、機能を強化した通信モジュールとともにLTE-Mでの実用化にも目処が立ちました。
旧モデルはAC電源で稼働していたことから、利用範囲が居室内や通電されている場所に限られていましたが、LTE-Mになれば省電力での通信により電池で駆動させることが可能になるため、人が住んでおらず電気の止まった家屋やトランクルームなどでも活用できます。より広い範囲のお客様に向けて我々のサービスを展開できると考えました。
不動産業界は慢性的な人手不足にもかかわらずIT化が遅れ気味で、見守りサービスに費やすリソースが足りません。Type-S NEOやSAFE-1を導入すれば定期的に人が巡回する回数を減らせる可能性があり、異常が発生した時に警備員が駆け付けるワークフローへ転換することができます。セキュリティの強化という側面と管理会社が人件費を削減しながらサービスレベルを維持できるという側面の両方に貢献するソリューションになると確信しました。