「機動戦士ガンダム」シリーズなど多くの人気アニメ作品を世に送り出しているサンライズ。原作から映像化まで自社で一貫して行うオリジナル作品も数多く手がけている。
同社の制作体制は、作品の特性や方向性に応じて最適なクリエイターを外部からアサインするスタイル。「本社近隣に制作拠点となるスタジオを構え、プロデューサーを責任者として、多くのクリエイターらの協力のもと制作を進めています」と同社の柴田信哉氏は説明する。
テレビ放送が始まれば、短くても数ヵ月、長ければ数年という単位でプロジェクトが動いていく。離れた場所に分散するスタジオと情報をやりとりする上で、ネットワークは欠かせないインフラだ。しかし、番組の改編期にはスタジオの開設や移動、統廃合が頻繁に行われることもある。「その都度、回線の手配や環境の設定・更新作業が必要になります。不具合があれば、すぐに対処が必要で、情報システム担当の負担が高まっていました」と柴田氏は課題を述べる。
決められたスケジュールの中で、クオリティを満たした作品を制作するのは多忙を極める。「ネットワークを活用してコンテンツの受け渡しを行えれば、作業の効率化が期待できます。容易に運用でき、なおかつ安全にコンテンツをやりとりできるネットワークを求めていました」と同社の大作真平氏は語る。
課題解決のために同社が選択したのが、SmartWANである。これはモバイルを含めたアクセス回線の手配から、最適なネットワークの設計・構築・運用監視まで一元的に提供するサービス。
ネットワークルータの設定は、SmartWANの管理サーバにて一元管理し、提供されるルータをつなぐだけで、ネットワークを使えるようになる。ポータルを介して常に運用状態を把握できる上、24時間365日の障害対応も提供する。
以前はスタジオを開設・移動するたびに回線の手配やプロバイダの契約などを個別に準備する必要があった。ルータの設定・変更も情報システム担当者が各スタジオを回って作業しなければならなかった。「私たちの業態は、拠点の追加や移動が多いため、固定化するシステムは望んでいません。SmartWANを使えば、これらの作業をIIJに一本化でき、運用負荷の軽減につながります」と柴田氏は選定の理由を述べる。
しかも、ネットワークの設定情報はSmartWANの管理サーバで一元管理されており、変更の依頼もサポート窓口で随時受け付けている。「スタジオを開設・移動する際、柔軟な対応が可能です。ネットワークに精通したエンジニアがいなくても、多数の拠点に最適なネットワークを迅速に展開できる点を評価しました」(大作氏)。
現在、同社は本社及び近隣のスタジオなど18拠点にSmartWANを導入し、制作業務を支えるネットワークとして活用している。
導入効果としてまず挙げられるのは、社内の「スタッフ間の横の連携」が強化されたことだ。繁忙期は1人の制作スタッフが複数のスタジオを移動して掛け持ちで作業することもあるが、SmartWANにより、セキュアにコンテンツの受け渡しが可能。移動せずに別のスタジオの作業をこなすことができるようになった。「情報システム部門は、1ヵ月で40時間程度の移動時間が軽減されました。スタジオ同士の横の連携が強化され、制作スタイルの選択肢が増えました」と柴田氏は語る。
ポータルを介して運用状態を一元的に把握できるため、障害の予兆も早期に発見できる。「大きなトラブルに発展する事態を未然に防ぎ、現場スタッフの安心感の向上につながっています」(大作氏)。
システムのスリム化にも貢献している。以前は各スタジオにウイルス監視サーバを設置し個別に運用していたが、SmartWANの導入により、ウイルス監視サーバを本社に集約できるようになった。「ウイルス監視サーバを統合できたことで、運用面や、セキュリティポリシーを統一できます。インシデントの発生時には、本社側で速やかに対応できるようになりました」と大作氏はメリットを語る。
コスト削減効果も高い。「回線の手配や設定をIIJに一本化できたため、運用工数の軽減と併せて、回線の維持費用を40%以上削減できました。導入費用も6ヵ月程度で回収できる見込みです」(柴田氏)。
今後はSmartWANのメリットを活かし、制作現場の更なる業務効率化に役立てていく考えだ。その一環として、各スタジオに設置しているファイルサーバを本社に集約し、情報セキュリティの強化と現場の負担軽減を目指す。「弊社にはIT活用の余地がほかにもたくさんあります。そのためのソリューションを実現する上で、IIJは有力なパートナーの一つです」と語る柴田氏。同社は積極的なIT活用で、業務効率化や生産性向上を推進。良質のコンテンツ提供を通じ、世界に誇る日本のアニメ界の発展により一層貢献していく考えだ。
※ 本記事は2014年4月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。