廣済堂では、最新メディアを組み合わせたソリューションを提供する「情報コミュニケーション事業」と、企業の採用活動や社員教育などの人材ソリューションを提供する「ヒューマンコミュニケーション事業」を中核にワンストップサービスを展開している。
そして、情報技術の進化などを背景にコミュニケーションの可能性を追求し、企業の課題を解決する最適なソリューションや、新たな付加価値を提案している。印刷・ITのノウハウを活用したデジタルサイネージなどの新規事業は、その一例だ。
廣済堂の事業を支えるIT環境について、情報システム部 部長の上田修一郎氏は「会社の成り立ちもあり、これまでシステム面で様々な課題を抱えていました」と打ち明ける。同社は、東京を中心に事業を展開してきた廣済堂印刷と、大阪を本拠とする関西廣済堂が1999年に合併して誕生した。
東京と大阪の事業所では、一部で異なるバージョンの各種システムを利用しており、システム運用面の違いのみならず、社員の業務の進め方も異なる面があったという。「システムと業務の両面で東京と大阪の統一性を図り、組織の在り方を変革することも、今回の基幹系システム刷新の狙いです」と上田氏は述べる。
情報システム部では基幹系業務システムのうち、会計と人事・給与の両システムの刷新に向けてERPパッケージの導入を検討してきた。東京と大阪のシステムの違いに加え、会計システムは経理部、人事・給与システムは人事部というように、部門ごとに専用のサーバを保有、運用管理してきた歴史がある。「部門間のデータのやり取りに手間と時間がかかっており、基幹系システムの一元的な運用管理が求められていました」と情報システム部 課長の三皷章仁氏は話す。
その新たなシステム基盤としてクラウドサービスを検討。同社は以前から、基幹系、情報系ともにオンプレミスでシステムを構築・運用してきた。だが、システム運用の負担に加え、東日本大震災を契機に自然災害や停電などに備えたBCP(事業継続計画)対策の観点から、クラウドサービスを利用する動きが加速。「当社でも、システム移行の第一弾として、会計と人事・給与のシステム基盤にクラウドサービスを導入することになったのです」と上田氏は説明する。
情報システム部では複数のクラウドサービスを比較・検討し、「IIJ GIOコンポーネントサービス 仮想化プラットフォーム VWシリーズ」(以下、VWシリーズ)を採用した。その決め手は、「仮想プラットフォームとネットワークを一括してアウトソーシングできるためです」(上田氏)。例えば、検討対象となった事業者の中には、仮想化プラットフォームの構築は任せられるものの、ネットワークでは、機器を自社で導入しなければならないケースもあったという。「その点、IIJのクラウドサービスは当社のシステムに必要なリソースを柔軟に組み合わせることができる上、コスト面でも割安でした」と情報システム部の田村直人氏は説明する。
VWシリーズは、VMwareをインストールしたESXiサーバ、データストア、VM通信ネットワークを組み合わせて提供。利用者はサーバの仮想化やストレージの分割を行い、プライベートクラウドを構築できる。
廣済堂では当初、「IIJ GIOコンポーネントサービス Vシリーズ」を利用して会計と人事・給与システムの開発・検証を実施。本番環境では「VWシリーズ」上に両システムを移行するとともに、Vシリーズをバックアップ用に利用している。
VWシリーズなど、IIJのクラウドサービスの導入効果について、上田氏は「システムの一元化に加え、社内ユーザーに安定的なサービスを提供できること。これが一番のメリットです。そして、IIJにアウトソーシングすることにより、システム管理の負担を軽減し、経営に役立つIT戦略の企画立案に注力できます」と強調する。
以前は迷惑メール対策などのセキュリティを含め、オンプレミスでシステムを運用。三皷氏は「セキュリティシステムの障害でインターネットが利用できなくなることもありました」と話す。そこで、「IIJセキュアMXサービス」や「IIJセキュアWebゲートウェイサービス」をはじめ、IIJマネージドVPN PROサービスなどのネットワークサービスを導入。こうしたアウトソーシングの実績も、IIJのクラウドサービスを採用する理由になっている。
廣済堂ではプロジェクトの立ち上げなどに応じて部門ごとにサーバを購入し、システムを構築するケースも少なくないという。その結果、社内に多数のサーバが乱立し、「CPUなどリソースがムダになり、コスト面でも問題がありました」(田村氏)。今後、サイロ化したスポット的なシステムを含めVWシリーズ上に統合することも考えられるという。
「今後は、VWシリーズをはじめとする各種クラウドサービスをさらに活用し、より高い効果を生み出していきます。加えて、現在オンプレミスで構築したシステムに対して、効果の試算や、クラウドがどう適用できるか検討するなど、引き続き対応を進めていく予定です。クラウドサービスはそれだけで成立するものでなく、他の多くの要素やサービスなどとうまく連携できてこそ、効果が際立ってくるものだと考えています」と上田氏はIIJのクラウドサービスに期待する。「変革」を推進力に広範なビジネスを展開する廣済堂。そのシステム基盤の一翼をIIJがサポートしている。
※ 本記事は2013年7月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。ただし、2021年の社名変更に伴い、社名とユーザプロフィールのみ変更しております。