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コラム|Column

海外でクラウドを運用する前に(前編)

2015/02

海外でクラウドを運用することは、企業の体質を強化するチャンスとも考えられます。本コラムでは、海外でのクラウドの効用をまとめてみました。

海外戦略、今も昔

「日本企業はこれまでの成長戦略と企業体質の抜本的な見直しと変革を迫られており、その鍵を握るものが企業の国際化であることは、変革を迫った主要な要因がすべて国際面からのチャレンジという性格を強くもっていることからも、明らかである」。この一節は、国会図書館で探した、日本企業の国際戦略について著された一番古い本から引用しました。約50年前に書かれたものです。多少古めかしい文体を除けば、最近の経営学関係の書籍に載せても違和感はないと思えます。いつの時代も、外的変化により自らの質的変化を行うのは、我々のDNAなのでしょうか?

何年かの周期で海外進出が熱を帯びる時があります。国内市場の縮小が現実的になり有望な海外消費市場の開拓、東日本震災から4年経過し、中断していた海外戦略を実行するなど、新たな意思決定をする企業が増えています。以前は2~3年を費やして進出を決定していたのが、今では実際にオフィスを開設するまでに早ければ半年と短くなっています。労働集約型工場もIT化が進んでいますし、消費市場として進出を目指す場合には、すみやかなIT構築が必須です。しかし、海外でIT構築に苦慮することは日常茶飯事で、永遠の課題とも言えます。今やクラウドは、コンピュータの利用形態として一般にもその利便性が認知されていますが、海外ではその数倍の効果を発揮します。IIJは、昨年10月、世界の主要4都市にクラウドサービスを提供し、地域をカバーする体制が完成しました。これにより、クラウドコンピューティングで企業体質の強化をお手伝いできる環境になりました。

グローバルITという概念が無い

欧米のIT先進国の企業がグローバルに展開する場合、改めて海外のIT戦略を検討する必要は無いと聞きます。一方、日本では、「海外でのIT構築の方法」といった指南書やセミナーが豊富です。欧米企業では、基本システムが国個別という概念は皆無で、国境を超えた運用が前提になっています。しかしそこに行くまで苦悩の紆余曲折がありました。

1985年、「ヤング・レポート」と呼ばれる米国の産業競争力を奪還するための提言報告書がまとめられ、新しい技術の創造・実用化・保護などが提唱されました。この時期は、オープンシステムの普及とインターネットの勃興期で、クローズなメインフレームからの変化として、大きなITの技術変革がありました。低迷していた米企業は、このタイミングでITアーキテクチャーを再構築し、グローバル化を意識して業務プロセスとITの徹底的な標準化を進め、今日につながる風土を確立したのです。
日本企業も、当時の米国のように、今度のグローバルの波をクラウドやインターネットを用いて企業基盤を変革するチャンスと捉えるべきかもしれません。

グローバルIT人材は、“青い鳥”?

グローバル人材の育成・獲得は、現在の経営上の大きな問題としてたびたび議論されています。更に問題なのは、グローバルIT要員です。ITのグローバル展開に関する知識や経験があり、グローバルベンダや現地ベンダとの交渉力を兼ね備え、更に日本語でコミュニケーションが出来る人材は非常に稀有です。仮にそうした人材がいたとしても、その能力に見合う業務や新しいテクノロジを学ぶ機会を継続的に提供できなければ、物足りなく感じて退職してしまうという「ジョブホッピング」のリスクを既に多くの企業が経験しているでしょう。

ITスタッフが不足するなか、現地でサーバーを調達する際、例えばOSのバージョンやパッチなどに関する本社からの指示を現地ベンダに指示することも不慣れなため、ハードウェアのセットアップが終わり、本社のITスタッフが出張してきても、指示通りの仕様になっておらず、アプリケーションをインストールできなかった、といったエピソードには事欠きません。

しかし今では、海外でのIT事業の選択肢にクラウドがあり、クラウドの本来の価値を海外で活かせます。特別な運用体制を考慮することなく、日本の担当営業に相談すれば、現地の必要条件なども調べてもらえ、スムーズにスタートできます。現地の経費処理のため、現地法人での資金需要の心配もありませんし、人件費を含むトータルなコストを減らせます。

IIJ グローバル事業本部 グローバル企画部 清水博

本記事は、弊社広報誌 Vol126(2015年2月発行)に掲載されています。
特集 Cloud Update「海外でクラウド運用」
IIJ グローバル事業本部 グローバル企画部 清水 博
https://www.iij.ad.jp/news/iijnews/2015/pdf/vol126.pdf